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新しい商売 1
しおりを挟む先生たちを見送った後、グエスが私のためにもう一度紅茶を淹れ直してケーキスタンドにケーキを持ってきてくれた。
アシュレイ君を誘って中庭に向かい、一緒にケーキを食べる。
アシュレイ君には中庭の椅子が高く、足が地面についていない。
それでも背筋を伸ばしてピシッと座っているのが可愛らしい。
「お嬢様、なんだかよい顔になりましたね。何かが吹っ切れたような」
ケーキスタンドから皿にケーキを取り分けながら、グエスが言った。
「そうかしら。ありがとう、グエス。だとしたら嬉しいわ」
「はい。私としては寂しくなってしまいますけれどね。お嬢様が私の手を離れてしまうことが……」
「グエスも結婚するのでしょう?」
「そうですね……ええ。アルバには待ってもらっていますから、そろそろ私も決断しなくてはなと思っています」
「グエスもいなくなっちゃうの?」
アシュレイ君の瞳が不安そうに揺れる。
「寂しいけれど、仕方ないよね。わかってる。リーシャもグエスも結婚するんだよね、それはいいこと。僕は……騎士だから、寂しいけど我慢する」
「アシュレイ君……ありがとう。時々会いにくるわね、ハクロウもルーグと仲良しになったみたいだし」
「うん。ハクロウはルーグが好きみたいだ。僕にはお父様とハクロウがいるから、大丈夫だよ、リーシャ」
名前を呼ばれて、アシュレイ君の足元にいるハクロウが顔をあげる。
それから、アシュレイ君の膝に大きな顔を乗せた。
アシュレイ君に撫でられて、気持ちよさそうに目を細めている。
「アシュレイ様、結婚をしても私はアルバと一緒にアールグレイス家で働きますよ。どこにも行きませんから、大丈夫です」
「そうなの……? よかった! でも、リーシャもグエスも、大丈夫だからね。皆、僕を心配してくれるけれど、もう大丈夫なんだ。だって僕は、黒騎士になるんだから!」
アシュレイ君は胸を張る。
ゼフィラス様からもらった仮面とローブは、アシュレイ君のお部屋に大事に飾ってある。
いつかきっとアシュレイ君も、ゼフィラス様のように身分を隠して冒険者になるのだろうか。
もしそうなら、優しく立派な騎士になるのだろう。
「騎士様、お兄様とグエスたちをよろしくお願いしますね。でも、寂しい時は寂しいと言って、お兄様のベッドに潜り込んでくださいね、アシュレイ君。きっと喜ぶわ」
「わかったよ、リーシャ。お父様が寂しがるから、たまには一緒に寝てあげるね」
私とグエスは顔を見合わせるとくすくす笑った。
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