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婚礼着の始末 1
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クリストファーとの婚礼に着るはずだった婚礼着が、綺麗にたたまれて袋に入れられる。
私にとってはもう必要ないもので、かといって捨てるのも忍びない。
せっかく、お母様が私のためにつくってくださったものなのだから。
「ゼフィラス殿下は、なんておっしゃっているの?」
「婚礼着についてですか?」
「ええ。もちろん、相談はしたのでしょう?」
「はい」
お母様とお父様はまだ領地に帰らずに、タウンハウスに残っている。
久々に会うアシュレイ君と遊んだり、ハクロウを撫でたり、のんびりすごしていた。
「新しいものをその日がきたら送らせて欲しいと。婚礼着についても王家の伝統があるようですから、お願いをしました」
「そう。それならいいわ。あなたは一人で決めて一人でどんどん歩いて行ってしまうところがあるから、気をつけなさいね」
「ありがとうございます、お母様。それについてはとても反省しています。私、目の前に水溜まりがあっても気づかずに突き進んでしまうみたいなので」
「それがあなたのいいところだと私は思けれど、あなたには幸せになって欲しいのよ。親としてね」
「はい。気をつけます」
ゼフィラス様と婚約をしたのに、クリストファーとの婚礼着をとっておくのはゼフィラス様に失礼な気がした。
だから、やはり捨てた方がいいのかと尋ねてみると、ゼフィラス様は「リーシャのドレスは私が準備する。王家にはお抱えの仕立屋がいて、彼らに任せないと後々面倒になるんだ。クリストファーとの婚礼着など燃やし……いや、着ることはもうないだろう」とおっしゃっていた。
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