47 / 74
些細な嫉妬
しおりを挟む首のリボンを、レオンハルトが咥えてするりと解いた。
器用に両胸をすくうようにして両手で掴まれて、服の上から指先がこりこりとまだ柔らかい胸の突起を弄る。
「レオ様、駄目です、ここでは……」
「君が、つれないのがいけない。こうしていないと、理性的な君はすぐに不安になってしまうだろう? 俺がどれほど伝えても、自分を罪人だと思っている」
「……どうして、分かってしまうのですか」
「君は嘘が下手で、俺は嘘を見抜くのが上手い。以前もそう言ったな」
「申し訳ありません、私……どうしても、考えてしまって。聖女様が傷ついたのは事実です。私は何もしていないわけではないのです、気づかなかったことも、罪でしょう」
それ故の、五年間の懲罰だったのだ。
ルティエラは、それについては文句などなかった。
それで傷つけてしまった罪が償えるならと受け入れていたし、懲罰のあとの新しい人生についても考えることができていたのだ。
けれど、今は違う。
こんなに──レオンハルトに甘やかされていては、懲罰ではない。
「全て、疑わしい。天災の魔女ならば、虐められたと泣き寝入りせずにやり返すことも容易いだろう。君に、雪や雨を降らせるようにな」
「聖女様ですから、やり返すなど思いつかなかったのではないかと」
「そうかな。俺はそうは思わないが、君はそう思うのだろうな。ティエ、君は懲罰を望んでいるのだろう?」
やや強く、胸を掴まれて、服の上から胸の頂を抓られる。
僅かな痛みを感じて、ルティエラは眉を寄せた。
「ぃ……っ」
「君から俺に口づけて。俺が欲しいと、言え」
「……ゃ、ぁ、だめ、ここでは、いけません……」
「君はつれない。それに、俺は少し妬いている。だから、俺を慰めてくれないか? 専属秘書として、俺の命令を聞くのは君の役割だ」
ブラウスのボタンを器用に外しながら、レオンハルトはルティエラの首に口づけた。
レオンハルトの侍女たちが用意してくれた下着は、支給品の質素なものではなく、貴族が身に着ける高級なもので、繊細なレースでできていて美しいが布の面積が少ない。
ブラウスの前をあけられると、下着に包まれた胸が半分ほど露わになる。
指で下着をずらされると、すぐに白く形のいい胸がまろびでた。
外気に触れた胸の頂が、何かを期待するようにつんと尖って震えた。
隠そうとしたものの、狭い椅子の上でレオンハルトの膝に乗っているので、少し動くだけで体勢を崩してしまいそうになる。
何もできずにただ、レオンハルトの腕を握るルティエラを覗き込むようにしながら、レオンハルトは口元に笑みを浮かべた。
仮面をしている今でも、その下の素顔は、その瞳は、熱を帯びてルティエラを見つめていることが分かる。
楽し気に細められているのだろう。もしくは、欲望に濡れているのだろう。
そのどちらも、レオンハルトに長い時間をかけて失った記憶を教え込まれた夜から、幾度も見た。
だからといって慣れたりはできないけれど。
その視線を、空気を、雰囲気を感じるだけで、体温があがっていくようだった。
体が勝手に熱を帯びていく。
先程まで、二人きりの部屋には文字を書く音と紙をめくる音ばかりが響いていた。
そこには淫靡さなどまるでなくて、ただ仕事を淡々とこなしているだけだったのに。
部屋の空気さえ、変わっていってしまうようだった。
「レオ様、お待ちください……ここでは……それに、嫉妬、というのは……」
「あぁ、可愛い。食べてしまいたくなるほどに」
「お願いです、待って……」
乳輪をくるりと指が辿り、太い指に優しくそわそわと触れられる。
人の来る執務室で、胸をさらけだしていることが恥ずかしくてたまらないのに、快楽の予兆を敏感に感じ取って、ぞくぞくする体がどうしようもなく泣きたくなった。
メイド服を着ているせいか、レオンハルトが仮面を被って軍服を着ている仕事の最中の姿だからか、それともここが執務室だからか。
本当に、彼に従属しているような気分になる。
「私……っ、ぁ……レオ様に、なにか、してしまいましたか……?」
「俺に従順なようで、心の奥では君は俺から離れることを考えているだろう。それが一つ目。二つ目は──騎士たちが、君を見る目が気に入らない」
「私を、見る目……?」
「あぁ。君は明るく、愛想がいい。誰にでも分け隔てなく挨拶をするし、言葉を返すだろう?」
「は、はい……それは、当たり前、で……」
「騎士たちは君を女として見ている。俺が君を抱く想像をして、自分を慰めている者もいるはずだ。そんな者たちが、君に話しかけて、体に触れる。君は俺のものだというのに」
ルティエラは常にレオンハルトと一緒にいるために、個人的に騎士たちと話したり、触れられたりしたことはない。
ないように、思う。
「……っ、ぁ、あのとき、の……」
ふと、思い当たる記憶があり、ルティエラは目をぱちりと見開いた。
それは今日の午前中のこと。レオンハルトに手紙を届けにきた騎士から、ルティエラは手紙を受け取った。
礼を言って、手紙を受け取るときに手が触れた。
申し訳ないと謝罪をする男に、ルティエラは気にしないように言った。
それから──その男は、ルティエラの髪に羽がついていると、手を伸ばして羽をとった。
恐らく、羽ペンの羽の一部が抜けて、髪についたのだろう。
男は礼をして出て行った。レオンハルトは特に何も言わなかったが、あの時のことを妬いているのだろうか。
「それだけではないが、気に入らない。君に触れていいのは俺だけだ。君が微笑みかけていいのも、俺だけだというのに」
「レオ様、まって……っ、あ、ぅ……」
くるくると乳輪を辿り遊んでいた指先が、ぐいっと乳首を押しつぶした。
もう片方の胸の突起を、舌で優しく舐られる。
ルティエラは突然の強い刺激に小さく声をあげると、レオンハルトの頭を抱いて、体をびくびくと震わせた。
703
お気に入りに追加
2,675
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる