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 懐かしい味 2

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 それにしても――今は皆がいるからいいけれど、私はこれからダンテ様と二人きりになる。
 なんだか、緊張してしまう。

 好きだと伝えてから、忙しなく動き回っていた。
 まるで逃げるように。
 だから、ゆっくりと言葉を交わしていなかったのだ。

「では、いただきます」

 用意されていたパンをチーズにつけて、お皿に移してからフォークで口に運ぶ。
 口の中に、エステランドで食べていた味が広がって、懐かしさに瞳が潤んだ。

「――美味しいです! 懐かしい味がします!」

「そうですか、よかった!」

「ありがとうございます、カールさん。もちろん、いつも美味しくご飯をいただいていますが、懐かしい味を食べられるというのは嬉しいものですね」

「ディジー様……! 嬉しい言葉を、感謝いたします。お邪魔をしてしまい、失礼しました。ゆっくり召しあがってください」

「……この味は、覚えている。美味いな」

「だ、ダンテ様……! はじめて褒められた……俺は泣きそうです」

「カールさん、騒がしいですよ。さぁ、お邪魔になりますから退室しましょう」

 ロゼッタさんがむせび泣いているカールさんを引っ張って部屋から出て行く。
 それを見送った後にダンテ様が、小さく息を吐いた。

「カールは、国境での戦いに従軍してくれていた。その時に足を負傷してな。元々料理が好きで、従軍中に料理番のようなこともしていた。怪我をしてからは料理人となり、今は、料理長をしている」

「怪我をなさったことは聞いていましたが、戦争とは危険なものなのですね。想像することしかできませんが、命が無事でなによりでした」

「あぁ。……ディジーはああいった男はどう思う」

「いい人だと思います」

「そうか……」

 私は首を傾げた。ダンテ様の表情は硬いまま変わらないが、こころなしかしょんぼりしているよう見える。

「ダンテ様、エステランドの味を懐かしいとおっしゃいました。幼い頃に食べた味を、覚えているのですか?」

「……あぁ。……覚えていたというよりも、思い出した。エステランドで君と、出会った。俺にとっては、特別な場所だ。だから、記憶に残っていたのだろう」

「は、はい……嬉しいです、とても」

 好きだという気持ちがいっぱいになって、体から溢れて部屋を満たしていくような気さえする。
 初恋のときめきというのはこれほどまでに感情を乱すものだろうか。
 私は恥ずかしくて顔をあげられないままに、小さなトマトのついた串でフォンデュ鍋をぐるぐるかき回した。

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