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 ゼス様へのお礼 2

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 クリストファーにそんなふうに褒められたことってなかったから、可愛いって言われるのって慣れないのよね。
 お兄様は私を褒めてくれるけれど、それはお兄様だからだもの。

「ゼス様がおっしゃるのなら、冒険者ギルドで働くのはやめておきます」

「君は就職先を探しているのか」
「はい。職業斡旋所に行ったら、もう一件、ウェールス商会の社長秘書の仕事があって。まだ見学していないのですけれど、サーガ・ウェールスさんとは知り合いなので、こちらも当たってみようと思います」

「……そうか」
「はい。ゼス様、アドバイスありがとうございます。あっ」

 話し込んでいる場合ではなかった。
 私は手荷物をぐいぐいとゼス様に押し付ける。

「先日のお礼の粗品です。アールグレイスグループホテルの無料宿泊券一年分と、お菓子の詰め合わせと、傷薬。それから、ええと……」

 袋に入った粗品を押し付けた後、私は遠慮がちにリボンを結んだ小さな包みを差し出した。

「これ、ご迷惑じゃなければ……迷惑だったらごめんなさい。こういうことするのは、あんまりよくないのかなって思いますけれど。でも、本当にゼス様には感謝をしていて……!」
「これは」

「ハンカチに刺繍をしたのです。ゼス様、黒い大鷲みたいだなって思って、大鷲を縫いました。刺繍入りのハンカチは、護符の意味もありますので、ゼス様がお仕事中に怪我をしないようにと」
「……ありがとう」
「は、はい」

 ゼス様は、アシュレイ君の話では人気者らしい。
 もちろん私も知っているぐらいの有名人だから、こういった贈り物には慣れているのかもしれない。

 ためらうこともなく受け取ってくれて、私は安堵した。
 迷惑だって、突き返されなくてよかった。
 
「では、私はこれで。ありがとうございました」
「え」
「え?」
「い、いや」

 お辞儀をして私が去ろうとすると、ゼス様が疑問を口にした──ような気がした。
 聞き間違いかもしれない。私の目的は果たしたので、どこかでお茶でも飲んで帰ろうかしらね。
 街をうろうろするのもいいわね。ついでいにウェールス商会でも見に行こうかしら。



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