97 / 97
終章:レーヴェ様の変化
しおりを挟む気づけば私はいつものお屋敷の、ベッドの上にいた。
とても不機嫌そうなレーヴェ様が、私の体を強く抱きしめて、ついでに九本の尻尾も私を包むようにしている。
お屋敷は落ち着くし、いつものベッドもとても落ち着く。
私は不機嫌そうなレーヴェ様の頭を、よしよし撫でた。
ふさふさの耳の付け根から、三角形のてっぺんまでを撫でてみる。ふわふわで気持ち良い。
「ルーナぁ……」
すごく甘えた声で名前を呼ばれるので、私はレーヴェ様に軽く口付けた。
「うう、可愛い……ルーナ、ごめんね。やっぱりやめておけばよかった。恥ずかしがるルーナを見たいなんて、下心が沸いてしまったのがいけなかった」
「あ、あの、レーヴェ様、大丈夫ですよ……? 恥ずかしかったですけれど……でも、私がして良いって言ったんです。だから……」
「違うんだ。声だけなら許容範囲だったんだよ、私も。でも、こんなに可愛いルーナを、ルーナのはしたない姿を見せてしまうなんて……ルーナは私だけのものなのに。嫉妬で臓腑が焼けそう……」
「臓腑を焼かないでください、死んでしまいます……!」
「ルーナの記憶をあの二人の脳から抹消したい……」
「た、多分、すぐに忘れてくれます……っ、それに、私のはしたない姿なんて、たいしたことがないと思いますし……」
「大したことがあるんだよ。ルーナは可愛いんだよ。死ぬほど可愛いんだよ? 自覚して」
レーヴェ様は私を抱きしめながら、ベッドにどさっと転がった。
それから、少し涙目になりながら詰るように私を見つめる。
「でも、私、普通です……」
「シルディスは勃っていたし」
「え……っ」
「ルーナの声を聞いていれば勃つのは当たり前だけれど、私のルーナの痴態で勃つとか許せないよね。切り落としてこよう」
「だ、だめです、レーヴェ様、国が滅んでしまいますから……!」
レーヴェ様がすごく本気っぽいので、私は慌てた。
そもそもミエレ様と皇帝陛下の情事がうまくいかないからと、私とレーヴェ様はお城であんなことをしたのよね。
皇帝陛下のご子息を残すのは国にとってとても大切なことだから。
それを切り落としてしまっては、本末転倒というか。
さらに国の一大事というか。
皇帝陛下、興奮している様子はなかったのだけれど──ミエレ様は怒っていないのかしら。
他の女性で、男根が勃ってしまうとか、良い気持ちはしないのではないかしら。
私、ごく自然に皇帝陛下の男根について考えてしまった。
ごめんなさい、お姉ちゃんすっかりはしたない女になってしまった。
と、ここにはいない弟妹たちに私は心の中で懺悔した。
まさか皇帝陛下の男根について考える日が来るとは思っていなかった。
「ルーナ……シルディスの男根と私、どちらが大事なの?」
「レーヴェ様に決まっています……!」
涙目になりながら、レーヴェ様がとんでもない質問をしてくるので、私はレーヴェ様に抱きついた。
それから、手を伸ばして、レーヴェ様のお洋服の上から熱を持っているレーヴェ様ご自身に触れる。
「……あの、……レーヴェ様、欲しい、です。……さっき、途中で終わってしまったから、ちゃんと、欲しくて」
とりあえずレーヴェ様が、シルディス様の男根を切り落としに行くのを阻止しないといけないと思った私。
潤んだ瞳でレーヴェ様を見つめて、甘えるようにおねだりしてみる。
欲しいのは本当だし。
それに、今は他のことを考えないで。
私だけを見て欲しい。
私だってミエレ様に、私だけが知っている艶やかなレーヴェ様を見られるのはちょっと嫌だったのだから。
「うう……ルーナ……可愛い……ごめんね、恥ずかしかったよね。頑張ってくれてありがとう。もう絶対に誰にもルーナを見せないからね。たくさんしようね、ルーナ」
「嬉しい……レーヴェ様も、一緒に、気持ちよくなって欲しいです……」
「うん。愛しているよ、私のルーナ。気持ち良くなろうね。ルーナの中で、果てさせて」
耳元で囁かれて、私はこくりと頷いた。
レーヴェ様の立派なご自身が、私の蜜口へとぴたりと当てられるのがわかる。
奥へ奥へと熱くて硬いものが入ってくる感覚に、私は小さな吐息をあげた。
足りなかったものが、満たされていく。
私はレーヴェ様の体に自分の手を回した。
