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第十三章 最終章
第八十四話 最終話。ブレイメン公国の気球乗り。
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第八十四話 最終話。ブレイメン公国の気球乗り。
フリッツ君の爆弾発言がついこの間のように思い出される。
季節は春から夏になっていた。
妊娠したアカネのお腹も大きくなり、ブレイメン公国国民全員の期待を集めた子供は順調に育っている。
戦争が終わったので竜騎士達もそれぞれの領地に戻り、農民も強い日差しを浴びながら育つライ麦と稲を見て期待に夢をはせている。
アカネが実験的に植えた稲は龍肥のお陰ですくすくと育っていた。
勿論技術が稚拙なせいで幾つかの稲は失敗したが、まだ来年がある。
こうやって技術は進歩してきたのだから初年から上手くいく訳がないのだ。
首都チュロスの上を巨大な飛行船が浮いていた。
気球でなく飛行船だ。
その姿はまさに威風堂々というものだ。
全長は三百メートルを超え翼幅も百二十メートルに達する。
硬式気球と言って気球が空気で膨らませて飛ぶのに対し、外殻を軽い金属で補強して内部にためたガスで飛行する。
そのガスは龍肥の製造過程で出来るガスで水素ガスより軽い。
船体は標準帆船にも劣らない五百トンの巨大な輸送船型艦橋が取り付けられており、まさに浮かぶ船だ。
片翼に十六頭分のドラゴンの翼が取り付けられており、護衛の竜騎士兼推進力として八人の竜騎士とドラゴンが搭乗する。
「設計した俺がいうのもなんだが、すげえ巨体になったな」
自分で設計したとはいえ、その大きさに圧倒される。
まずはこの飛行船を十隻量産する事になる。
名前はぎがんと級飛行船。
これがシリカ国の輸送船団に対する答えだ。
帆船の五倍の速度で海と言わず山でも砂漠でも飛ぶことができる。
行きはブレイメン公国の主力商品の武器や金細工を詰め込み、帰りはシャー国から大量の香辛料や香料などを持ち帰る。
その後持ち帰った香辛料などは気球に積み替えられて近隣国に販売するのだ。
このぎがんとが量産されればブレイメン公国は世界経済を牛耳ったと言えるだろう。
「ハヤトにはいつも驚かされるな」
隣で笑うクリスの笑顔が眩しい。
この飛行船が量産されたら経済を独占していた海洋国家シリカ国は没落するだろう。
だから妥協しておく。
海の上は飛ばないという協定を結んだ。
つまりシリカ国は今まで通り海で交易すればいい。
だが内陸の輸送手段はブレイメン公国が貰うのだ。
シリカ国が持ち込んだ絹や陶磁器などの物品をうちが買い取り内陸国へ転売する。
無論暴利ではシリカ国と戦争になるので交渉して値段は決める事にする。
これは陸路の販路があまりないシリカ国にとっても悪い話ではない。
ただ陸路を馬車で運んでいた商人にとってはたまったものでは無いが。
こうしてブレイメン公国の空のシルクロードは完成した。
◆◆◆
あれから数年が経った。
アカネとフリッツ君の子供は双子で男の子と女の子だった。
男の子はフリッツ君似の赤毛の元気な子で女の子はアカネに似た黒髪だ。
二人ともルビーのような赤い瞳をしている。
名前はそれぞれアルフレッドとアンナという名前を名付けた。
二人がどうしても俺に名付け親になって欲しいと言うので、どんな世界でも生きていけるような立派な名前をつけた。
俺は二人の頭を撫でながら言う。
「二人とも俺の子供と仲良くしてくれよ」
俺とクリスにはまだ子供ができない。
もう無理なのかもしれない。
そんな事を考えるようになった。
だが俺の子供たちは今も世界中の空を飛んでいる。
人を乗せて荷物を乗せて手紙を乗せて。
人と人の繋がりが容易になった。
人々にとって空を飛ぶ事はそれほど難しい事ではなくなった。
これは俺が異世界フォーチュリアに飛ばされてからおきた奇跡。
誰にも成しえなかった奇跡。
これからも人々は空を自由に旅する。
未来は広がって行くのだ。
俺が草原に吹く風を感じながら眼下を見下ろすと人々の笑顔が見える。
俺たちが持ち込んだジャガイモとサツマイモが飢えから開放したのだ。
今では普通に香辛料で味付けされた豚肉とジャガイモを食べている。
羊毛の服ではなく綿の服を着ている。
俺が初めてこの地に来た時。
クリスに振舞われた黒パンと山羊肉のシチューは珍しいものになってしまった。
少し寂しい。
ここの人々が贅沢に溺れ豊作に感謝しなくなるかもしれないと考えると不安になる。
「なんだハヤト。ここにいたのか」
いつの間にかクリスが隣に立っていた。
手には薬草茶の入った瓶を持っている。
やはりこの国には薬草茶がふさわしい。
