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 王子様の告白 2

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「単刀直入に言う。リーシャ、私の婚約者になってくれないだろうか」

 私の頭は再び真っ白になった。

 婚約者? 婚約者……? 侍女の間違いじゃなくて?
 私はここになにをしに来たのだったかしら。

 ええと、そう。職業の斡旋があって。王太子殿下の侍女になるための面接に来たのよね。
 ゼフィラス様は何か勘違いをしているのだろうか。

「困らせてしまっている自覚はある。……だが、私は諦めていたのだ。君には大切な幼馴染みであり婚約者のクリストファーがいる。一年前、街で君を見かけたときから君が好きだった。だが、この思いは伝えることができない、叶わないものだと、胸にしまっておくつもりだった」
「……えっ、ええ、ええ……?」

 一年前――私はゼフィラス様と交流は、していないわよね。

 ゼフィラス様と交流していないし、ゼス様ともご挨拶も交わしていない。
 好きだと言われましても……困ってしまう。

「君とクリストファーの婚約が反故になったことを知り、私は……どうしても君が好きだと伝えたくなった。リーシャ、どうか私と結婚してくれないか?」

「待って、待ってください、ゼフィラス様、落ち着いて……!」
「私は落ち着いている」

 私は落ち着かない……!
 どうしよう。どうしよう、どうしてこうなったのかしら。
 ゼフィラス様がどれほど素敵な方であっても、私は。

「私は……侍女になるためにここに来たのです」
「それについてもすまなかった。婚約者になってほしいと手紙に書いたら、君は私と会ってさえくれないのではないかと考えた」
「……まぁ、それは、そうかも、です」

 否定はできない。だって、私はもう恋愛とかしないって決めたのだし。
 婚約の打診であったら、たとえ相手がゼフィラス様だとしても、お兄様にお願いしてお断りしていたはずだ。

「……不敬を承知で申し上げますが、私はもう誰とも結婚するつもりも、恋人になるつもりもないのです。私、お仕事をして生きていこうと思っています」

「リーシャ。……私は君のことがずっと好きだった。今も、好きだ」
「ええと……その」

「だから、私に機会をくれないだろうか? 一年間でいい。君が私を好きにならなければ、婚約はなかったことにしよう」

 どうして、私なんかを。
 さっぱり分からないけれど、ゼフィラス様は真剣だった。
 笑って誤魔化すことも、できそうにない。

「……婚約は、必要ですか?」
「あぁ。私もこの年だ。結婚しろと周りがうるさい。君が婚約者であればそれもなくなるだろうし、私は君以外とは結婚するつもりはない」
「うぅ……」

 勿論、私にはこの場で「嫌です」と言って逃げるという選択肢があった。
 私はゼフィラス様の──ゼス様の人となりをそれなりに知っているので、そんなことで怒ったりしない方だと分かっている。

 でも――私に自分がゼス様だと教えるのは勇気のいることだったと思うし。
 ゼス様は恩人で――私に、優しくて。
 
 だから、私は。
 ううん。全部言い訳だわ。
 私は結局、断ることができなかった。

 その赤い瞳があまりにも真剣で、切実だったから。
 拒絶されるのは、苦しいから。
 だから――私はゼフィラス様のことが嫌いではないのだし、一年間だけならと――。

「わかりました」

 ――頷いていた。

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