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やりたかったことを全部 2
しおりを挟む私は仮面の騎士ゼス様にたぶん、惹かれていて。
それは、ゼフィラス様で。うまく言えないけれど、容姿はそんなに大きな問題じゃない。
「劇を、見に行きたいです。いつも一人でしたから」
「行こう、何回でも」
「お祭りに行きたいです。春も、冬も。恋人と一緒に、歩いてみたいって思っていました」
「もちろん」
「屋台の食べ歩きも。屋台のごはん、美味しいのですよ」
「私も好きだよ。堅苦しい食事よりも、楽でいい」
「旅行も……」
「行こう、リーシャ。好きな相手から、ホテルのチケットをプレゼントされた私の気持ちを察して欲しい」
「困りましたか?」
「あぁ。色んな意味で」
「プレゼント……私、刺繍が下手で。ゼス様だと思って渡すことができたのですが、ゼフィラス様にはとても見せられないものでした」
「そんなことはないよ。あれは可愛い。味があって」
「……ゼフィラス様、お願いが、あって」
「何でも言って欲しい」
こんなことを言うのは、間違っているかもしれない。
でも、ゼフィラス様になら頼むことができる。甘えているのは分かっている。
頼りたい。甘えたい。私は強くなくてはいけないのに――体の周りに張り巡らせていたとげとげが、消えてしまったみたいに。素直な言葉が口からこぼれる。
「……クリストファーたちの結婚式に、私は、行かなくてはいけなくて」
「そんなものは行かなければいい……とは、思うが、一緒に行こうか、リーシャ」
「え……」
「君の卒業式に婚約者として出席をして、その後は、クリストファーの結婚式だな。私は、君と一緒にいる。私が君の婚約者だと皆に知らせるいい機会だ」
「で、でも、ゼフィラス様……」
「大丈夫だよ、リーシャ。……私は君の傍にいる。君を守る。今までできなかった分も、君を」
子守歌のように響く声に、私の意識は甘い眠りの中に落ちていく。
夢も見ない、深い眠りの底へと。
目覚めた時には、すでに日が昇っていた。
気恥ずかしく思いながら、ゼフィラス様におはようの挨拶をした。
すっかり綺麗に乾いた服に着替えて朝食を摂っていると、扉を叩く音と共に朝から元気な声が響いた。
「おはよう、お二人さん! 俺の経営するホテルの居心地はどうだった? アールグレイスグループにも負けないぐらいによかっただろう!」
扉を開けて豪快に笑いながら中に入ってきたのは、サーガさんだった。
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