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はじめての水中戦 1

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 見た目はただの可愛い水着のようなのだけれど、体に新しい力が巡るのが分かる。

「神竜の魔法少女、ソロキャンアイドルリコリス、あなたに恨みは無いけれど、ユリウス様を助けるためにあなたを倒します!」

 水中戦仕様の戦衣に着替えたわたしは名乗った。
 ユリウス様が「リコリス、なんと愛らしい姿だ……!」と感極まったように言った後、顔を赤くして視線をそらした。

「駄目だ、来るなリコリス! そのような姿で戦っては、その、色々良くない、俺が……!」

「ご安心をユリウス様、これは水着であって水着ではないのです、いうなれば戦乙女の衣装!」

「そんな防御力が低そうな……! 何故です親父殿、露出が多すぎるのでは……!」

「俺に聞くな。おそらくラキュラスの趣味だ。そういう仕様だ」

 ユリウス様、クラーケンに纏わり付かれながらも結構余裕があるわね。

 吸盤のある太い足がユリウス様に絡みつき、水面から高々とその体を持ち上げる。
 それからその足が、海中に凄い勢いで潜り始める。

 クラーケンはいただきます、という感じで、ユリウス様を海中に引きずり込んで食べようとしている。

 私は神竜のサバイバルナイフを細身の剣に戻して、海の中に入った。

 海中戦だからか、私は裸足だ。
 裸足の足が、水面を駆ける。
 戦衣の力で張られた防護壁が、水を弾くようにして、水中を歩けるようになっている。

「リコリスの真心を無碍にはできない。仕方あるまい」

 ユリウス様は海中に引きずり込まれながら頭を振った。

 一瞬のうちにユリウス様を包んでいたクラーケンの足が、ぶつ切りのタコ足のように輪切りにされてバラバラになる。

 クラーケンはイカだけれど、見た目がタコ刺しっぽい。
 ユリウス様の両腕から、鋭い刃がはえている。

 その刃はクラーケンの足を簡単に切り裂いた。
 けれど痛みを感じないのか、クラーケンはじろりとユリウス様を睨み付けて、残りの足を振りかぶる。

 ユリウス様は叩きつけられる足を踏み台にして、空中に飛び上がった。
 水面を太い足が叩き、台風の時の荒波のように、大きな水飛沫が上がる。

「俺はユリウス・ヴァイセンベルク! お前の命を奪う者の顔と名を、良く覚えておけ!」

 水飛沫を浴びて濡れて輝くユリウス様の逞しい体から、私は恥ずかしくなって目をそらした。


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