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もっとあなたを、きっと 2
しおりを挟む卒業式の騒動から、数日。
三大公爵家のうちの一つ、ベルガモルト家の嫡男クリストファーが起こした罪は、卒業式に集まっていた多くの貴族たちの目にすることとなった。
それ故に、ゼフィラス様は後処理で忙しく、しばらくお会いできない日々が続いた。
その間、私はアールグレイス家で静かに過ごしていた。
お父様とお母様が滞在されていてたので、今まであたことをお話したり。
アシュレイ君と、散歩をしたり。
ベルガモルト家のことではお父様にもお母様にも思うことがあったらしい。
クリストファーの行いで、皆、心に小さな傷ができていた。
それを癒やすような、日々だった。
それからしばらくして。
久々に会いにきてくださったゼフィラス様から、クリストファーたちのことを聞いた。
二人とも、罪を認めた。口では、反省しているようなことを言っていたそうだ。
クリストファーとシルキーさんは、爵位を剥奪されて投獄された後、流刑地に追放されることになるようだ。
辺境にある流刑地は不毛の大地だけれど、愛があれば二人で暮らすことはできる――らしい。
命を奪って、命を奪われなかったのだからそれだけでも温情が与えられたのだろうと、話を聞きながら、お兄様は言っていた。
どうやらメルアを、公爵夫妻が引き取るという話が出ているらしい。
ベルガモルト家にはクリストファーしか嫡子がいない。
公爵夫婦から、ゼフィラス様は相談を受けたらしい。
血を繋げるのが公爵家の役割だ。けれど――それはもう、できないからと。
ゼフィラス様は国王陛下と相談し、それを了承したそうだ。
大切なのは血筋ではない。心であると。
公爵家の借財については、ただお金を渡すだけではなく、お金を稼ぐ方法を教えるべきだなとお父様は反省をしていた。
サーガさんに頼んで公爵に商売の仕方を指導してもらうと言っていた。
お父様やお兄様は天性の商売人で、どうすればいいのかを教えるのは難しいのだそうだ。
その点サーガさんは、人に指導するのが上手い。
メルアの件で、サーガさんと交流を持つようになったお兄様はそう評価していた。
元々ベルガモルト公爵は真面目で勤勉な方らしい。
ただ――公爵家が商売をするなどあり得ないと、借財で苦しみながらも歴代の公爵たちが守ってきた矜持を、捨てられなかっただけだそうだ。
お父様は友人としてそれを不憫に思い、力を貸していたらしい。
きっと変わるだろうと、お父様は言っている。
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ゼフィラス様はすぐに結婚をしたがっていたけれど、私が王妃として相応しい人間になるまで待っていて欲しいと伝えている。
ゼフィラス様も頑張ってくださったのだから、私も頑張らないといけない。
自分を自分で認めるためにも。
皆から認めて貰うためにも。
――あなたを愛していると、堂々と伝えられるように。
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