26 / 74
あの朝の悲嘆
しおりを挟む──そうかもしれないと、感じた。
けれどそれが正解だと知ったときの衝撃は、ただ予想をしていただけの時の比ではなく、ルティエラは目を見開いてまじまじと男の顔を凝視した。
「レオンハルト様……」
「似ていたか、ティエ。あの夜も君を、夜明けまで抱いた。もうやめてと泣くまで、抱き潰したつもりだった。……だが、まさか俺を一人残していなくなるとはな」
「……っ、あ、あぁっ、まって、れおさま、まって……っ」
「話はあとでいい。……邪魔くさいものが外れた。ティエ、よく見ていろ。もう、忘れることは許さない」
「あ、あっ、あっ、れおさま、あ、ひ……ぅ……っ」
ルティエラの顔の横に手を置いて、レオンハルトは激しくルティエラの中を熱杭で貫いた。
引き抜かれては最奥を責め立てられて、ルティエラの足先が天井を向く。
どちゅ、じゅぶ、じゅぶ。
卑猥な水音と荒い息づかい、ルティエラのはしたない声が部屋に充満して、大きくて頑丈なベッドが揺れた。
「ティエ、君の中は熱くて、狭くて気持ちがいい。あの朝も、抱こうと思っていた。それから、頬を撫でて口付けて、体を清めて……一緒に、朝食を、と。全て、叶わぬ夢に終わってしまったが」
「ごめんなさい……っ、れおさま、ごめんなさい……」
「もう、いい。俺も君を傷つけた。あんなことになるとは、思っていなかった。迂闊だった。俺の、甘さだ」
「もう、いいの……っ、れおさまが、助けてくださったから……もう、忘れ、ました……だから……」
大勢の男たちに囲まれて穢されそうになったことは、もう遠い記憶のようだった。
記憶はレオンハルトのあたえてくれた支配的な快楽によって塗り替えられて、おそろしさも嫌悪感も悲しみも、今は消えてしまった。
今はただ、気持ちがよくて。
追い詰められるように激しく強く責められて、ルティエラは体にあふれる快楽が弾けそうになっているのを感じた。
「れおさま、いく、いきたいの……っ、ゆるして、もぉ、いきた……っ」
許可をとらなくてはと、レオンハルトの美しい顔を見上げて懇願の言葉を口にした。
僅かに朱に染まる頬が、少し潜められた形のいい眉が、長い睫に縁取られた神秘的な空色の瞳が──彼を形作る全てが、精巧に描かれた絵画のように美しかった。
仮面の下の素顔は醜い。ひどい怪我を負っている。そんな噂は全て的外れで、ルティエラが知るどの男性よりもレオンハルトの美貌は際立っていた。
けれど、そんなことはルティエラにはあまり重要ではなかった。
あの朝、ルティエラは彼に対して不誠実にふるまった。眠る彼に声をかけず、逃げるように、部屋を出てしまった。
それでもルティエラを想い心配をしてくれいたことが、嬉しい。
「あぁ、ティエ。いけ。何度でも、達していい」
「っ、あ、いく、いく……きちゃう、れおさま……っ」
「ティエ、好きだ。君が好きだ、ティエ。もう、離さない」
「ぁ、あああ、あっ、ああああ……っ!」
目の前が白く弾けて、ルティエラの意識は高く浮かびあがるようだった。
絶頂感から戻ってこれずにふわふわした感覚の中で揺蕩う。
レオンハルトに抱きしめられて、達したばかりの敏感な、震えて収縮する中をがつがつと穿たれる。
続く責め苦に泣きじゃくっているのが、自分ではないように感じられた。
突き上げられながら指先が物欲しそうに顔を出している陰核を撫でる。
次第に強く押し上げられるようにされて、強すぎる快楽に、悲鳴をあげる。
「れぉさま、もお、おわりに……くるし……っ」
「いい子だ、大丈夫。もっと気持ちよくなれる、ティエ。大丈夫。気持ちいい、俺も、同じ」
「れおさま、も……?」
「あぁ。好きだ、ティエ。好きだ、君が好きだ。ティエ」
「……っ、れおさま、れおさま……っ、きもちい、すき……っ、あっ、あぁ……っ」
何度も囁かれると、その言葉以外には何も考えられなくなってしまう。
好きだと言われる度に体が震えて、レオンハルトの昂ぶりを離さないとでもいうように、膣壁が熱杭に絡みついた。
突き上げられた最奥は昂ぶりの先端に吸い付くようで、呼吸が乱れ、休む暇もなく与えられる快楽が苦しいのに、気持ちがいい。
「また、いく……わたし、すぐ……っ、いってる、いってるの……っ、あぁ、もお、だめ、だめ……っ」
「はは……可愛いな、ティエ。俺は、足りない。まだ、付き合えるな?」
「れおさま、ひ、うぅ、あ、あああっ」
レオンハルトの熱は、高まる一方だった。
ルティエラの中で更に硬くふくれて、大きくなった。
全てを飲み込めないぐらいに長く太い楔が、残酷なほどに何度もルティエラを穿つ。
ルティエラはぐったりとベッドに体を投げ出して、揺さぶられるたびに甘い声を漏らした。
もう、幾度達したのか分からない。
絶頂を迎えているのに、終わりが見えない。上り詰めては戻ってくることができず、もっともっと、高いところまで連れていかれる。
「おかしく、なるの……っ、わたし、へんに……っ」
「大丈夫、君は可愛い。愛らしく淫らな俺の花だ」
「や、あ、あああっ、また、きちゃ……っ、あ、あ……っ!」
レオンハルトの自身が、ルティエラの中で大きく膨らみ震えた。
どくりと腹の中に熱いものが広がり、多幸感に涙があふれる。
あたたかい液体が、じわりと秘所からあふれて滴り、ぐっしょりとシーツを濡らした。
レオンハルトはルティエラの中から自身を引き抜いた。それはまだ硬く起立したままだったが、これで終わりだというように、ルティエラの濡れた頬に口付けた。
「……ティエ、愛している。よく頑張ったな、いい子だった」
「ん……」
優しい口付けが心地よくて、ルティエラは何かを言おうとした。
けれどそれは言葉にならず、深く目を閉じると意識が眠りの底へと落ちていった。
964
お気に入りに追加
2,676
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる