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第六章 愛しい人
第三十一話 結婚パーティ
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第三十一話 結婚パーティ
俺たちの乗った気球は俺とクリスと俺の家族を乗せたままゆっくりと屋敷の庭に下り立った。
周りの兵士が俺たちの身体検査と積み荷の確認を行う。
兵士が多種多様な種と苗と本の山とノートパソコンを見て驚いていた。
そりゃそうだろう。
「お邪魔しますハヤトの父親コウジと妻のタエコと娘のアカネです」
「ようこそいらっしゃった。儂がブレイメン大公オットー、妻のシルビア、嫡男のフリッツ、娘のクリス、弟で宰相のフランツじゃ」
クリスぱぱんに威圧されて父親のコウジがびびる。
しっかりしてくれよ親父。
そして主な重臣を紹介される。
俺とアカネは記憶できなかったが流石事務と経理をやっていた母のタエコは全員の名前と特徴を記憶したようだ。
流石である。
「突然の来訪をお許しください」
「なになに気にしなくてよい。もう我らは家族ではないか」
まだ籍は入れていないが既に俺とクリスは結婚した扱いになっている。
そりゃあんな派手な結婚式をすればね。
晴れて俺の妻になったクリスは俺の手をとって嬉し涙に頬を濡らしていた。
ブレイメン公国の結婚はよくわからないが色々な過程をすっ飛ばしたのだから今更である。
「さて、我が国の儀礼にのっとり二人に結婚を許可せねばならんな」
そう言ってオットー大公は秘書官に羊皮紙とペンを持ってこさせた。
秘書官もクリスと俺が結婚する事に感激し、涙をぬぐいながら父さんに羊皮紙をさしだす。
「こちらにご家族全員の名前の記入をお願いいたします」
「え、いやでも俺たちここの文字はわからないです」
そう父さんが言うとオットー大公が笑いながら
「いやそちらの世界の文字で構わない。ようはただの儀式じゃ」
そう言って大公が父さんの肩を叩く。
父さんは現場上がりの人だから体格はいいが、流石にクリスぱぱんほど鍛えてはいない。
完全に空気に飲まれていた。
そりゃまあ目の前にリアル豪傑がいたら俺だってビビる。
父さんと母さんと妹がサインをしてクリスの家族もサインしたあと。
「ハヤト。私達も署名をしよう」
心底幸せそうな笑顔を浮かべたクリスと一緒にペンを持ちサインをした。
その羊皮紙を恭しく秘書官が捧げて後ろに下がる。
これで俺とクリスは結婚だ。
いきなりで実感が湧かないな。
これから一生を共にするクリス。
俺はまだ二十四歳で結婚なんて早すぎる気もするけど、クリスの事を愛しているから何も問題は無い。
それからオットー大公は俺たちを歓迎する宴を開くと言って侍女に準備を命じた。
そして俺たちは客間に案内されて歓待を受ける事になったのだ。
その日の夜は豪勢だった。
輸入品の香辛料を沢山使った肉料理を中心にワインや酒が振舞われ、大勢の貴族と代わる代わる挨拶をして乾杯していった。
俺はクリスとずっと一緒なので特に問題は無かったが、父さんは緊張のし過ぎでワインを数杯飲んだ後オットー大公に誘われて一緒に飲んでいる。
父さんは酒に強いから飲み比べになっても大丈夫だろう。
飲み会が得意な父親でよかったと心底思う。
母さんはお偉いさんへの挨拶に忙しかったようだ。
このあたり沢山の得意先とのコミュニケーションをこなし、嫌なことにも頭を下げたりしてきた経験が生きているのだろう。
貴族婦人達との会話に談笑しているがチクチク嫌味を言われてるのだろう。
とかく貴族社会は恐ろしい。
見栄と血筋で生きている貴族からみれば異世界から来たうちの家族なんて厄介者でしかない。
アカネも慣れない環境なのに貴族の子弟を相手に俺の過去のエピソードを語っている。
