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ルナリア、花嫁衣装を着る
しおりを挟む伯爵家にいたときには食べたことのないような豪勢なお食事が、食卓に並んでいる。
とても食べきれないお食事は、柔らかそうな鶏肉の煮物や、お魚の蒸し焼き、海鮮卵スープに、ふわふわのパン、小さなケーキや、焼き菓子など様々だ。
ユリーチェ伯爵家の家族全員の一週間分ぐらいあるのではないかしらと思うと、眩暈がした。
レーヴェ様にベッドで色々された後、しばらくぼんやりしていた私だけれど、式と呼ばれている侍女の方々にお風呂に入れてもらって、お着替えを手伝ってもらった。
レーヴェ様は「契りの儀式が終わったら、絶対一緒に入ろうね、ルーナ。毎日一緒だよ。約束」と、悲壮感あふれる顔で言っていた。
本当に毎日一緒に入るのかしらと思いながら、レーヴェ様と二人で入っても十分すぎるほど広い、お湯がそれはもう威勢よくじゃばじゃば流れては溢れている石造りの浴槽に入ったあと、新しい下着を身につけて、胸がざっくり開いた薄桃色のドレスに着替えた。
どうしてか、ドレスも下着もサイズがぴったりだった。
それから、レーヴェ様に儀式前のお食事に招待されて、今。
広いテーブルに私とレーヴェ様は、隣同士で並んで座っている。
テーブルから正面にある窓の外の湖に、夕陽が落ちていっている。
青い湖が、暗闇の灯した蝋燭の炎のように橙色に染まっていくのが、とても綺麗。
薄暗い部屋に、魔導ランプの灯りが灯る。
レーヴェ様は、夕日の美しさにも目も留めずに、私の姿をそれはそれは嬉しそうに、上から下までじっくりと眺めている。
「あの、レーヴェ様、お洋服、ありがとうございます。サイズもぴったりで、もしかしたら、馴染みの仕立て屋さんに、私の寸法を聞いてくれたりしたのですか?」
「ルーナが私の元へ来てくれるまで、そこまで時間はなかったでしょう? だから、それはできなくて。その代わり、私の式たちは優秀だからね。私がルーナと寝室ではしたないことをしている間に、ルーナの体を見て、ドレスや下着を縫い直してくれたんだよ」
「み、見られていたんですか……?」
「採寸のためにね」
気づかなかった。全く、気づかなかった。
それぐらい、私はレーヴェ様に夢中だったということかしら。
顔から火が出そうなぐらいに熱い。
扉、開けっぱなしだったものね。見放題よね。
いくら、侍女の姿をした式神の皆さんが、人格のない紙人形だとしても、すごく恥ずかしい。
「ドレスも、可愛いね、ルーナ。よく似合ってる。ルーナに着てもらいたい衣装が今のところ百着ぐらいあるのだけれど、今日は花嫁衣装を着る日だからね。ドレスもとっても可愛い。今すぐ脱がせたいぐらいに可愛い」
レーヴェ様はにこにこ言いながら、私の髪や頬に触れた。
「儀式まで、後少しだよ、ルーナ。今すぐ秘殿に連れて行きたいけれど、空腹だとかわいそうだからね。契りの儀式がはじまってしまえば、しばらく食事はとれないだろうし。だから、ちゃんと食べるんだよ、ルーナ」
「ありがとうございます……」
私は豪勢な料理をありがたくいただいた。
といってももちろん全部は食べられなかったので、大半は残してしまったのだけれど。
レーヴェ様もお肉料理を多く召し上がっていたけれど、半分以上残していた。
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