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第五章 帰還
第二十七話 爆弾発言
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第二十七話 爆弾発言
俺は自室のベッドに顔を伏せる。
俺が戻った日に驚いたのは部屋が綺麗なままだった事だ。
いつ帰ってきてもいいように部屋を綺麗にしてくれていた母と妹に感謝して泣いた。
優しい家族。
かけがえのない家族。
俺を愛してくれる家族。
「───クリス」
クリスへの想いは募る。
もしかしたらフォーチュリアに戻れるかもしれない。
飯塚教授がそう言った時、諦めていたクリスへの想いが溢れて来た。
俺がクリスを愛している事を痛感すると同時に家族を想う心も抑えきれない。
だから俺は決断した。
翌朝、休みの日に俺は家族を集めて家族会議を行う。
そこでとんでもない事を言う。
「俺は異世界フォーチュリアに想い人がいる。だからあそこに戻りたい」
俺の発言にみんな黙り込んだ。
当たり前だ。
それは俺がこの世界からいなくなるという事だ。
「お兄ちゃん!!駄目だよ私お兄ちゃんと離れたくない!!」
茜が必死に俺を引き留めようと叫ぶ。
だが俺は続ける。
「ごめん茜。もう決めたんだ」
「どうしてもか?」
父さんが俺を見て怒ったように顔を引きつらせていた。
いつも優しい父さんが怒るのはいつ以来か。
「私達よりクリスさんを選びたいくらいクリスさんを愛してるのね」
母さんはこうなる事を察していたようだ。
母さんは部屋を片付けていつでも俺が戻れるようにしてくれていた。
俺は頷く。
「ごめん」
「どうしてなの?お兄ちゃんは私達の事嫌いなの?」
茜が涙ぐむ。
俺は家族を愛している。
だがそれ以上にクリスへの愛が俺の中で膨れ上がる。
「違う!俺はみんなを愛してる!!」
「ならどうして!?」
そんなの決まってるじゃないか。
もう会えないかもしれないんだ。
だったらせめて自分の気持ちを伝えないと後悔が残るだろう?
「俺は異世界フォーチュリアに戻りたい。でも父さん母さん茜と離れたくない。だから」
そういって俺は一呼吸おいてからとんでもない事を言う。
「みんなでフォーチュリアに移住しないか」
「はああああ!?」
俺の爆弾発言に皆驚いた。
「フォーチュリアってお兄ちゃんの行った世界だよね?そこにみんなで移住するの!?」
茜が目を白黒させる。
「ああ、俺はクリスに結婚を申し込まれたんだ」
「え!?」
今度は母さんと茜が驚いた。
家族会議は大混乱だ。
「俺がいなくなったらみんなが悲しむだろう?だからみんなも異世界フォーチュリアに移住しないか?飯塚教授が言うには一か月後に異世界フォーチュリアへの扉が開く。そして俺は日本に帰ってきた。だからみんなと永遠に別れるなんて事は無い。それに俺はあっちだと伯爵様なんだ。食べるには困らない」
「いや、しかしだな」
父さんは混乱している。
「お兄ちゃんの言う事だから信じるけど。本当に戻れるの?」
茜も半信半疑だ。
「飯塚教授が言うには一か月後に異世界フォーチュリアへの扉が開くらしいんだ。そして俺が戻ってきたようにみんなを連れて行く事もできる」
「ちょっと待って。私達には両親と親戚たちがいるのよ」
俺にはおじいちゃんとおばあちゃんがいる。
母さんにも友達や職場がある。
俺はそんな母さんに微笑んだ。
「俺はクリスを愛しているし家族も愛してる。だから両方と別れたくない。俺は両方を取るって決めたんだ」
俺の発言に家族は絶句する。
そして茜が俺に抱き着いてきた。
その目には涙が浮かんでいた。
俺はそんな妹を優しく抱きしめる。
「飯塚教授が言うには一か月後に異世界フォーチュリアに行くことができる。だからその時にみんなに一緒に来て欲しい」
俺の爆弾発言に皆驚きと戸惑う。
「つまり日本と異世界フォーチュリアって所と往復は可能って事だな?」