俺はクリスが煎れてくれた薬草茶を飲む。
相変わらず苦い。
「やあクリス。体調はもういいのか?」
「いや体調は相変わらず悪い。悪い筈だ」
クリスはここ数日寝込んでいた。
こんな事は初めてだ。
だがクリスは幸せそうに微笑んだ。
「子供ができた」
「え?えええ?」
「そんなに驚く事ではないだろう。もう何年夫婦をしていると思っている」
「俺の子か?」
「私が不義をしていると思っていたなら斬るぞ」
「いや、その……ありがとう」
「ああ。こちらこそだ。これからもよろしく頼むぞハヤト」
俺はクリスを抱きしめる。
もう離さないと心に誓う。
クリスも嬉し涙を流している。
その時俺たちをあの時の風が包む。
優しくも心地よい風。
その風が俺の耳に囁きかける。
もう日本に戻る気は無いのかと。
俺の答えは決まっている。
俺はこの地で出会い愛した人々と暮らしていくのだ。
これは心優しい気球乗りと気高く可愛らしい女竜騎士の物語。
人は彼の事を。
『ブレイメン公国の気球乗り』と呼んだ。
◆◆◆
作者の屠龍です。最後まで読んでいただきましてありがとうございます。
この作品は第17回ファンタジー小説大賞に合わせて書きました。
元々二か月間で完結できるかという挑戦でしたがなんとか間に合いました。
よくやったと思われたら投票をお願いします。
色々とアイデアが浮かびましたが当初のプロット通り突っ走ったので書きたい話をいくつか諦めました。
特にアルスラン帝国サイドの人間関係とか書きたかったですね。
最後までいいとこなしのやられ役になってしまいました。
第17回ファンタジー大賞が終わり入賞の是非が決定したら加筆修正するつもりです。
やはり二か月という期間は短すぎましたね。
削りに削って216,424 字です。
我ながらよく完結させたと思います。
それでは今度は加筆修正版。
または別作品を読んでいただければ嬉しいです。
作者別作品 よろしければこちらもお読みいただけると嬉しいです。
僕とボクっ娘勇者の異世界ファンタジー純愛和姦冒険物語~転生した僕は恋人のボクっ娘勇者と幸せラブラブSEXしながら魔王を倒して世界を救います~ https://www.alphapolis.co.jp/novel/772442945/519787503
【完結済み】正義のヒロインレッドバスターカレン。凌辱リョナ処刑。たまに和姦されちゃいます♪
https://www.alphapolis.co.jp/novel/772442945/211736834
フリッツ君の爆弾発言がついこの間のように思い出される。
季節は春から夏になっていた。
妊娠したアカネのお腹も大きくなり、ブレイメン公国国民全員の期待を集めた子供は順調に育っている。
戦争が終わったので竜騎士達もそれぞれの領地に戻り、農民も強い日差しを浴びながら育つライ麦と稲を見て期待に夢をはせている。
アカネが実験的に植えた稲は龍肥のお陰ですくすくと育っていた。
勿論技術が稚拙なせいで幾つかの稲は失敗したが、まだ来年がある。
こうやって技術は進歩してきたのだから初年から上手くいく訳がないのだ。
首都チュロスの上を巨大な飛行船が浮いていた。
気球でなく飛行船だ。
その姿はまさに威風堂々というものだ。
全長は三百メートルを超え翼幅も百二十メートルに達する。
硬式気球と言って気球が空気で膨らませて飛ぶのに対し、外殻を軽い金属で補強して内部にためたガスで飛行する。
そのガスは龍肥の製造過程で出来るガスで水素ガスより軽い。
船体は標準帆船にも劣らない五百トンの巨大な輸送船型艦橋が取り付けられており、まさに浮かぶ船だ。
片翼に十六頭分のドラゴンの翼が取り付けられており、護衛の竜騎士兼推進力として八人の竜騎士とドラゴンが搭乗する。
「設計した俺がいうのもなんだが、すげえ巨体になったな」
自分で設計したとはいえ、その大きさに圧倒される。
まずはこの飛行船を十隻量産する事になる。
名前はぎがんと級飛行船。
これがシリカ国の輸送船団に対する答えだ。
帆船の五倍の速度で海と言わず山でも砂漠でも飛ぶことができる。
行きはブレイメン公国の主力商品の武器や金細工を詰め込み、帰りはシャー国から大量の香辛料や香料などを持ち帰る。
その後持ち帰った香辛料などは気球に積み替えられて近隣国に販売するのだ。
このぎがんとが量産されればブレイメン公国は世界経済を牛耳ったと言えるだろう。
「ハヤトにはいつも驚かされるな」
隣で笑うクリスの笑顔が眩しい。
この飛行船が量産されたら経済を独占していた海洋国家シリカ国は没落するだろう。
だから妥協しておく。
海の上は飛ばないという協定を結んだ。
つまりシリカ国は今まで通り海で交易すればいい。
