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ルナリア、ミエレとお話しする 1
しおりを挟む今年の終わりを祝う式典のために飾り付けられた大広間は、目に眩しいぐらいにとても豪華だ。
食べきれないぐらいにたくさんの食事が、テーブルには並んでいる。
貴族の皆さんがそれぞれ歓談をしていて、女性たちは贅を尽くした煌びやかなドレスに身を包んでいる。
その中でも、ミエレ様は一番美しい。
以前もとってもお綺麗だったけれど、さらに磨きがかかっている気がする。
それはきっと、皇帝陛下に愛されているからなのだろう。
「レーヴェ様、ミエレ様はとてもお綺麗ですね……同じ女性ですけれど、うっとりしてしまいます……」
私はミエレ様を見上げて、感嘆のため息をついた。
そんな私の手を、レーヴェ様が指を絡めて握りしめながら拗ねたように言った。
「ルーナの方が可愛い。ルーナの方が可愛いし、うっとりしてはいけないよ。ルーナは、私にだけうっとりして。他の誰かにときめいたりしたら、嫉妬でおかしくなるかもしれない」
「ミエレ様は女性ですよ、レーヴェ様」
嫉妬というのは、焼きもちのこと。
女性の美しさにうっとりするというのは、例えば美しい朝焼けとか、青空とか、よく晴れた日に光を受けて輝く新緑を見た時と同じ気持ちだ。
だから、焼きもちは焼かなくて良いと思うの。
「女性であっても駄目だよ。ルーナは私だけを見なくてはいけないのだから。ミエレ嬢よりも私の方が美しいだろう?」
「もちろん、レーヴェ様はとても綺麗です。誰よりも綺麗ですよ」
「それなら、私にうっとりして」
「いつもうっとりしています。レーヴェ様、今日もすごく素敵です」
ミエレ様を褒めただけなのに拗ねているレーヴェ様が可愛らしくて、私はにこにこしながらレーヴェ様を見上げた。
二人きりでいると、こういうやりとりはあまりないものね。
当たり前だけれど二人きりだから、誰かに嫉妬するようなこともないもの。
なんだか新鮮で、少しくすぐったい。
「ルーナ……!」
レーヴェ様は嬉しそうに尻尾をぱたぱたさせて、私の腰に手を回した。
体がぴったりくっついて、そのままレーヴェ様は私の顔にご自分の顔を近づける。
キスされる──と、思った瞬間、ふと我に返った。
はっとして周囲を見渡すと、私とレーヴェ様の周りから少し離れたところで、会場の方々が私たちを見守っている。
それはもう、見られている。
「……レーヴェ様、あ、あの、私……皆さんの前で、恥ずかしいですし、皆さん困っているので……!」
一気に頬に熱が集まった。
最近はレーヴェ様と二人きりで過ごすのが当たり前になっていたし、侍女の方々はいるけれど、レーヴェ様はまるで気にしていないように、レーヴェ様の魔力で作り上げた侍女の方々の前でも私に色々するから。
だから、つい癖で。
流されそうになってしまった。
「ルーナ……公衆の面前では口づけをしてはいけないというきまりがあった? この国の神は私なのだから、私が法だよ」
「で、でも、式典の会場ですし……」
レーヴェ様が私の腰をぐいぐい抱きながら、不満そうに言った。
よかった、ここに弟や妹たちがいなくて。
人前で、レーヴェ様と密着する、お姉ちゃんのはしたない姿を見せてしまうところだったわ。
今日はクリーチェ伯爵家のものたちは不参加だと、レーヴェ様が先に教えてくれた。
弟や妹たちは士官学校の冬休みでクリーチェ伯爵家に戻っていて、レーヴェ様の手配してくれたお父様を監視する役割を持っている執事の方に、お勉強を教えてもらっているのだという。
今までお金がなくて、ゆっくりお勉強を教えることもできていなかったから、みんな士官学校の勉強に追いつこうと必死に頑張っているらしい。
時々届くお手紙で、みんなが元気そうなことを私は知っている。
今日会えなかったのは残念だけれど──レーヴェ様は、「ルーナの大切な家族なのでしょう。そのうち会いに行こうか」と言ってくれている。
「……レーヴェ。やっと顔を出したと思ったら、挨拶にも来ないのか、お前は」
低く平坦な声音は責めるような響きを帯びている。
いつの間にか、皇帝陛下が私たちの傍に来ていた。
私はびくりと震えた。皇帝陛下は良い方だとわかっているのに、花嫁選定の時に怒られたことをどうしても思い出してしまう。
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