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ディジー、ダンテ・ミランティスの元に行く 1
しおりを挟む本当に公爵家から迎えが来たことに驚きながらも、私は身支度を調えた。
さすがに作業着では失礼だろう。
この日のために作って貰った羊毛のセーターとスカートに着替えた。
春先に着るのにちょうどいい薄手のセーターは、体にぴったりするつくりになっている。
ドレスではないけれど、上品なデザインなのでそんなにおかしくはないと思うのだけれど――華やかな都会の人々に比べてしまえば見劣りするかもしれない。
それでも、エステランド伯爵領の自慢の羊毛である。
恥じる必要はないだろう。
お父様たちが着替えなどの荷物を町まで運んでくれる。
着替え、羊毛フェルト作りの道具、羊刈り用のハサミ。動物たちは――連れて行けない。
それがとても寂しい。
丘を降りるまで、羊たちや子ヤギや兎、牛や馬たちも私の側を離れなかった。
動物大移動のような様相で町に向かう私の姿を見て、サフォン様は「ディジー様は動物に好かれているのですね。羊の毛刈りというのを私ははじめて見ましたが、鮮やかでした」と褒めてくださった。
公爵家の立派な馬車に荷物をお父様とお兄様、サフォン様と馬車から降りてきた従者の方々が協力して積んでくれる。
荷物はかなり多い気がしたけれど、馬車が立派なためか積んでしまうと本の少しに見える。
「ディジーちゃん、気をつけて行っておいで」
「はい、お父様」
「ディジー、手紙を書くわね」
「はい、お母様。私も書きますね」
「たまには帰ってくるんだぞ」
「お兄様。私に羊の毛刈りを教えてくれてありがとうございました。お母様とお父様をよろしくおねがいします」
「お姉様。……寂しいです」
「レオ、私も寂しいわ。お勉強、頑張ってね」
家族と挨拶を交わして、馬車に乗り込んだ。旅商人に去年ふられた友人のミーシャが少し離れた場所で、泣きながら手を振ってくれている。
町の人々も離れた場所で、それぞれ「ディジーちゃん気をつけて」「寂しくなるねぇ」と言ってくれる。
私も手を振り返すと、公爵家の馬車に乗り込んだ。
半年時間があったけれど、私が違うディジーだと公爵様は気づかなかったのだろうかと思いながら。
馬車が進み出すと、住み慣れた家のある丘の景色や、町がとても小さくなっていく。
町に住んでいる年頃の誰かの元に嫁ぐのだと漠然と考えていた。
まさか公爵家に行くことになるなんて思っていなかった。
けれどすぐに帰ってこれるだろう。
私の顔を見れば、ダンテ様も私が違うディジーだとすぐに気づくはずだ。
だからすぐに、皆の元に帰ってくることができる。
本当はサフォン様に、人違いなのではないでしょうかと尋ねたかった。
けれどそれは失礼になるかと思い黙っていることにする。
半年も時間があったのに気づかなかったなんて、もしかしたら公爵様の恥になってしまうかもしれないもの。
私は静かにしていよう。自然と、気づかれる時を待とうと決めた。
馬車中は広く、座面はふかふかしていて、車輪が回り馬車が揺れてもお尻はまるで痛くならなかった。
サフォン様は一緒に乗るわけではないようだ。
御者台に二人。それから、護衛の馬が数頭。その馬の一頭に乗っている。
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