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第14章 転生者達
第98話 クヌートとフェリシアの秘められた過去。
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第98話 クヌートとフェリシアの秘められた過去。
ギルドマスターのオットーさんに僕とミレーヌが愛し合っている事がバレてから、僕は恥ずかしさのあまり俯いていた。
そんな僕を見てオットーさんは笑う。
どうやらオットーさんは下ネタが好きらしい。
でも僕の事を転生者だと見抜いた眼力はすごい能力だと思う。
ただ単にカマをかけただけかもしれないけど。
「これは内緒じゃがクヌートとフェリシアと言ったかのう。あのハーフエルフの兄妹に魔術を教えたのは儂らの仲間だった亡き魔術師じゃ。あやつは人間唯一のウィザードでな。いつか勇者を支えるウィザードを育てると言っておった。じゃからこの世界で唯一ウィザードになれるハーフエルフを探して養育したのじゃ。この話は内緒で頼むぞ。クヌートとフェリシアが最初から勇者と一緒に戦う為に育てられたと知ったらあの二人は傷つくじゃろうからな」
「それではクヌートとフェリシアも転生者なのですか?」
「いいや違う。あの二人はれっきとしたフォーチュリアの者じゃ」
僕の疑問にオットーさんが答えた。
そしてマリータさんの仲間だった魔術師がハーフエルフの兄妹を養育して育てたらしい。
だからクヌートとフェリシアは最初から勇者と一緒に戦う為の存在として育てられたという事か。
「エルフの里の者はクヌートとフェリシアがハーフエルフだとわかると二人を迫害した。エルフの母親は必死になって二人を庇ったが庇いきれなかったのじゃ。エルフにとって勇者の仲間になった異端などエルフではないからの。魔王はエルフたちに自分が滅ぼしたいのは人間界だけだとエルフに約束したんじゃろ。エルフにとって自分の森さえ無事なら人間たちがどうなろうと知った事ではないからの」
オットーさんはそう言って溜め息を吐く。
確かにエルフにとって自分たちの森さえ無事なら人間や勇者に関わりたくないだろう
エルフから見れば将来勇者の仲間になるハーフエルフは仲間どころか厄介の種でしかない。
そして迫害されて育ったクヌートとフェリシアは人間社会で冒険者として生きてきたという事か。
それを聞いていたミレーヌが僕の胸で泣きながら話す。
「そんなの酷い、酷すぎるよ。ボクの仲間にされる為に生まれて、エルフに虐められて育ったなんてクヌートとフェリシアが可哀そうだよ」
「まったくその通りじゃ。じゃがそうしなければ二人は成長する前に魔王の手下に殺されたじゃろう」
オットーさんはそう言ってミレーヌを慰める。
でも僕は納得できなかった。
だってクヌートとフェリシアは僕の大切な仲間だ。
そんな二人がエルフに迫害されて育ったなんて……。
「クヌートとフェリシアを庇ってくれたのは母親のエルフとうちの受付嬢をやっているエルフのエレナだけじゃ。さぞ辛かったであろう」
「でもクヌートとフェリシアは乞食同然の生活をしていたと聞きましたよ?その記憶も嘘なんですか?」
「その記憶は本当じゃ。エルフの里にいられなくなった二人は、森を出て孤児として暮らしたのじゃ。儂も魔術師も二人が生まれた事自体知らなんでな。母親のエルフは完全に人間界と隔絶して二人を育てたかったのじゃろう。可愛いわが子を自分のように魔王と戦わせたくなかったのじゃ。エレナが儂と魔術師に二人を探してくれと懇願した時には既に二人の行方はわからなくなっておったんじゃ。見つけた時は酷い有様じゃった。そして魔王軍に見つかり殺される寸前の所を魔術師が助けたんじゃ。」
オットーさんはそう言って溜め息を吐く。
そのため息には複雑な感情が入り混じっていた。
可愛いわが子を魔王との戦いに巻き込みたくなかった母親の愛情。
その為に仲間のオットーさん達にも子供を身ごもった事を知らせなかった苦悩。
自分の手で安全なエルフの森で育てたかった想い。
