上 下
4 / 11

優しいお母様とお姉様(仮)

しおりを挟む

 どうしたら良いのかしら。全員男性に見えるのだけれど。
 それは私の見識が狭量というだけで、お母様とお姉様とお姉様なのだから、きっと女性なのよね、きっと。
 男性に見えるのだけれど、女性なのよね。どう見ても男性に見えるのだけれど。

 よくないわ、ラシェル。
 女性だと言っている方々を男性だと思ってしまうなんて、偏見よね。

「ラシェルちゃん、新しいお母様と、姉たちよ。今日からよろしくね!」

「は、はい……!」

 ファブリスお母様が両手を広げて私を抱きしめてくるので、私は、思わず頷いていた。
 そうして私には新しいお母様とお姉様が二人、できたのである。

 翌日、私はいつものように早起きをして、朝食の支度のために芋の皮を剥いていた。
 デランジェール家にはお父様が残してくださったお金があるけれど、きっとそのうち底をついてしまうから、贅沢な暮らしはできない。

 ファブリスお母様やジョルジュお兄様……じゃなくて、お姉様、リュシアンお姉様、家族が増えたので、食事は多めに作らないといけない。私も仕事を見つけなければと思いながら、皮を剥いた芋を火にかけて水を沸騰させた鍋の中に一口大に切って入れていく。

「ラシェルちゃん、おはよう! なんて朝早いのかしら、ラシェルちゃん! お料理はお母様に任せるのよ、朝ごはんは潰したお芋とチーズね! 完璧なメニューだわ、ラシェルちゃん、なんて良い子なの~!」

 私が料理をしていると、ファブリスお母様がやってきて私から料理用のナイフを奪うと、ものすごいはやさで芋を剥き始める。

「あ、あの、お母様……お料理は、私の仕事で」

「何を言っているの、若い娘はオシャレをしたりお友達と遊んだりしなさい~! おしゃれと遊びが嫌いなら、本を読んだりお散歩をするのでも良いのよ、お料理はお母様の、し、ご、と!」

 ファブリスお母様が体をくねらせながら、私の鼻をちょん、とつついた。
 私は鼻頭をおさえながら、頷くしかなかった。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ショタの逮捕と手錠とおむつ物語

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:1,349pt お気に入り:0

君が忘れて居ても

BL / 完結 24h.ポイント:447pt お気に入り:2

死に戻り悪役令息は二人の恋を応援…するはずだった…。

BL / 連載中 24h.ポイント:1,036pt お気に入り:144

父に虐げられてきた私。知らない人と婚約は嫌なので父を「ざまぁ」します

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:7,944pt お気に入り:21

【完結】婚約者様、嫌気がさしたので逃げさせて頂きます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:915pt お気に入り:3,107

禁断の恋

現代文学 / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:0

処理中です...