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番外編

側近会議 1

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 リュシーヌの革命戦争平定後、自国にて姿を隠したジークハルトに声をかけられて彼の側近になった者は数名。
 その数名の息がかかったものや信頼するものたちを含めると、もっと数が増える。

 だが、ジークハルト直々に声をかけたもの達はやはり他の人々と比べてしまうと特別で、今でもジークハルトの側で彼を支えている。

 その中の一人が、ジェイク・ギブスである。

 ギブス伯爵家の長男であるジェイクは、二十八歳。
 薄い灰色の瞳に、茶色い髪をきっちりオールバックにして、一寸の乱れもない服装で身を包み、真っ直ぐ背筋を伸ばしている姿は近寄り難い雰囲気があるけれど、話すと案外気さくな人物だと、城の侍女たちの間では評判である。

 評判になっている理由は、ジェイクが独身だからだ。

 花の独身ーーというには、少々年嵩になってしまっている自覚はあった。
 婚約者もいなければ、恋人もいない。作る予定も今の所はない。

 別に女嫌いというわけではない。ただ、今はそれどころではないと、思っているからである。

「今後はテオドール様もジークハルト様のために力を貸してくださるとのこと、皆様、歓迎してくださいね」

 クレストと、血の教団の魔術師の男を捕縛して、クレストの屋敷にいた使用人たちの処遇を部下に任せて、テオドールと共に城に帰還した夜。

 クレストは貴人用の牢に、魔術師の男シュダは魔法を使われると困るので、魔法封じの施しがされている牢に入れた。
 すぐに尋問をはじめてもよかったが、捕らえてしまった後なので、急ぐ必要はない。

 ジェイクはまずは顔合わせのために、側近達を集めて、そこに新しく加わるだろうテオドールを連れて行った。
 軽食と紅茶と、ワインが並ぶテーブルを、数名の男たちが囲んでいる。

 ジェイクが紹介すると、テオドールは生真面目な表情で、深々と頭を下げた。
 癖のある黒髪に、灰色の瞳の美丈夫は、おそらくジェイクと同じぐらいの年齢だった筈だ。

「テオドール・オリアス。オリアス侯爵家の当主だ。此度は、ーー私の預かり知らぬところで、家名が血の教団に勝手に使われていたこと、それに薄々気づいていながら、確証がなかったために動くことができず、貴殿らの手を煩わせてしまったこと、お詫び申し上げる」

「テオドール殿は、この通り生真面目な方です。オリアス家はマルガレーテの生まれた家ですが、テオドール殿に二心はありません。陛下と共に良い国を作りたいと思ってくれているようです」

「それは良かった。場合によっては、再び争いが起こりかねないと思っていましたから。僕は、争いは苦手です。それよりも、計算をしていた方がずっと良い」

 黒い長く艶のある髪を首の横で赤いリボンで結んでいる、不機嫌そうな表情の青年が言う。

 アルケイド・ライタイド。まだ十九歳の若き宰相である。
 アルケイドは、宰相補佐のジェイクの上司に当たる。

 上司と言っても十歳近く歳が下なので、弟のようで可愛らしいーーと、思いたい、という希望はある。

 ジークハルトは聡明であり、たまに何を考えているのかよく分からない時もあるが、生真面目で、素直さもあるので、弟のようで可愛いと思うときが時折ある。

 だが、アルケイドはあまり可愛くない。
 からかうと怒るし、ジェイクが言った言葉の何倍もの言葉を浴びせられてやり返され、言いくるめられるので、あまり可愛くない。
 
「俺は、計算よりも戦の方が良いね」

 アルケイドの横に座っている男がぽつりと言った。
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