そして二人を手放さなければならなかった悲しさ。
でも僕にはどうして母親のエルフが二人と共に森を出なかったのだろうという疑問がある。
「でもクヌートとフェリシアのお母さんはどうして子供たちと一緒に森を出なかったんですか?」
僕は当然の疑問を口にした。
そんなに可愛いわが子が乞食同然の生活をするって知っていたら僕なら絶対に一緒に行ったはずだ。
でも僕の疑問にオットーさんは暗い顔で答える。
それはとても悲しい答えだった。
クヌートとフェリシアのお母さんも魔王の呪いで身体を蝕まれて死の淵にあった事。
そして魔王の呪いを受けた自分が一緒にいれば魔王には必ず見つかる事。
死に瀕した自分では魔王から二人を守る事は出来ないと知っていた事。
「クヌートとフェリシアのお母さんは……」
「死んだ。死ぬ前にエレナにも知らせずに二人を森から逃がしたのじゃ。自分が死ねばたちまち二人が他のエルフに殺されるとわかっておったからのう。姉の意志を知ったエレナが二人を守ろうとしたが周りがそれを許さなかった。姉を看取ったあと慌ててエレナが追放された二人を探したが間に合わなかったのじゃ。可愛いわが子を誰の保護もない人間界に送り出さなくてはならなかったあやつの気持ちを思うと胸が張り裂けそうじゃ」
大切な母親を失い故郷を追われて二人だけで生きてきた兄妹。
魔術師さんが保護するまで乞食や盗人をしながら妹を守り抜いたクヌート。
クヌートに守られたとはいえフェリシアも辛かっただろう。
初対面のクヌートが金銭に貪欲だったのも、そうしなければフェリシアを守れなかったからだ。
安全なエルフの森を追い出され、魔王に狙われながら生きる術として魔法を学んだ二人。
お母さんがクヌートとフェリシアに平和な人生を送ってほしいという願いも果たすことは出来なかった。
どれだけ辛かったのだろう。
僕もミレーヌも故郷に帰れば家族がいる。
クヌートとフェリシアに帰る事が出来る故郷は無い。
でも二人は自分たちでハーフエルフが戻れる家を建てようとしている。
魔王との戦いが終わったら僕とミレーヌもその手伝いをしたい。
何ができるかわからないけど、僕達は仲間の為に何が出来るか考えていた。
ギルドマスターのオットーさんに僕とミレーヌが愛し合っている事がバレてから、僕は恥ずかしさのあまり俯いていた。
そんな僕を見てオットーさんは笑う。
どうやらオットーさんは下ネタが好きらしい。
でも僕の事を転生者だと見抜いた眼力はすごい能力だと思う。
ただ単にカマをかけただけかもしれないけど。
「これは内緒じゃがクヌートとフェリシアと言ったかのう。あのハーフエルフの兄妹に魔術を教えたのは儂らの仲間だった亡き魔術師じゃ。あやつは人間唯一のウィザードでな。いつか勇者を支えるウィザードを育てると言っておった。じゃからこの世界で唯一ウィザードになれるハーフエルフを探して養育したのじゃ。この話は内緒で頼むぞ。クヌートとフェリシアが最初から勇者と一緒に戦う為に育てられたと知ったらあの二人は傷つくじゃろうからな」
「それではクヌートとフェリシアも転生者なのですか?」
「いいや違う。あの二人はれっきとしたフォーチュリアの者じゃ」
僕の疑問にオットーさんが答えた。
そしてマリータさんの仲間だった魔術師がハーフエルフの兄妹を養育して育てたらしい。
だからクヌートとフェリシアは最初から勇者と一緒に戦う為の存在として育てられたという事か。
「エルフの里の者はクヌートとフェリシアがハーフエルフだとわかると二人を迫害した。エルフの母親は必死になって二人を庇ったが庇いきれなかったのじゃ。エルフにとって勇者の仲間になった異端などエルフではないからの。魔王はエルフたちに自分が滅ぼしたいのは人間界だけだとエルフに約束したんじゃろ。エルフにとって自分の森さえ無事なら人間たちがどうなろうと知った事ではないからの」
オットーさんはそう言って溜め息を吐く。
確かにエルフにとって自分たちの森さえ無事なら人間や勇者に関わりたくないだろう