「そういう事らしい。勿論確実じゃないし永遠にこの世界と別れる事になるかもしれない」
父さんの再度の問いに俺は答える。
俺がそういうと父さんがため息をついてスマホを取り出した。
「直接飯塚に話を聞くことにする。みんなそれでいいな?」
俺も家族もみんなで頷いた。
父さんがそう言って飯塚教授へ電話した。
「ああ休みなのにすまんな。今から家族全員でそっちへ伺いたいがいいか?というか押しかける。俺たちにとって大切なことだ」
「わかった。では待っているよ」
飯塚教授は予想していたようだ。
すぐに了承してくれた。
「すまんな」
そう言って父さんは電話を切った。
「今から行くぞ。準備をしろ」
父さんの言葉に俺たちは飯塚教授の家に行く準備をした。
俺たちは全員俺が運転する車に乗り込んだ。
大学まで一時間の距離だ。
「お兄ちゃん。異世界フォーチュリアってどんな所なの?」
茜が聞いてくる。
「そうだな。日本と違って科学は発展していないんだ。代わりに魔法がある」
「魔法!?」
そんなのゲームや小説の中だけの存在じゃないと茜は驚く。
だが事実だ。
「ああ、ドラゴンもいるしユニコーンやペガサスといった聖獣もいる」
「すごいファンタジーな世界だね」
理系の茜は目を輝かせた。
茜が文系を目指さなかったのは自分が科学が好きだというのが一番大きいが、見た事のない世界を見てみたかったという理由もある。
だから異世界フォーチュリアの話を聞いて目を輝かせていた。
そんな茜が興味を持たない筈がない。
「でもお兄ちゃん。その世界と日本を行き来できるの?」
「飯塚教授が言うには出来るらしい」
「じゃあまた日本に帰って来れるんだね!!」
茜は嬉しそうに言った。
そんな俺達に母さんが心配そうに声をかける。
「ねえ、隼人。本当に異世界に行く気なの?もし二度と帰れないなら私は反対よ」
「ああ、俺もそれは考えたさ。でも俺はクリスに会いたいんだ」
「そうかもしれないけどね」
母さんの不安げな言葉に父さんが頷くが何か考えている様子だった。
こういう時の父さんは無口になる。
「飯塚教授に話を聞いてからみんな聞いて欲しい」
俺がそう締めくくると家族みんなが頷いた。
俺は自室のベッドに顔を伏せる。
俺が戻った日に驚いたのは部屋が綺麗なままだった事だ。
いつ帰ってきてもいいように部屋を綺麗にしてくれていた母と妹に感謝して泣いた。
優しい家族。
かけがえのない家族。
俺を愛してくれる家族。
「───クリス」
クリスへの想いは募る。
もしかしたらフォーチュリアに戻れるかもしれない。
飯塚教授がそう言った時、諦めていたクリスへの想いが溢れて来た。
俺がクリスを愛している事を痛感すると同時に家族を想う心も抑えきれない。
だから俺は決断した。
翌朝、休みの日に俺は家族を集めて家族会議を行う。
そこでとんでもない事を言う。
「俺は異世界フォーチュリアに想い人がいる。だからあそこに戻りたい」
俺の発言にみんな黙り込んだ。
当たり前だ。
それは俺がこの世界からいなくなるという事だ。
「お兄ちゃん!!駄目だよ私お兄ちゃんと離れたくない!!」
茜が必死に俺を引き留めようと叫ぶ。
だが俺は続ける。
「ごめん茜。もう決めたんだ」
「どうしてもか?」
父さんが俺を見て怒ったように顔を引きつらせていた。
いつも優しい父さんが怒るのはいつ以来か。
「私達よりクリスさんを選びたいくらいクリスさんを愛してるのね」
母さんはこうなる事を察していたようだ。
母さんは部屋を片付けていつでも俺が戻れるようにしてくれていた。
俺は頷く。
「ごめん」
「どうしてなの?お兄ちゃんは私達の事嫌いなの?」
茜が涙ぐむ。
俺は家族を愛している。
だがそれ以上にクリスへの愛が俺の中で膨れ上がる。
「違う!俺はみんなを愛してる!!」
「ならどうして!?」
そんなの決まってるじゃないか。
もう会えないかもしれないんだ。
だったらせめて自分の気持ちを伝えないと後悔が残るだろう?
