特殊魔法は蜜の味

束原ミヤコ

文字の大きさ
上 下
6 / 44

EP1:アルス・エルジール 5

しおりを挟む


 黒を基調にした制服のたくし上げられたスカートの下には、同じく黒のレースのショーツが覗いている。
 妖艶な私に相応しいレースのショーツは覆う場所が極端に少ない。

 これは別に私の趣味じゃないんだけれど、メイド達が「妖艶な美女であるお嬢様に相応しい下着です。奥様もかつてはこのような下着を身に纏っていました」と言うので、それならばと着ているものだ。

 今は亡きお母様も黒のレースの下着を着ていたのなら、私もそうするべきよねと、特に疑問には思っていない。
 心許ない感じはかなりするのだけれど、まぁ良いかと思っている。別に誰に見せるわけでもないし。

 今まさにアルス様にバッチリ見られているのだけれど。

「制服の下にこのような扇情的な下着を身に纏っているとは、いつでも男と逢引できる腹づもりなのだな、レティ。私に別れの挨拶をしに来たその足で、他の男の元に行き、足を開くつもりだったのだろう」

 アルス様はたいそう怒った様子でそう言った。

 苛々しているわね。普段怒らないように気をつけまくっているせいなのかしら。感情の荒ぶりがすごいわね。

 私のろくでもない魔法は、性欲と共に普段隠している本音も引き出せちゃうのかしら。
 それにしても怖いわよ。

 私は震える指先でたくし上げられたスカートを元に戻そうと奮闘した。
 両手を一纏めにして掴まれてしまい、結局もだもだと体を動かしただけで、抵抗らしい抵抗はできなかった。

「暴れるな、レティ。無駄だ」

 私の両手首に、するりと蔦がまとわりつく。
 蔦はソファの枠組みへと伸びて固定されて、ついでのように大きく開かされた足にも蔦がまとわりつき、両手両足をソファにつなぎ止められた。

 額縁に入れられた標本の蝶みたい。 

 アルス様の耳で揺れる蝶の耳飾りになった気分だ。

 何を考えているかわからないけれど紳士的で公平だと思っていたアルス様に、女性を拘束するご趣味があったなんて。
 人は見かけによらないわね。驚きだわ。

「殿下、離してください……、こんな、酷い……」

 こんなはしたない格好を晒したのは初めてである。

 セディの前では好奇心から魔法を自分に使ったときに不可抗力で見せたことがあるけれど、セディは執事であり頼れるお兄様のような存在なので、別だ。

 アルス様は他人なので、他人であり元婚約者のよく知らない男性でしかないので、もう、怖い。
 なんだか演技ではなくて本気で泣けてきたわ。

 全部私のせいなのだけれど。

「残酷なのはお前だろう。私は少なからず、お前を愛していた。それをお前は。一度は諦め、自分の責務を全うしようと考えた。だが、失う今になって惜しくなったのか。こういった欲望も感情も押さえ付けて閉じ込めることに慣れていたはずなのに、今はお前を泣かせたくて仕方がない。レティ、良い眺めだな」

「わかりません、殿下、私……っ、ぁ、アッ」

 たくし上げられてあらわになったショーツの隙間から、徐に指が入り込んでくる。
 アルス様のしなやかな指先が、私の敏感な部分を擦り上げた。

 閉じた柔らかい肉から顔を出している小さな突起を指先でぐりぐりと嬲られて、痛いぐらいの刺激に私はふるふると首を振った。

「やだ、やだぁ……っ、だめ、ゃああ」

「あぁ、レティ。愛らしい悲鳴だな。泣き叫べ。声を聞かせろ」

 予定と違うのよ。
 全然違うのよ。
 どうしてこんなに積極的なの、アルス様。

 もっと嫌がってよ。屈辱を感じなさいよ。性欲の前に愛など無力だというの?

 アルス様、ユエルさんを愛しているわけじゃないとか言っていたけれど。挙げ句の果てに私を愛していたとか言っていたけれど。

 今までそんな雰囲気を一切感じなかったのに。しかも婚約破棄とか言い出したのはアルス様の癖に!
 わからないけど腹は立つわよ。それ以上に、怖い。

「ふ、ぁ、んっ……んぅう」

 アルス様は私の花芯をぐりぐりと虐めながら、唇を合わせる。
 噛み付くような口づけは深く、喉の奥まで舌を入れられてざらざらと舐められる。

 口蓋を舌先で辿られて、喉の奥に引っ込めた私の舌を暴虐に暴かれると、口の中が唾液で溢れた。
 腰のあたりがざわざわする。

 気持ち良くなった経験なら一度だけあるけれど、あれは私が自分に魔法を使ってしまったから、不可抗力だった。
 今は、自分自身には魔法をかけたりしていない。

 それでも、強引なのに、酷いのに、気持ち良い。

「ん、んぅ、……あ、は……ぅ」

 呼吸もままならない私は、乱暴な口づけから解放されると、はあはあと浅い息を繰り返した。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?

もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。 王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト 悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王子の逆鱗に触れ消された女の話~執着王子が見せた異常の片鱗~

犬の下僕
恋愛
美貌の王子様に一目惚れしたとある公爵令嬢が、王子の妃の座を夢見て破滅してしまうお話です。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...