エルフから見れば将来勇者の仲間になるハーフエルフは仲間どころか厄介の種でしかない。
そして迫害されて育ったクヌートとフェリシアは人間社会で冒険者として生きてきたという事か。
それを聞いていたミレーヌが僕の胸で泣きながら話す。
「そんなの酷い、酷すぎるよ。ボクの仲間にされる為に生まれて、エルフに虐められて育ったなんてクヌートとフェリシアが可哀そうだよ」
「まったくその通りじゃ。じゃがそうしなければ二人は成長する前に魔王の手下に殺されたじゃろう」
オットーさんはそう言ってミレーヌを慰める。
でも僕は納得できなかった。
だってクヌートとフェリシアは僕の大切な仲間だ。
そんな二人がエルフに迫害されて育ったなんて……。
「クヌートとフェリシアを庇ってくれたのは母親のエルフとうちの受付嬢をやっているエルフのエレナだけじゃ。さぞ辛かったであろう」
「でもクヌートとフェリシアは乞食同然の生活をしていたと聞きましたよ?その記憶も嘘なんですか?」
「その記憶は本当じゃ。エルフの里にいられなくなった二人は、森を出て孤児として暮らしたのじゃ。儂も魔術師も二人が生まれた事自体知らなんでな。母親のエルフは完全に人間界と隔絶して二人を育てたかったのじゃろう。可愛いわが子を自分のように魔王と戦わせたくなかったのじゃ。エレナが儂と魔術師に二人を探してくれと懇願した時には既に二人の行方はわからなくなっておったんじゃ。見つけた時は酷い有様じゃった。そして魔王軍に見つかり殺される寸前の所を魔術師が助けたんじゃ。」
オットーさんはそう言って溜め息を吐く。
そのため息には複雑な感情が入り混じっていた。
可愛いわが子を魔王との戦いに巻き込みたくなかった母親の愛情。
その為に仲間のオットーさん達にも子供を身ごもった事を知らせなかった苦悩。
自分の手で安全なエルフの森で育てたかった想い。
そして二人を手放さなければならなかった悲しさ。
でも僕にはどうして母親のエルフが二人と共に森を出なかったのだろうという疑問がある。
「でもクヌートとフェリシアのお母さんはどうして子供たちと一緒に森を出なかったんですか?」
僕は当然の疑問を口にした。
そんなに可愛いわが子が乞食同然の生活をするって知っていたら僕なら絶対に一緒に行ったはずだ。
でも僕の疑問にオットーさんは暗い顔で答える。
それはとても悲しい答えだった。
クヌートとフェリシアのお母さんも魔王の呪いで身体を蝕まれて死の淵にあった事。
そして魔王の呪いを受けた自分が一緒にいれば魔王には必ず見つかる事。
死に瀕した自分では魔王から二人を守る事は出来ないと知っていた事。
「クヌートとフェリシアのお母さんは……」
「死んだ。死ぬ前にエレナにも知らせずに二人を森から逃がしたのじゃ。自分が死ねばたちまち二人が他のエルフに殺されるとわかっておったからのう。姉の意志を知ったエレナが二人を守ろうとしたが周りがそれを許さなかった。姉を看取ったあと慌ててエレナが追放された二人を探したが間に合わなかったのじゃ。可愛いわが子を誰の保護もない人間界に送り出さなくてはならなかったあやつの気持ちを思うと胸が張り裂けそうじゃ」
大切な母親を失い故郷を追われて二人だけで生きてきた兄妹。
魔術師さんが保護するまで乞食や盗人をしながら妹を守り抜いたクヌート。
クヌートに守られたとはいえフェリシアも辛かっただろう。
初対面のクヌートが金銭に貪欲だったのも、そうしなければフェリシアを守れなかったからだ。
安全なエルフの森を追い出され、魔王に狙われながら生きる術として魔法を学んだ二人。
お母さんがクヌートとフェリシアに平和な人生を送ってほしいという願いも果たすことは出来なかった。
どれだけ辛かったのだろう。
僕もミレーヌも故郷に帰れば家族がいる。
クヌートとフェリシアに帰る事が出来る故郷は無い。
でも二人は自分たちでハーフエルフが戻れる家を建てようとしている。
魔王との戦いが終わったら僕とミレーヌもその手伝いをしたい。
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