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 ルナリア、ミエレと再会する 2

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 レーヴェ様の腕の中にいるせいか、レーヴェ様は私が震えたことに気づいたみたいだ。
 まるで別人みたいな顔で、皇帝陛下を睨みつける。

「シルディス。ルーナを怯えさせるとか、万死に値する。ルーナを怯えさせて良いのは私だけだよ。ルーナに話しかけて良いのも私だけなのだから」

「……ルナリア嬢を連れてきてくれたのだから、お前の嫉妬深さも多少は和らいだのかと思ったのだが」

「嫉妬深いのだよ、私は。ルーナ、嫉妬深い男は嫌い?」

「レーヴェ様、大好きです」

 私はレーヴェ様の問いかけに、はきはきと答えた。
 嫉妬していただけるのは、嬉しいことだ。それにレーヴェ様にここでちゃんと答えておかないと、後で大変なことになりそうな気が、なんとなくするような気がした。

「ルーナ……私も愛しているよ……!」

「ルナリア嬢はこのような変態のどこが良いのか」

「その言葉、そっくりそのままお返しするよ。ミエレ嬢もよく、こんな愚か者とうまくやっているね」

 私、レーヴェ様と皇帝陛下は仲良しだと思っていたのに。
 どうしてか、少しぎすぎすしている。
 シルディス様の腕にそっと手を触れさせているミエレ様が、困ったように首を傾げた。

「……これはこれで、可愛いのですよ。お久しぶりです、神官長様。そして、ルナリアさん」

 落ち着いていて、凛とした声。すらりとのびた背中。白い肌に長いまつ毛、大きな胸と、引き締まった腰。
 遠目で見ても綺麗だったけれど、近くで見るとミエレ様はやっぱり綺麗だ。
 きちっとご挨拶してくださるミエレ様の様子を見て、私は慌てた。
 私、レーヴェ様に抱きしめられるばかりで、ご挨拶もできていない。

「お、お久しぶりです、皇帝陛下、ミエレ様。この度は年末の式典へのお招き、ありがとうございます。……それと、レーヴェ様は変態じゃないです……」

 本当は私もミエレ様のように優雅にお辞儀をしたかったのだけれど、レーヴェ様の腕の中にいる上に、レーヴェ様がぎゅうぎゅう抱きしめてくるので、ちょっともごもごしてしまった。
 ご挨拶と共に、レーヴェ様の名誉を守っておくことにする。

 レーヴェ様は変態じゃない。
 よくわからないけれど、多分。そもそも変態って何かしら、基準がよくわからないわね。

「ルーナ、良い子だね。好きだよ、ルーナ。私はルーナの前では、変態であっても良いと考えているよ」

「レーヴェ様、私、よくわからないのですけれど……見知らぬ女性を触るのは変態だと思いますけれど、私はレーヴェ様の妻ですので、色々してくださるのは特に問題はないですし、変態じゃないと思います……」

 皇帝陛下にひどいことを言われても、落ち着いているレーヴェ様、大人だわ。
 私は尊敬の眼差しでレーヴェ様を見上げた。
 普通、変態などと罵倒されたら怒ると思うのに。皇帝陛下は、レーヴェ様に酷いことを言わないでほしい。

「見た? 聞いた? シルディス、私のルーナが今日もこんなにも可愛い。いや、見るな。聞くな。ルーナが減る」

「お前は何をしに来たのか……」

「何をしに……君が呼んだのだろう」

 レーヴェ様はやれやれ、というように肩をすくめた。
 ミエレ様が私に微笑んで「とても仲良しで安心したわ」と優しく言った。

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