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ファミリーキャンプ飯 1
しおりを挟むテーブルに並べられた蛍マグロのマグロ丼は、採れたて艶やかな赤い宝石のようなマグロがふんだんに乗せられた、なんとも贅沢な一品である。
口の中に入れると、お米の甘さと醤油のまろやかなしょっぱさと、マグロの旨味が、舌の上でたまらないハーモニーを奏でてくれる。
私たちはもくもくとマグロ丼を食べた。
ヴィルヘルムとユマお姉さんは五回おかわりをしていた。
五回おかわりをされると、たっぷりあった土鍋ごはんは空っぽになっていた。
ルーベンス先生は「よく食べるのは良いことだ」と言いながら、娘に向けるような視線をユマお姉さんに向けていた。
「リコリス君の料理は絶品だな。米もマーベラスな柔らかさで炊き上がっていた。焚き火で米をこれほどうまくたけるなど、リコリス君は上級キャンパーなのだな」
「いえ、実はキャンプをするのは初めてなのです。何せ急に流刑になったものですから」
「なんと! はじめてのキャンプでこれほどとは、なんと将来有望なキャンパーなんだ、リコリス君! 君のキャンプは、はじまったばかりなのだな!」
ルーベンス先生が褒めてくださる。
私のキャンプご飯を召し上がっていただいて、褒めてくださる日が来るなんて、思っていなかった。
流刑にしてくださったこと、レヴィナス様にはお礼を言わなくてはいけないわね。
「お姉様の料理は絶品ですわ。私の聖女ミラクルパワーの九十九パーセントは、お姉様の手打ちうどんで作られておりますのよ」
アリアネちゃんのマグロ丼だけ、私たちのものよりも光り輝いている。
というか、実際光っている。
アリアネちゃんが食べ終わると、アリアネちゃんの背後に昇天していく蛍マグロさんの幻が見えた。
私たちは一斉に手を合わせた。アリアネちゃんは不思議そうに首を傾げている。ちょうどアリアネちゃんからは蛍マグロさんが見えないのだ。奥ゆかしい蛍マグロさんである。
「リコリス君は手打ちうどんも得意なのだな」
「得意というか、たくさん作ったから得意になったといいますか。小麦粉は安かったですし、アリアネちゃんがうどんガールで良かったです」
「そうか、色々苦労をしたようだが、今が幸せならそれで良い。大切なのは今、君たちと俺が共にキャンプを行い、共に食事をしたということだ。俺たちは、ファミリーだ。君たちが困った時には、俺はどこからでも駆けつけるぞ」
「ルーベンス先生!」
「師匠!」
「まるで、理想のお父様ですわ……!」
私とユリウス様だけではなく、アリアネちゃんも感嘆の声をあげる。
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