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デートに行きましょう、旦那様 2
しおりを挟むいいことを思いついたと、私はダンテ様の元に向かうことにした。
ロゼッタさんに案内されて執務室に向かうと、ダンテ様はサフォンさんや、ロゼッタさんのお兄様であるディーンさんと話をしていた。
サフォンさんとディーンさんは、ダンテ様の右腕と左腕なのだという。
サフォンさんは護衛兵長で、ディーンさんは執事長。
何かあればサフォンさんはダンテ様と共に従軍し、ダンテ様の不在の間はディーンさんが領地を任されている。
私にとっては皆立派な立場の方々なので、様をつけたくなってしまうのだけれど、私が様をつけるべきはこの屋敷の中ではダンテ様だけだとロゼッタさんに言われたので、気をつけるようにしている。
「ダンテ様、お仕事中にごめんなさい」
「いや、構わない。何か問題が起こったか、ディジー」
「あの、お願いがありまして」
「なんだ?」
サフォンさんとディーンさんが、私に礼をして一歩さがってくれる。
お仕事が終わってからでも構わないとロゼッタさんに言ったのだけれど、善は急げだと、連れられてきた。
来てしまったからには、手早くお願いをすませるべきだろう。
「お時間のある時でいいので、街を案内してくださいませんか? 私、ミランティス領がどんな場所か知りたいのです。それに、外を歩くのが好きで……一人で行ってもいいのですが、せっかくならご一緒したいなと思いまして」
「…………」
迷惑だったかしら。ダンテ様の眉間に深く皺がよる。
お仕事中に頼むほどの用事ではないものね。お食事中にお願いすればよかった。
「……分かった。準備をする、待っていろ、ディジー」
「えっ、今からですか?」
「行きたいのではないのか」
「行きたいですけれど、でも、お忙しいのではないでしょうか。お時間のある時で」
「時間なら作る。問題ない」
ダンテ様は眉間に皺を寄せたまま言った。
迷惑がられている、というわけではなさそうだ。
もしかしたらどこに行こうか考えてくれているのかもしれない。
考え事をすると、眉間に皺がよるタイプという可能性もある。
「ありがとうございます、ダンテ様! とても嬉しいです」
「そ、そうか。……俺と二人で、いいのか。ロゼッタたちもいた方がいいのでは」
「デートは二人でするものだと思っていましたけれど、公爵家では違うのでしょうか。やっぱり、身分的には二人きりというのは問題が……」
「い、いや。ない。全くない。少しもない。俺は自分の身と君のことぐらい、守ることができる程度には強い」
「すごいですね! 氷の軍神と呼ばれていたとお聞きしました。素敵です」
ロゼッタさんから聞いたことを思い出して、両手を胸の前で合わせて微笑むと、ダンテ様は私から視線を逸らした。
もしかして、触れられたくないことだったかしら。
やっぱり、戦のことは触れてはいけないわよね。気をつけよう。
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