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神竜の乙女 1

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 邪魔臭い幾重にも布が重なった足元まであるパニエを剣で切り、ミニスカートに変えている私を、ヴィルヘルムは何か言いたげな目でジイッと見ていた。

 私はドレスと切り取ったパニエを重ねて作った寝床に、かろうじて下着ではない姿で寝転んでみる。
 ふかふかして良い感じ。

 あとは屋根さえあれば、拠点は完成。

 ルーベンス先生は木々の間にハンモックを貼って寝ることもあるので、屋根的なものがなくても良いといえば良いのかもしれないけれど、不意の雨でも眠ることができるぐらいの耐久性は、欲しいものよね。

「リコリス、お前はそのような姿で毎日を過ごすのか、これからの、毎日を」

「何か問題でもありましたか」

「不憫だ」

「良いですか、ヴィルヘルム。ここには私一人しかいないのですから、下着姿であろうと全裸であろうと特に問題はないのですよ。ヴィルヘルムも同じようなものではないですか、服を着ていません」

「竜だからな」

「竜ならば全裸で良く、人であれば全裸は不憫というのは、妙な話だと思いませんか」

「お前は俺の契約の乙女となった。契約とは不滅。であれば、お前のために俺が力を使うのは、やぶさかではない」

「余計なことはしないでくださいよ、これはソロキャンなので。ソロキャンとは、大自然の中、一人で自然と向き合うことなのです。なるだけ、魔法は使いません」

「火起こしは良いのに?」

「使えるものは使って良いと、ルーベンス先生は言っています」

「その辺りの線引きが俺にはわからん。ならば神竜の乙女の力は、使えるものだと思って良いのではないか」

 ヴィルヘルムがしつこい。

 そんなに今の私は不憫に見えるのかしら。

 丸太トーチはあるし、綺麗な海と砂浜の上に、元ドレスだった豪奢な布を敷いて座っているのだし、そこまで私は哀れではないのだけれど。

 日差しは肌を焼くほどではない程度に暖かくて、肌を晒しているから涼しい。

 このぐらい、水着に比べたら肌の露出とは言えない。
 ヴィルヘルムは水着を見たことがないのかもしれないわね。

「リコリス、俺との契約により、お前は神竜の乙女となった。神竜の乙女とは、剣をその身に宿すだけではない。俺の力を好きなように使えるということだ」

「具体的には?」

「好きなように戦闘服を変えることができる」

「まぁ。つまり、フォームチェンジが自由自在にできるということですね」

「ふぉーむちぇんじとは」

「昨今の魔法少女物のアニメでは定番です。アニメ、知りませんか、ヴィルヘルム。王国で機械技術が盛んになってからというもの、映像作品もかなり様式がかわりました。昔は本のみでしたけれど、それが動く絵となり、今では各ご家庭にあるモニターに届けられ、好きな時にドラマやアニメ、ニュースなどを見ることができます」

 私の妹などは、魔法少女の出てくるアニメが好きでよく見ていた。
 私がキャンプドキュメンタリーに番組を変えると、よく怒ったものである。

「そうか、よくわからないが、俺がほんの少し僻地で眠っている間、王国も変わったのだな」

「ヴィルヘルムの少しとは、どのぐらいですか」

「百年か、二百年か、そのぐらいだな」

「まぁ。……それはともかく。魔法少女とはフォームチェンジをするものです。つまり、衣装替えのことですね」

「それならば衣装替えと最初から言え。リコリス、胸に手を当ててみろ。そして言うと良い。白竜の乙女の力よ、目覚めよ、と」

「それは最早、魔法少女ですね」

 まぁ良いか。
 ヴィルヘルムとこれ以上衣服の話をしていても仕方ない。


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