呪われ王子と呪具好き令嬢〜婚約破棄されたので呪われた王子の花嫁になります〜

束原ミヤコ

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 亡命者 2

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 綺麗なお部屋の一つに、私はバーカウンターやらテーブルやら椅子やらソファを出現させて並べた。
 あっという間におしゃれなパブに様変わりしたお部屋で、イドちゃんたちが皆さんにお酒を振る舞ってくれる。
 私も秘蔵のサラミや生ハムやチーズを出した。
 それからテーブルの上に卓上コンロを出す。これも魔道具の一つで、中に炎石が入っており、それが燃える。燃えると、網やフライパンの上に置いたお肉などが焼ける。

 その卓上コンロで、イドちゃんたちが私が購入して保存しておいたコロッケを焼いた。
 アベルさんは「これは、商店街のカヤおばあちゃんのコロッケ……」と言って喜んでいた。
 さすがアベルさんだ。お目が高い。

「……つまり、キャスの作った万能薬がなくなったせいで、国境での旗色が悪くなっている。ルディクはさらに徴兵をしようとしているが、度重なる増税のせいで民の不信感が強まっており、そこにきての婚約破棄騒動で完全に信頼を無くしたというわけか」

 ひとしきりオリヴァー様の話を聞いて、シェイド様は頷いた。
 私は国の問題に口を出すつもりはなかったので、揚げたてコロッケを保存しておいて焼き直したものを、ホクホク食べていた。

「その通りです。ルディク様は従わないものを捕まえては投獄しています。公爵夫妻の入れ知恵もあるようですけれど」
「あの二人は……お金に目がないですし。野心家で、お金づかいが荒いのです」
「その公爵夫婦とは、キャスを虐待したというものたちだな」
「大したことはされていませんよ。屋根裏に押し込められたり、ご飯がもらえなかったり、鞭で叩かれたぐらいですから」

 シェイド様の手の中でグラスが割れて、すぐさま元に戻った。
 そういえばジョセフィーヌも感情の昂りが、周囲の環境に影響を与えていた。
 シェイド様もジョセフィーヌの呪いにかかっているから、同じなのかもしれない。
 私のために怒っている? だとしたら、嬉しい。

「キャストリン様がいなくなり、それまで流通していた魔道具師キャスの作っていた万能薬も星のカンテラも、永遠の蜜蝋も、咳止めドロップも熱冷まし薬も全て消えました。キャストリン様がキャスだと考えるのは自然なことです」
「あれは、ごく普通の当たり障りのない魔道具です」
「そう思ってたのはキャスだけだ。言わなかったが、あんたはものすごく世間知らずだよ、お嬢ちゃん」

 アベルさんが人の悪い笑みを浮かべる。
 シェイド様は「どうやら、そのようだな」と同意した。

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