特にフリッツ君と話が弾んでいるようだ。
というかフリッツ君が男泣きしているのを宥めている。
俺とクリスの結婚が心底嬉しいのだろう。
我が妹ながらコミュ力高すぎるだろう。
社交界にデビューするのも近いかもしれない。
ただこちらも同年代の貴族子弟に色々腹を探られてるのだろうなと思うと申し訳なく思った。
俺とクリスも貴族たち相手に挨拶のし通しだ。
公女のクリスは勿論だが、ブレイメン公国に気球をもたらし現在の繁栄を作った俺は有力貴族で伯爵様だ。
仲良くしたい貴族は沢山いるだろう。
まあ俺の持つ特権が欲しい連中なので信用してはいけない。
貴族は善人では務まらないのだ。
特にこの宴は俺とクリスの結婚を祝って開かれたものだ。
つまり俺はオットー大公の義理の息子であると同時にブレイメン公国の重鎮でもあるのだ。
「ハヤト殿、お初にお目にかかります」
「これはこれはご丁寧にありがとうございます」
「私はアレイスター・フォン・ピースクラウト侯爵ともうします」
そう言って立派な筆髭を生やした小太りの中年貴族が頭を下げる。
俺も頭を下げて挨拶をする。
相手は侯爵様だ。
俺の家より家格は上だ。
いやクリスと結婚するのだから俺の家はもっと格が上になるのだろう。
立場上ブレイメン大公家の次に偉い侯爵家になるかもしれない。
あまり偉くなると嫌な宮廷闘争に巻き込まれるかもしれない。
現に今、巻き込まれようとしている。
俺は伯爵で十分なのだが、爵位が大きいとやれることも多くなるので喜ぶべきか?
考え事しているとピースクラウト侯爵が話を切り出す。
貴族との会話は腹の探り合いだ。
油断はできない。
だがあまり緊張しすぎてもいけないだろう。
俺も大人だ。社交辞令を真に受けてクリスたちの立場を悪くする気はない。
ブレイメン大公家はあくまで有力貴族の集まりなので俺が下手な事を言ったりしたら亀裂が入る。
ああ面倒くさい。
面倒くさいが愛する妻の為だ。
多少の困難はちゃんと処理しないとな。
俺たちの乗った気球は俺とクリスと俺の家族を乗せたままゆっくりと屋敷の庭に下り立った。
周りの兵士が俺たちの身体検査と積み荷の確認を行う。
兵士が多種多様な種と苗と本の山とノートパソコンを見て驚いていた。
そりゃそうだろう。
「お邪魔しますハヤトの父親コウジと妻のタエコと娘のアカネです」
「ようこそいらっしゃった。儂がブレイメン大公オットー、妻のシルビア、嫡男のフリッツ、娘のクリス、弟で宰相のフランツじゃ」
クリスぱぱんに威圧されて父親のコウジがびびる。
しっかりしてくれよ親父。
そして主な重臣を紹介される。
俺とアカネは記憶できなかったが流石事務と経理をやっていた母のタエコは全員の名前と特徴を記憶したようだ。
流石である。
「突然の来訪をお許しください」
「なになに気にしなくてよい。もう我らは家族ではないか」
まだ籍は入れていないが既に俺とクリスは結婚した扱いになっている。
そりゃあんな派手な結婚式をすればね。
晴れて俺の妻になったクリスは俺の手をとって嬉し涙に頬を濡らしていた。
ブレイメン公国の結婚はよくわからないが色々な過程をすっ飛ばしたのだから今更である。
「さて、我が国の儀礼にのっとり二人に結婚を許可せねばならんな」
そう言ってオットー大公は秘書官に羊皮紙とペンを持ってこさせた。
秘書官もクリスと俺が結婚する事に感激し、涙をぬぐいながら父さんに羊皮紙をさしだす。
「こちらにご家族全員の名前の記入をお願いいたします」
「え、いやでも俺たちここの文字はわからないです」
そう父さんが言うとオットー大公が笑いながら
「いやそちらの世界の文字で構わない。ようはただの儀式じゃ」
そう言って大公が父さんの肩を叩く。