だが内陸の輸送手段はブレイメン公国が貰うのだ。
シリカ国が持ち込んだ絹や陶磁器などの物品をうちが買い取り内陸国へ転売する。
無論暴利ではシリカ国と戦争になるので交渉して値段は決める事にする。
これは陸路の販路があまりないシリカ国にとっても悪い話ではない。
ただ陸路を馬車で運んでいた商人にとってはたまったものでは無いが。
こうしてブレイメン公国の空のシルクロードは完成した。
◆◆◆
あれから数年が経った。
アカネとフリッツ君の子供は双子で男の子と女の子だった。
男の子はフリッツ君似の赤毛の元気な子で女の子はアカネに似た黒髪だ。
二人ともルビーのような赤い瞳をしている。
名前はそれぞれアルフレッドとアンナという名前を名付けた。
二人がどうしても俺に名付け親になって欲しいと言うので、どんな世界でも生きていけるような立派な名前をつけた。
俺は二人の頭を撫でながら言う。
「二人とも俺の子供と仲良くしてくれよ」
俺とクリスにはまだ子供ができない。
もう無理なのかもしれない。
そんな事を考えるようになった。
だが俺の子供たちは今も世界中の空を飛んでいる。
人を乗せて荷物を乗せて手紙を乗せて。
人と人の繋がりが容易になった。
人々にとって空を飛ぶ事はそれほど難しい事ではなくなった。
これは俺が異世界フォーチュリアに飛ばされてからおきた奇跡。
誰にも成しえなかった奇跡。
これからも人々は空を自由に旅する。
未来は広がって行くのだ。
俺が草原に吹く風を感じながら眼下を見下ろすと人々の笑顔が見える。
俺たちが持ち込んだジャガイモとサツマイモが飢えから開放したのだ。
今では普通に香辛料で味付けされた豚肉とジャガイモを食べている。
羊毛の服ではなく綿の服を着ている。
俺が初めてこの地に来た時。
クリスに振舞われた黒パンと山羊肉のシチューは珍しいものになってしまった。
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いつの間にかクリスが隣に立っていた。
手には薬草茶の入った瓶を持っている。
やはりこの国には薬草茶がふさわしい。
俺はクリスが煎れてくれた薬草茶を飲む。
相変わらず苦い。
「やあクリス。体調はもういいのか?」
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クリスはここ数日寝込んでいた。
こんな事は初めてだ。
だがクリスは幸せそうに微笑んだ。
「子供ができた」
「え?えええ?」
「そんなに驚く事ではないだろう。もう何年夫婦をしていると思っている」
「俺の子か?」
「私が不義をしていると思っていたなら斬るぞ」
「いや、その……ありがとう」
「ああ。こちらこそだ。これからもよろしく頼むぞハヤト」
俺はクリスを抱きしめる。
もう離さないと心に誓う。
クリスも嬉し涙を流している。
その時俺たちをあの時の風が包む。
優しくも心地よい風。
その風が俺の耳に囁きかける。
もう日本に戻る気は無いのかと。
俺の答えは決まっている。
俺はこの地で出会い愛した人々と暮らしていくのだ。
これは心優しい気球乗りと気高く可愛らしい女竜騎士の物語。
人は彼の事を。
『ブレイメン公国の気球乗り』と呼んだ。
◆◆◆
作者の屠龍です。最後まで読んでいただきましてありがとうございます。
この作品は第17回ファンタジー小説大賞に合わせて書きました。
元々二か月間で完結できるかという挑戦でしたがなんとか間に合いました。
よくやったと思われたら投票をお願いします。
色々とアイデアが浮かびましたが当初のプロット通り突っ走ったので書きたい話をいくつか諦めました。
特にアルスラン帝国サイドの人間関係とか書きたかったですね。
最後までいいとこなしのやられ役になってしまいました。
第17回ファンタジー大賞が終わり入賞の是非が決定したら加筆修正するつもりです。
やはり二か月という期間は短すぎましたね。
削りに削って216,424 字です。
我ながらよく完結させたと思います。
それでは今度は加筆修正版。
または別作品を読んでいただければ嬉しいです。
作者別作品 よろしければこちらもお読みいただけると嬉しいです。
僕とボクっ娘勇者の異世界ファンタジー純愛和姦冒険物語~転生した僕は恋人のボクっ娘勇者と幸せラブラブSEXしながら魔王を倒して世界を救います~ https://www.alphapolis.co.jp/novel/772442945/519787503
【完結済み】正義のヒロインレッドバスターカレン。凌辱リョナ処刑。たまに和姦されちゃいます♪
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