幼馴染の婚約者に浮気された伯爵令嬢は、ずっと君が好きだったという王太子殿下と期間限定の婚約をする。

束原ミヤコ

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 王家からの手紙 2

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 どうしてこの二人は私に絡んでくるのかしら……。

 これは、もしかして善意なの? 私と仲良くしようって本気で考えているの?
 あぁ、どうしよう。ミランダ様の人相がどんどん悪くなっていっている。

「君がこんなに早く立ち直ってくれて安心した。やはり君は、俺とシルキーを祝福してくれているのだな」

「嬉しいです、リーシャ様。私、クリストファー様にはじめて出会った時にすぐに恋に落ちました。クリストファー様
も一緒の気持ちだったのですけれど、リーシャ様の手前隠すしかなかったのです。でも、よかった」

 さらっと衝撃の事実を言われた。
 出会った瞬間、二人とも一目惚れだったってことなの?

 つまり、一年生の時から。三年間も、私は浮気をされていて、気づかなかった……?

 心に重しをつけられて、海に沈められた気分だ。

「今、職場見学と聞こえたけれど、働く場所を探しているのか、リーシャ」
「もう卒業まで一週間しかありませんのに、お可哀想、リーシャ様……」

「そうだ。ベルガモルド公爵家の侍女になるといい。リーシャなら大歓迎だ」
「あぁ、それは嬉しいです。リーシャ様、私のお世話をしてくださいますか?」

 バキッ! と、大きな音が響いた。
 ミランダ様が持っていた扇をへし折った音である。

「私のリーシャに近寄るのはやめてくださいまし。爽やかな朝が、台無しですわ」
「ミランダ、リーシャは俺の幼馴染だ」

「リーシャ様は、私のお友達です」
「……リーシャ、帰りますわよ」

 ミランダ様が私を庇ってくれている。他の生徒たちが、何事かと私たちを遠巻きに見ている。

「クリストファー様、シルキー。私はあなたたちとは──」

 もう関わらないと、挑むように二人を睨み付けながら私は言おうとした。

 私が何もいえないから、ミランダ様が言い返す羽目になってしまった。
 立場的にはもちろん、私は言い返してはいけない。

 もし何かあれば、お兄様や家族に迷惑がかかるかもしれないもの。
 婚約者の立場であれば意見もできたけれど、もうそうではないのだし。

 でも、このまま言われっぱなしというのはいけない。アールグレイス伯爵家の名前に傷がつくし、何よりもミランダ様一人を矢面に立たせるのは間違っている。
 これは、私の問題だ。

「皆、席についてくれるかな。出席を取るよ」

 私が言い返す前に、シグルスト先生が教室に入ってきて言った。

「それからリーシャ。君に王家から手紙が届いている。後で僕の部屋に来るように」

 王家、という言葉に教室にいる生徒たちがざわついた。
 私は一体なんの手紙だろうと内心首を傾げながら、クリストファーたちから視線を逸らす。

 先生が来たので、これ以上の会話はできない。
 ミランダ様が私に「先生、いいタイミングですわ。後一歩遅かったら、浮気男に殴りかかっているところでしたのよ」と耳元で囁いた。

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