レーヴェ様は嫉妬深いとご自分のことをおっしゃるけれど、私も、結構そう。
レーヴェ様といると嫉妬深くて我儘な女になってしまいそうで。
でも、レーヴェ様はそれを許して受け入れてくれるから。
だから──。
「レーヴェ様、大好き」
激しく揺さぶられながら、何度もそう伝えた。
そして──ミエレ様のご懐妊の報告のお手紙が私の元に届いたのは、それから数ヶ月後のことだった。
お手紙には「ルナリアさんのおかげ」と、書かれていた。
シルディス様の夜の事情までは書かれていなかったけれど、どうやら良好な関係になることができたみたいだ。
ミエレ様はご懐妊したのに、私はその兆しもなくて。
心配してレーヴェ様に尋ねたら、「まだルーナとの新婚生活を満喫したいから、ルーナが孕まないよう私の精子をルーナの奥に入らないように魔力で堰き止めている」と言われて、二度目の喧嘩になったりもした。
時々喧嘩はするけれど、レーヴェ様は私の家族に一緒に会いに行ってくれるし。
夜会にも、一緒に出てくれる。
以前よりも外に出ることが増えるとともに、私に関係するものを溜め込んでいたレーヴェ様は、徐々にそれをやめていった。
「コレクションは大切だけれど、今この場にいるルーナを大切にすることの方がずっと大切だよね」
と、最近ではおっしゃってくれている。
子供についてはまだレーヴェ様が「ルーナを取られるのが嫌だから、もう少し待って」と言っているので待っているけれど。
でも、大丈夫だろう。
レーヴェ様は少し特殊な環境で育っているけれど、私を愛してくれるように、きっと生まれてくる子供も愛してくれる。
そうしたら──ヴェルニア様のしきたりに縛られることなく。
家族みんなで過ごせると良い。
そんな賑やかな毎日を想像すると、自然と口元がほころんだ。
51
お気に入りに追加
2,123
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(7件)
あなたにおすすめの小説
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
散りきらない愛に抱かれて
泉野ジュール
恋愛
傷心の放浪からひと月ぶりに屋敷へ帰ってきたウィンドハースト伯爵ゴードンは一通の手紙を受け取る。
「君は思う存分、奥方を傷つけただろう。これがわたしの叶わぬ愛への復讐だったとも知らずに──」
不貞の疑いをかけ残酷に傷つけ抱きつぶした妻・オフェーリアは無実だった。しかし、心身ともに深く傷を負ったオフェーリアはすでにゴードンの元を去り、行方をくらましていた。
ゴードンは再び彼女を見つけ、愛を取り戻すことができるのか。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
あまりにも、ご存知の通り『あのふたり…すれ違いまくっている、凛々しい彼女と、初恋の彼⁈と妻が同一人物と気づかないあのお方!!』が好きすぎてand全くスイートにはほど遠い…ほのぼの感は満載!なんで、こちらに、『あのふたりの妄想』にきました苦笑!もちろん邪道で申し訳ないんですけど…その場面の主人公を脳内で、あの2人に変換して読んでみようか、と思い立ちまして。多分2人も、大人スイート未経験⁈純情さ加減でも似たようなもんじゃないか、と。同じシチュエーションで、言動はもちろん違くて…と読み込まないとうまく脳内変換できないけど、あのふたりの18バージョン、勝手に想像してみます。こんな読み方もあるなんて…聞かなかったほうがよかった、ご立腹される?失礼にあたるなら…ごめんなさい知らなかったことにしてください。こちらの2人もしっかりスイートで可愛けど、あの2人がとにかく推しなんです‼️あちらも楽しみにしてます!ときには、あっちにもスイートください。
ありがとうございます!
こちらは、変態神官長と純情健気美少女の話なので、ちょっと毛色が違うかな、とも思います笑
でも、どのように読んでいただいても大丈夫ですよ!
頑張ってスイートも書きますね、あちらも頑張ります!
甘くて甘くて癒されましたー‼️
ありがとうございます、癒されて頂きなによりです~!!!
素敵でしたー😀
ありがとうございます!!!