父さんは現場上がりの人だから体格はいいが、流石にクリスぱぱんほど鍛えてはいない。
完全に空気に飲まれていた。
そりゃまあ目の前にリアル豪傑がいたら俺だってビビる。
父さんと母さんと妹がサインをしてクリスの家族もサインしたあと。
「ハヤト。私達も署名をしよう」
心底幸せそうな笑顔を浮かべたクリスと一緒にペンを持ちサインをした。
その羊皮紙を恭しく秘書官が捧げて後ろに下がる。
これで俺とクリスは結婚だ。
いきなりで実感が湧かないな。
これから一生を共にするクリス。
俺はまだ二十四歳で結婚なんて早すぎる気もするけど、クリスの事を愛しているから何も問題は無い。
それからオットー大公は俺たちを歓迎する宴を開くと言って侍女に準備を命じた。
そして俺たちは客間に案内されて歓待を受ける事になったのだ。
その日の夜は豪勢だった。
輸入品の香辛料を沢山使った肉料理を中心にワインや酒が振舞われ、大勢の貴族と代わる代わる挨拶をして乾杯していった。
俺はクリスとずっと一緒なので特に問題は無かったが、父さんは緊張のし過ぎでワインを数杯飲んだ後オットー大公に誘われて一緒に飲んでいる。
父さんは酒に強いから飲み比べになっても大丈夫だろう。
飲み会が得意な父親でよかったと心底思う。
母さんはお偉いさんへの挨拶に忙しかったようだ。
このあたり沢山の得意先とのコミュニケーションをこなし、嫌なことにも頭を下げたりしてきた経験が生きているのだろう。
貴族婦人達との会話に談笑しているがチクチク嫌味を言われてるのだろう。
とかく貴族社会は恐ろしい。
見栄と血筋で生きている貴族からみれば異世界から来たうちの家族なんて厄介者でしかない。
アカネも慣れない環境なのに貴族の子弟を相手に俺の過去のエピソードを語っている。
特にフリッツ君と話が弾んでいるようだ。
というかフリッツ君が男泣きしているのを宥めている。
俺とクリスの結婚が心底嬉しいのだろう。
我が妹ながらコミュ力高すぎるだろう。
社交界にデビューするのも近いかもしれない。
ただこちらも同年代の貴族子弟に色々腹を探られてるのだろうなと思うと申し訳なく思った。
俺とクリスも貴族たち相手に挨拶のし通しだ。
公女のクリスは勿論だが、ブレイメン公国に気球をもたらし現在の繁栄を作った俺は有力貴族で伯爵様だ。
仲良くしたい貴族は沢山いるだろう。
まあ俺の持つ特権が欲しい連中なので信用してはいけない。
貴族は善人では務まらないのだ。
特にこの宴は俺とクリスの結婚を祝って開かれたものだ。
つまり俺はオットー大公の義理の息子であると同時にブレイメン公国の重鎮でもあるのだ。
「ハヤト殿、お初にお目にかかります」
「これはこれはご丁寧にありがとうございます」
「私はアレイスター・フォン・ピースクラウト侯爵ともうします」
そう言って立派な筆髭を生やした小太りの中年貴族が頭を下げる。
俺も頭を下げて挨拶をする。
相手は侯爵様だ。
俺の家より家格は上だ。
いやクリスと結婚するのだから俺の家はもっと格が上になるのだろう。
立場上ブレイメン大公家の次に偉い侯爵家になるかもしれない。
あまり偉くなると嫌な宮廷闘争に巻き込まれるかもしれない。
現に今、巻き込まれようとしている。
俺は伯爵で十分なのだが、爵位が大きいとやれることも多くなるので喜ぶべきか?
考え事しているとピースクラウト侯爵が話を切り出す。
貴族との会話は腹の探り合いだ。
油断はできない。
だがあまり緊張しすぎてもいけないだろう。
俺も大人だ。社交辞令を真に受けてクリスたちの立場を悪くする気はない。
ブレイメン大公家はあくまで有力貴族の集まりなので俺が下手な事を言ったりしたら亀裂が入る。
ああ面倒くさい。
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