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 昨日助けた●●が来る生活 3

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 よくよく考えたら、この家にはアオと私しかいない。
 人間じゃないけど。アオは男性みたいな姿をしている。

「沙羅、少しだけ、我慢していてくださいね。すぐに極楽浄土に連れて行ってあげますからね」

「殺すつもり……?」

「まぁ、ある意味で」

 極楽浄土、とは。
 恩返しに来たくせに物騒なことをいうアオを、私は睨んだ。
 アオは嬉しそうに微笑んで、私に覆い被さるようにして顔を近づける。

「ふ、ぅ……、ん……ん……っ」

 視界が濁ったと思ったら、唇が重なっていた。
 あまりのことに吃驚して動けないでいる私に、アオは、ちゅ、ちゅ、と音を立てながら何度も啄むような口付けを繰り返した。

 私はアオの胸を押して退けようとしたけれど、先程の乙女のような恥ずかしがり方とは真逆で、力が強くて退けることができない。
 唇は、柔らかくて、少し湿っている。

 キスをしたのは初めてだ。初めての相手が、ヘビ。
 頭を抱えて転げ回りたくなる。アオは美形だけれど、ヘビなのよ。自称、だけれど。

 いや、ヘビじゃなかった場合の方が、かなり問題が多いのだけれど。
 だって、ヘビじゃなかった場合、助けてもらったヘビです、とか嘘をついてうちに上がり込んできた変態ってことになるし。

「ふ、ぁ……っ」

 何度も口付けをしながら、アオの手が私のワンピースの裾を徐にたくし上げた。
 文句を言おうと開いた唇の中に、長くて先がふたつに別れた舌がぬるりと入り込んでくる。

 口の中がいっぱいになる。アオの舌が長すぎるせいだ。どうやって小さな口の中に収まっていたのだろうと不思議に思えるぐらいにそれは長い。

 奥に引っ込めた私の舌を絡めとり、ぬるぬると擦り合わせる。

 二股の舌が奇妙な動きで、私の口腔内を舐る。

 体にピリピリと電気が走っているみたいな、変な感じがする。
 抵抗もままならなくて、私はアオの白い着物を掴んだ。

「は、ぁ、ん……んぅ……」

 鼻にかかった甘い吐息が、まるで私のものではないみたいだ。
 なんで私、こんなことになっているんだっけ。
 わからないけれど、気持ち良い。

「沙羅、可愛いですね。そのまま、楽にしていてください」

 口の中を隅々まで舐め回して満足したのか引き抜かれた舌から、銀糸が伝う。

 アオは私を見下ろして微笑んだ。

 私はすっかり上気した頬と、とろんと蕩けた瞳でアオを見上げた。
 体に力が入らない。思考回路も鈍ってしまって、ただ気怠い心地良さに、体を支配されているようだった。

「本当は寝室で、と思っていたのですが、なかなか、良いです」

 アオが私を見下ろして、嬉しそうに微笑みながら言った。

 黒いワンピースは首元までたくし上げられていて、私はアオに裸体を晒している。

 胸は小さめだから良いかなと、寝る時はブラジャーをしていない。ショーツははいている。どんなショーツだったかしら、忘れたけど、量産店で買ってきたごく普通のショーツだと思う。


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