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優しいお母様とお姉様(仮)
しおりを挟むどうしたら良いのかしら。全員男性に見えるのだけれど。
それは私の見識が狭量というだけで、お母様とお姉様とお姉様なのだから、きっと女性なのよね、きっと。
男性に見えるのだけれど、女性なのよね。どう見ても男性に見えるのだけれど。
よくないわ、ラシェル。
女性だと言っている方々を男性だと思ってしまうなんて、偏見よね。
「ラシェルちゃん、新しいお母様と、姉たちよ。今日からよろしくね!」
「は、はい……!」
ファブリスお母様が両手を広げて私を抱きしめてくるので、私は、思わず頷いていた。
そうして私には新しいお母様とお姉様が二人、できたのである。
翌日、私はいつものように早起きをして、朝食の支度のために芋の皮を剥いていた。
デランジェール家にはお父様が残してくださったお金があるけれど、きっとそのうち底をついてしまうから、贅沢な暮らしはできない。
ファブリスお母様やジョルジュお兄様……じゃなくて、お姉様、リュシアンお姉様、家族が増えたので、食事は多めに作らないといけない。私も仕事を見つけなければと思いながら、皮を剥いた芋を火にかけて水を沸騰させた鍋の中に一口大に切って入れていく。
「ラシェルちゃん、おはよう! なんて朝早いのかしら、ラシェルちゃん! お料理はお母様に任せるのよ、朝ごはんは潰したお芋とチーズね! 完璧なメニューだわ、ラシェルちゃん、なんて良い子なの~!」
私が料理をしていると、ファブリスお母様がやってきて私から料理用のナイフを奪うと、ものすごいはやさで芋を剥き始める。
「あ、あの、お母様……お料理は、私の仕事で」
「何を言っているの、若い娘はオシャレをしたりお友達と遊んだりしなさい~! おしゃれと遊びが嫌いなら、本を読んだりお散歩をするのでも良いのよ、お料理はお母様の、し、ご、と!」
ファブリスお母様が体をくねらせながら、私の鼻をちょん、とつついた。
私は鼻頭をおさえながら、頷くしかなかった。
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