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 闘牛を見ましょう、旦那様 2

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 馬番の方が、見事な黒毛馬を引いてやってくる。
 真っ黒な瞳は賢そうで、立髪はやや灰色をしている。つるりとした体は美しい黒色で、長い尻尾は灰色だ。
 精悍な顔立ちをした馬である。
 ダンテ様からもフェロモンが出ているけれど、ダンテ様の乗る馬も馬界ではかなりの男前だろう。
 とても雌に人気がありそうな姿をしている。

「この子の名前はなんというのですか?」

「ヴァルツだ」

「はじめまして、ヴァルツ。素敵な立髪ですね、体も艶々ですね。大事にされているのがよくわかります。触ってもいいですか?」 

 挨拶をする私をヴァルツはじっと見つめて、それから軽く馬首をさげた。
 触っていいと言われているのが分かったので、その首にそっと触れる。
 とても温かい。馬の感触だ。懐かしい。

「ヴァルツは触られることを嫌がるのだがな」

「そうなのですね。触らせてくれてありがとうございます、ヴァルツ。とてもいい子ですね」

「あぁ。長く共にいる。君は、やはり動物の扱いが得意なのだな」

「得意かどうかはわかりませんけれど、いつもお世話をしていましたので、慣れているといえば慣れているかもしれません」

「そうか。では、行くぞディジー。街の中心地までは歩いても行けるが、馬の方が早い。君はどこか行きたい場所があるか?」

 尋ねられて、私は軽く首を傾げた。
 どこに行きたいと言われても、何があるのかもさっぱりわからない。

「劇場や、音楽鑑賞用の屋外ステージがある。闘技場や、それから、散策用の公園がある。あとは、闘牛場や競馬場があるな。それから、カジノなどか」

「闘牛、競馬!」

「あまり、女性の行く場所ではない」

「そ、そうですよね」

 闘牛や競馬は噂には聞いたことがある。
 でも、実際には見たことがない。見てみたかったけれど、両方ともお金をかけて遊ぶ場所である。
 私は行くべきではないかとちょっとだけがっかりした。

 馬が走る姿や、牛が走る姿を見たかった。

「君が行きたいのなら、別に構わない」

「いいのですか?」

「あぁ」

「じゃあ、闘牛を見てみたいです! 馬は、ヴァルツに触ることができたので、牛が見たいです、牛!」

「分かった」

 私は自分で馬に乗ることができるのだけれど、ダンテ様が抱き上げて乗せてくれたので、大人しくしていた。
 私の腰を掴む手が大きくて、なんだかドキドキした。

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