「俺は異世界フォーチュリアに戻りたい。でも父さん母さん茜と離れたくない。だから」
そういって俺は一呼吸おいてからとんでもない事を言う。
「みんなでフォーチュリアに移住しないか」
「はああああ!?」
俺の爆弾発言に皆驚いた。
「フォーチュリアってお兄ちゃんの行った世界だよね?そこにみんなで移住するの!?」
茜が目を白黒させる。
「ああ、俺はクリスに結婚を申し込まれたんだ」
「え!?」
今度は母さんと茜が驚いた。
家族会議は大混乱だ。
「俺がいなくなったらみんなが悲しむだろう?だからみんなも異世界フォーチュリアに移住しないか?飯塚教授が言うには一か月後に異世界フォーチュリアへの扉が開く。そして俺は日本に帰ってきた。だからみんなと永遠に別れるなんて事は無い。それに俺はあっちだと伯爵様なんだ。食べるには困らない」
「いや、しかしだな」
父さんは混乱している。
「お兄ちゃんの言う事だから信じるけど。本当に戻れるの?」
茜も半信半疑だ。
「飯塚教授が言うには一か月後に異世界フォーチュリアへの扉が開くらしいんだ。そして俺が戻ってきたようにみんなを連れて行く事もできる」
「ちょっと待って。私達には両親と親戚たちがいるのよ」
俺にはおじいちゃんとおばあちゃんがいる。
母さんにも友達や職場がある。
俺はそんな母さんに微笑んだ。
「俺はクリスを愛しているし家族も愛してる。だから両方と別れたくない。俺は両方を取るって決めたんだ」
俺の発言に家族は絶句する。
そして茜が俺に抱き着いてきた。
その目には涙が浮かんでいた。
俺はそんな妹を優しく抱きしめる。
「飯塚教授が言うには一か月後に異世界フォーチュリアに行くことができる。だからその時にみんなに一緒に来て欲しい」
俺の爆弾発言に皆驚きと戸惑う。
「つまり日本と異世界フォーチュリアって所と往復は可能って事だな?」
「そういう事らしい。勿論確実じゃないし永遠にこの世界と別れる事になるかもしれない」
父さんの再度の問いに俺は答える。
俺がそういうと父さんがため息をついてスマホを取り出した。
「直接飯塚に話を聞くことにする。みんなそれでいいな?」
俺も家族もみんなで頷いた。
父さんがそう言って飯塚教授へ電話した。
「ああ休みなのにすまんな。今から家族全員でそっちへ伺いたいがいいか?というか押しかける。俺たちにとって大切なことだ」
「わかった。では待っているよ」
飯塚教授は予想していたようだ。
すぐに了承してくれた。
「すまんな」
そう言って父さんは電話を切った。
「今から行くぞ。準備をしろ」
父さんの言葉に俺たちは飯塚教授の家に行く準備をした。
俺たちは全員俺が運転する車に乗り込んだ。
大学まで一時間の距離だ。
「お兄ちゃん。異世界フォーチュリアってどんな所なの?」
茜が聞いてくる。
「そうだな。日本と違って科学は発展していないんだ。代わりに魔法がある」
「魔法!?」
そんなのゲームや小説の中だけの存在じゃないと茜は驚く。
だが事実だ。
「ああ、ドラゴンもいるしユニコーンやペガサスといった聖獣もいる」
「すごいファンタジーな世界だね」
理系の茜は目を輝かせた。
茜が文系を目指さなかったのは自分が科学が好きだというのが一番大きいが、見た事のない世界を見てみたかったという理由もある。
だから異世界フォーチュリアの話を聞いて目を輝かせていた。
そんな茜が興味を持たない筈がない。
「でもお兄ちゃん。その世界と日本を行き来できるの?」
「飯塚教授が言うには出来るらしい」
「じゃあまた日本に帰って来れるんだね!!」
茜は嬉しそうに言った。
そんな俺達に母さんが心配そうに声をかける。
「ねえ、隼人。本当に異世界に行く気なの?もし二度と帰れないなら私は反対よ」
「ああ、俺もそれは考えたさ。でも俺はクリスに会いたいんだ」
「そうかもしれないけどね」
母さんの不安げな言葉に父さんが頷くが何か考えている様子だった。
こういう時の父さんは無口になる。
「飯塚教授に話を聞いてからみんな聞いて欲しい」
俺がそう締めくくると家族みんなが頷いた。
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