30 / 97
ルナリア、中庭で悪戯される 2
しおりを挟む地面に座り込みそうになった私を、力強い腕が抱き留めてくださる。
「レーヴェ様……っ」
私をしっかり抱き留めて、軽々と抱き上げてくださったのは、レーヴェ様だった。
涙が滲む私の瞳をじっとのぞきこんで、にっこりと微笑んだ。
「ただいま、ルーナ。一刻も早く帰りたくて、政務室から転移魔法で戻ってきたのだけれど、ルーナが転ぶ前に間に合って良かった」
「レーヴェさまぁ……」
私は羞恥心も忘れて、レーヴェ様に抱きついた。
すごく、安心する。
どうして良いのかわからなくて、怖かったの。
レーヴェ様が一緒にいてくださるだけで、もう大丈夫だって思える。
「ルーナ、……もしかして、ひとりきりで、気持ち良くなっていた?」
上気した肌とか、頬とか、涙に濡れた瞳とか――私の様子は、いつもと違うのだと思う。
なんでも分かってしまうのね、レーヴェ様には。
私は小さく頷いた。
「……私、……レーヴェ様を、待っていて……一人で、座っていただけ、なのに、胸が、気持ち良くなってしまって……レーヴェ様に、触られてる、みたい、に」
「そう。……それで、ドレスの上から分かるぐらいに、乳首が立っているのだね」
「っ、あ……っ」
レーヴェ様は私のドレスの胸の部分に視線を落とすと、ゆっくりと言った。
今日も、耳と九本の尻尾がはえている。
神々しくも美しい姿だ。
そんなレーヴェ様が心地の良い春風のような声音で、なんの恥ずかしげもなくいやらしいことを言うのが、どうにもうまくのみこめない。
一拍おいて意味を理解した私の顔は、いっきに熱を帯びた。
「離れていても、ルーナの胸を触れるようにしてみたんだけれど、成功だね」
「え……っ、……離れて、いても?」
「うん。ルーナの胸、触っていたのは、私。私以外に触らせたりはしないから、安心して。ちゃんと、誰にも触られないように、厳重に保管してあるし」
「それは、どういう……」
「このあいだ、胸の型をとったでしょう?」
「あの、模型の……っ」
私は私の胸の形をしたジェルスライムという魔生物について思い出した。
レーヴェ様は「そうそう」と頷きながら、私を膝の上にのせて椅子に座った。
「ドレスを着て、私を待っていてくれるルーナが、中庭でひとりで、……気持ち良くなって、乱れているなんて。最高に、良い……」
「あんまりよくないです……」
私はレーヴェ様の法衣を引っ張って、小さな声で文句を言った。
「こわかった、です……おかしくなったのかと、思って、私……」
「怖いのは、よくないよね。ごめんね、駄目だった?」
「……ちゃんと、教えてください。そうしたら、こわくない、から」
「ルーナ……ごめんね?」
レーヴェ様が本当に反省をしたように、申し訳なさそうに謝ってくださる。
私は甘えるようにして、その首に腕を回して抱きついた。
怖かったし、驚いたから、少しぐらい甘えても良いわよね。
きっと、許してくれるはず。
「……レーヴェ様の、手、って、わかりました。指とか、触り方、とか。私、レーヴェ様のこと、思い出して、余計に気持ち良くなってしまって……」
「ルーナ……可愛い……可愛いし、良い香りがする。……これは、蜂蜜?」
「あ……っ、あの、……はい……っ、レーヴェ様と一緒に食べようと思って、パンケーキを焼いてみたんです」
レーヴェ様が私の首筋に顔を埋めるようにして言うので、私は頷いた。
できれば、冷たくなる前に食べて頂きたい。
冷たくても不味くはないけれど、あたたかいときの方が美味しいと思う。
「ありがとう。すごく、嬉しい」
レーヴェ様は私の首筋に顔を埋めたまま、密やかな声で言った。
23
お気に入りに追加
2,123
あなたにおすすめの小説
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
散りきらない愛に抱かれて
泉野ジュール
恋愛
傷心の放浪からひと月ぶりに屋敷へ帰ってきたウィンドハースト伯爵ゴードンは一通の手紙を受け取る。
「君は思う存分、奥方を傷つけただろう。これがわたしの叶わぬ愛への復讐だったとも知らずに──」
不貞の疑いをかけ残酷に傷つけ抱きつぶした妻・オフェーリアは無実だった。しかし、心身ともに深く傷を負ったオフェーリアはすでにゴードンの元を去り、行方をくらましていた。
ゴードンは再び彼女を見つけ、愛を取り戻すことができるのか。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる