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番外編

お役に立ちたい! 7

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 慎みや恥じらいを持ちなさいとお兄様によく怒られていた私。
 てっきりそういった感情とは縁遠いと思っていたのだけれど、案外、恥ずかしい。
 俯く私を、「どうしたんだ?」と言って撫でてくださる硬い手の感触に勇気づけられて、おずおずと唇を開いた。

「あの……、私、いつもジーク様には、たくさん可愛がってもらっておりますわ。でも、……たまには、私もジーク様に喜んでいただきたくて……」

 喉の奥に引っ込んでしまった言葉を、なんとか口に出す。

「私は、ティアに触れることができて十分に喜んでいる。……このところ、毎日のように、あなたを抱き潰してしまっていること、反省をしているぐらいだ。すまない、ティア。あなたが愛しいあまりに、浅ましい欲望をぶつけてしまい」

「い、いえ! それは良いのです。ジーク様、私健康と頑丈だけが取り柄なので、思う存分欲望をぶつけてくださって、嬉しいです。私、ジーク様にしていただくことは、全部好きです。あの、そうではなくて、……ジーク様、毎日お忙しくて、お疲れでしょう?」

「あぁ、……少し、厄介な問題がある。あなたにも話そうと、思っていた。……疲れてはいないよ。一日の終わりにあなたの顔を見ることができると思うだけで、疲れなどはどこかに消えてしまう」

「ジーク様……っ」

 あぁ、好き……!
 私はジークハルト様に思い切り抱きついた。
 私の体を簡単に受け止めてくださるジークハルト様の背中に腕を回して、ぎゅっと抱きしめる。

「ジーク様、ここは押し倒されてくださいまし」

「倒れるべきだったのか」

「はい! 私、今まさにジーク様を押し倒したつもりでしたの。でも、オズさんが言っていましたわ。武人の方というのは体幹がしっかりしていると。本当でしたわ。びくともしませんのね」

 ぐいぐい体重をかけてみるけれど、びくともしない。
 膝の上にまたがって、えい、と腹筋や胸を押してみる。とっても硬い。
 ジークハルト様は困ったように笑った後、私の体に腕を回して、とさりとベッドに倒れてくださった。
 上に乗った状態で一緒に寝転がった私を抱きしめて、背中撫でながら「これで良いのか?」と笑みを含んだ声で聞いてくださる。
 背中を撫でられると、ぞくりとする。腰やその下に続く双丘に不埒な指先が辿り始めて、私は切なく眉根を寄せた。
 駄目だわ。
 流されてしまいそう。
 自分から何かをするよりも、何かをされることに慣れている私。
 何度も可愛がってくださるものだから、すっかり体はその感覚を覚えてしまい、貪欲に快楽を拾い始める。

「ジーク様、待って、まってくださいまし……」

「触れては、いけない?」

「はい……、今日は、私に任せて欲しいのです。ジーク様は、動かないで、欲しいのです」

 喜んで頂きたい。
 そのために、私は今日は頑張ると決めた。
 ジークハルト様は素直に私からパッと手を離してくれた。

「気持ちは嬉しいが、あまり、無理はしないでほしい」

「無理ではありませんわ。私、知識だけは結構ありますのよ。だから、大丈夫です」

 私が趣味の艶本を読みまくっていたのは、きっとこの日のためなのだわ。
 ジークハルト様を喜ばせることができる私でありたい。
 王国の侍女の皆さんには「ティア様には、褥教育は必要ないですね!」と太鼓判を押されていたのだ。
 任せておいてほしい。

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