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 救出作戦 2

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 魔封じの呪符のせいで力を弱められているのか、ティグルちゃんがいくらぶつかっても、檻はびくともしないようだった。
 水色大虎は、体に青い炎を纏い、炎を吐くことができる。
 ティグルちゃんは私の家ではそれをしなかったけれど――全てを焼き尽くす炎であればきっと、檻を焼き切ることもできるはずなのに。

 シスちゃんは空を飛ぶ以外のことはできない。天馬は戦う力がない。その代わりとても聡明で、いい子だ。
 シスちゃんだけじゃない。みんな、いい子だ。
 それなのに――お父様が購入してきたときも、このように、いや、もっとひどい状態で売られていたのだろう。
 私はお父様を責められない。

 もし私が客人としてここに参加していたら、どんなにお金がなくても、借金をしてでも皆を買おうとしたと思う。
 そうでなければ、先に売られていた魔生物の体の一部のように、皆解体されてしまうだろうから。

「七百万ギルス! 他には? あぁ、ミスター! 一千万ギルス! 素晴らしい!」

 男の言葉が会場を盛り上げる。
 レイシールド様が姿勢を低くして、私の耳元で囁いた。

「――もうすぐ、騎士団が到着する。ティディス。入り口から逃げようとするものだけを、シュゼットの力で眠らせて欲しい。できるか?」

「わかりました」

「リュコス、ティディスを任せた」

『下僕を守るのは主の務めじゃ』

 リュコスちゃんが得意気につんと、鼻をあげた。
 私はレイシールド様の手を、ぎゅっと握りしめる。

「気を付けてください、レイシールド様。怪我は、嫌です」

「あぁ。……ありがとう」

 レイシールド様は私の手を引くと、繋いだ手の甲に唇を落とす。
 皮膚にあたる柔らかい感触に、私は目を見開いた。
 こんな時なのに、かっと体温が上昇して、頬が染まった。
 レイシールド様が剣を抜いたのを合図にするように、リュコスちゃんの透明化が解かれる。

 私の姿も――今は見えている。
 私はティグルちゃんとシスちゃんに聞こえるように、声を張り上げた。

「ティグルちゃん、シスちゃん、助けに来たわ!」

「……グル……!」

『てぃでぃすさま……!』

 ティグルちゃんの鋭い瞳が私をうつした。
 シスちゃんの声が頭に響く。シスちゃんは、リュコスちゃん程ではないけれどお話しすることができる。

「レイシールド・ガルディアスの名の元に、我が国の法を犯す者どもを捕縛する。俺に逆らう気のない者は動くな。動く者は切り捨てる!」

 ステージに向かい抜き身の剣を向けて足を進めながら、レイシールド様が堂々と、高らかに名乗りを上げた。
 仮面の客人から悲鳴が沸き上がり、広間は先程とはちがう不安に満ちた喧騒でつつまれる。

 ステージの上の男が「どういうことだ! 皇帝がここにいるわけがない、偽物だろう!」と、焦りと驚愕が入り混じった大きな声をあげた。

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