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 長い前戯と耐えられなくなったミエレ様 2

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 もう欲しいのに。でも、おかしくなるぐらい気持ち良い。早く繋がりたい。もっと、愛してほしい。
 気持ち良いところ舐めてもらうの、好き。ちょっとだけ意地悪なレーヴェ様のことも好き。
 全部気持ち良い。頭がぐちゃぐちゃで、真っ白で、何が何だかわからなくなりながら、泣くことしかできない。

「ん……気持ち良いね、ルーナ。変になって。気持ち良いのは良いことだよ。大丈夫」

「きもちいい、いいの、あ、あああっ、あぅ、う……ぃやあ……っ」

「嫌じゃないよね。良いって言って。ここ、好きだよね、ルーナ。好き。言って、好き」

「好き、好き……っ、すきぃ……っ、いい、いいの、あ、あ、いく、また、とまらないの……っ、壊れちゃ……」

「舌と指だけで、気持ちよくなれて偉いね。もっと良いものをこれからあげる。欲しい?」

「ほし、い、欲しいです……っ、れぅ、さ、ま……ほしい……っ」

 ぐすぐす泣きながら、レーヴェ様の言葉を繰り返していた私は、すっかりこの場所がどこで、今、何をしていたのかなんて忘れてしまっていた。
 部屋の中央に不自然にかけられていた衝立式のカーテンが、がらりと勢いよく開かれたのはその時だった。

「神官長様! ちょっとしつこすぎるのではありませんこと!? ルナリアさんが泣いています、もう聞いていられませんわ……!」

 すごい勢いで開かれたカーテンから私たちのベッドへと踏み込んできたのは、ミエレ様だった。
 唖然としながらミエレ様の姿を見つめる私の視界に、カーテンの向こう側に用意されていた質の良い椅子に足を組んで座って、眉間に皺を寄せている皇帝陛下の姿がうつる。

「みえれ、さまぁ……」

 理性の溶けた私はまともに考えることができなくて、ともかくミエレ様にご挨拶しなきゃと思ってその名前を呼んだ。
 ミエレ様の美しい顔が、真っ赤に染まる。

「ルナリアさん……可愛い……」

「そうだよ。可愛いんだよ、私のルーナは。すごく気持ち良さそうでしょう?」

 食い入るように私を見つめているミエレ様を軽く睨んで、レーヴェ様がやや冷たい声で言った。
 それから、指を私から引き抜いて、私の体を抱き上げてくださる。

「ルーナのことは見せてあげない。その約束だったね。今回限りだよ。次はないと思って」

「すまない、レーヴェ。その、……ルナリア嬢が泣いているものだから、ミエレは心配になってしまったようで。ずっと我慢をしていたんだが、助けにいかなければと思ったらしく」

「こうていへいか……」

 やや慌てたようにこちらにやってきて、ミエレ様を庇うようにしながら皇帝陛下は言った。
 ぼんやりしながら皇帝陛下を呼ぶと、レーヴェ様の両手に強い力が籠る。

「こんな可愛いルーナがシルディスの名前を呼ぶとか、私には耐えられない……! もう十分わかっただろう? 前戯だけでルーナはこんなに可愛くなってくれるんだよ。とはいえ、私も配慮のなさでルーナのことを一度泣かせてしまったからね、それからは反省をしている」

「レーヴェ、俺にはルナリア嬢が苦しそうに見えるんだが」

「くるしく、ないです……全部気持ち良くて、好き、です。心配してくださって、ありがとうございます」

 ふと蘇ってくる理性が、私の頭をさらに混乱させた。
 見られた。見られている。私の大変なことになっている姿を。
 混乱してよくわからなくなりながら、私はお礼を言った。心配してくれて、ミエレ様は私を助けようとしてくれたのだから、お礼を言わなきゃいけないわよね。

「ルナリアさん……」

「ルナリア嬢……」

 ミエレ様と皇帝陛下の視線が、私にそそがれている。
 私はレーヴェ様の体に縋り付くようにして、二人から視線を逸らした。恥ずかしい。恥ずかしい。
 もう二度と、お二人とはお話しできないかもしれない。
 遅れてきた羞恥心で、全身が赤く染まる。

「君たちの事情に付き合うのはここまでだよ。ルーナの可愛い姿を見て興奮したんなら、二人でゆるりと愛し合ってくれ。指導はこれで終わり。私は帰るよ。もう二度とないからね」

 レーヴェ様のご機嫌がとても悪い。
 ご機嫌を悪くしているレーヴェ様をあまり見たことのない私は、その冷たい声や怜悧な眼差しに、なんだかとってもドキドキしてしまった。
 レーヴェ様と私を水の膜が包み込む。
 顔を見合わせるミエレ様と皇帝陛下をお部屋に残して、私たちは足元に広がる水たまりの中にぽちゃんと落ちた。

 
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