追放された公爵令嬢は、流刑地で竜系とソロキャンする。

束原ミヤコ

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ユリウス様、王子から狩人にジョブチェンジする 1

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 それにしても、神竜の乙女の衣装に変身した途端に、びしょびしょだった私の体はすっかり乾いている。
 髪も綺麗に整えられていて、お手入れ要らず。

 私はユリウス様にぎゅうぎゅうに抱きしめられながら、衣装チェンジの便利さについて感心していた。

 今のところ何も考えずに変身しているからこの衣装というだけで、服装も多分好きなように変えられるのだろう。
 どんな服でも防御力が高いというのは有り難いわよね。

「おい。リコリス、朝食はどうした」

 ヴィルヘルムの声に、私ははっとして顔を上げた。

 そういえばヴィルヘルムは朝食をずっと待っていたんだったわね。
 こんなところでユリウス様に抱きしめられている場合じゃなかった。私には朝食を作るという使命がある。

「ユリウス様、離してください。私は朝食の支度をしなければいけません。まずは食材を探さなくては」

「あの子犬のような何かにこき使われているのか、リコリス。まさか何か酷いことをされたのか? 俺がいない間に、十八歳以下の青少年が目にしてはいけないようなことを……!」

「何のことかは分かりかねますが、ヴィルヘルムと私は契約を交わしました。おかげで私の胸からはサバイバルナイフが飛び出すようになり、可愛くて防御力が高い服に着替えることによって、身体能力も飛躍的に向上しました」

「胸からサバイバルナイフが!? おい、お前、リコリスになんてことをするんだ……!」

「お前は王子。そして人間だな。人間ということはお前も料理が作れるのだろう。朝食の時間だ」

 ヴィルヘルムはユリウス様とまともに会話をする気がないらしい。
 というか、朝食のことにしか興味がないのだろう。

 岩の上でつまらなそうに丸まっているヴィルヘルムから私を庇うようにしながら、ユリウス様は口を開く。

「リコリス、俺が来たからにはもう安心だ。お前のことは俺が守る。共に王都に帰ろう」

「え……?」

「ん?」

 思わず不満気な声が漏れてしまった。

 王都に帰るの?
 まだソロキャン生活二日目なのに。鬼マタンゴしか食べていないのに。

 大自然の中で全裸で仁王立ちするという夢は叶ってしまったけれど、キャンプはまだまだこれからだというのに。
 リコリス帝国開拓使はまだ1ページも進んでいない。ほんの数行程度である。

 不思議そうに首を傾げるユリウス様に、私は強い心で持って反論することにした。

「ユリウス様、私は罪人です。私のことなど捨て置いてください」

「何故そのようなことを言うのだ、リコリス。君を守ることができなかった俺を恨んでいるのか? それは、そうだな、……卒業式の式典に出席している間に、君が流刑にされていたなど、婚約者としてあまりにも間抜けすぎる」

「いえ、そういうわけではなく」

「すまなかった、リコリス。気づいた時には君はどこにもいなかった。何があったのかを父や宰相から聞き出し、君を見つけるまでに一晩かかってしまった。さぞ心細かっただろうと思う。辛かったな、リコリス。俺を恨んで良い。君の美しい足で、俺を踏んでくれても構わない」

 ユリウス様が私の足元に跪いて項垂れて、何やら長々と謝罪をしはじめる。
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