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第13章 アルスラン帝国
第94話 勇者対勇者?
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第94話 勇者対勇者?
僕たちは本を読みながら、この本はどういう内容だったのか語り合う。
モンスターだけでなく各国の政治、経済、宗教など知らなければならない事は沢山ある。
セシルさんは経済面を中心に読みシグレさんは軍事とか政治を読んでいる。
僕とミレーヌはモンスターや地理など実用面。
クヌートとフェリシアは主に古代の伝承や宗教などを読んだ。
それをロッテが纏めてくれる。
ロッテは事務も得意のようだった。
「ねえ。この本はどういう内容なの?」
そう言ってミレーヌが僕に見せてきたのは【勇者と魔王】という本だった。
表紙には二人の美少女が剣を交えている絵が描かれている。
「ちょっと読んでみるね」
僕はその本を開いて読み始める。
内容はこうだ。
今から千年ほど前、世界を支配せんと魔王が世界征服を目論み人間たちに戦いを仕掛けてきた。
勇者は勇敢にも立ち上がり、仲間たちと共に魔王軍に立ち向かう。
長い長い旅の末、勇者たちはついに魔王を打ち倒し世界に平和をもたらしたというお話だ。
最後は勇者少女と魔王少女が剣を交え魔王を倒したという。
「よくある話だな」
僕が本を読み終えるとクヌートがそう感想を言った。
「でも勇者は魔王を倒して世界に平和をもたらしたって書いてあるけど、魔王軍との戦いの描写とか全然ないよ?」
「それにこの絵もおかしいよ」
ミレーヌが指さす挿絵には二人の美少女が剣を交えている。
その二人がまったく同じ顔をしているのだ。
その本は他にも勇者と魔王の戦いを描いた絵が載っているけど、どれも二人の顔は同じだった。
まるで二人が姉妹のように描かれているのだ。
挿絵の二人はとても悲しそうだ。
「どういう事なのでしょう?ミレーヌに双子の姉妹がいるとか?」
「ボクに姉妹なんていないよ。それに姉妹が戦うっていうならマリータ母さんにも姉妹がいた事になるよ」
フェリシアの疑問をミレーヌが即座に否定する。
この構図が正しいなら歴代勇者は魔王と姉妹がいないと勇者になれないという事になる。
それに千年前に魔王を倒したというなら、今いるであろう魔王はいったい何者なんだ?
「この勇者ってもしかして魔王の子供とか?」
「そうなるとミレーヌは実の母親と戦わなくちゃいけなくなる。ミレーヌの母親は病死したのだろう?それなら前提が間違えている事になる」
僕の疑問をクヌートが否定する。
僕が夢で会ったミレーヌのお母さんマリータさんは娘に剣を突き付けられるような人には見えなかった。
勇者が勇者を殺す?
ますます訳がわからない。
この本に書かれている事は嘘なのだろうか?
それとも真実を隠す為にこういう話にしてあるのだろうか。
「単純に記述が間違えているだけではないか?書物に描かれている事が全て正しい訳でもないだろうしな」
シグレさんの指摘が一番正しいような気がする。
それに時間が許す範囲で僕達は知識を頭に詰め込まないといけない。
この日は夜中まで僕達は疑問に思いながらも別の本を読み続けた。
一心不乱に本を読み続ける僕たちに気を使ったエストは手軽に食べられる夕食を用意してくれる。
エストは本当に気が回る子だ。
そして翌日、エストが朝食を持ってやってきた。
僕たちはエストの給仕を受けながら食事をする。
新鮮な卵と分厚いハムを使ったハムエッグ。
ベーコンと豆が沢山入ったスープ。
よく知らない芋をフライドポテトにしたもの。
サラダには貴重なマヨネーズがかかっている。
焼き立てのパンと牛乳。
その食事は豪華で味も絶品だった。
さすがギルド直営の高級宿だ。
「皆さん読書家なのですね」
エストがニコニコしながら本の配置が変わったブックシェルフを見詰める。
多分後でエストが本を元に並べ治すのだろう。
本には埃一つついていなかったし、ブックカバーも古い本の場合は丁寧に直していた。
つまりエストは各国語が読めて司書も兼任しているという事だ。
「エストは何でもできるんだね」
「こちらに雇っていただいてから沢山仕事を教えていただきました♪」
エストは褒められてとても嬉しそうだ。
給仕も清掃も司書まで出来る。
この様子だと料理や洗濯なども出来るかもしれない。
でもエストはフミンの民、どうして雇っているんだろう。
「私はギルドマスターに仕えていた召使いの子供なんです。ギルド長には祖母の代から仕えています」
「え、祖母の代から?」
あのギルドマスターは何歳なんだろう。
一見薬物中毒者のような不健康そうな顔に似合わず身なりの整った白髪の老人。
そもそも人間なのだろうか?
エルフなんて存在がいる世界なら人間以外でも驚かないけど油断ならない人だと思う。
「はい。祖母の代から仕えていますのでギルドマスターと私の家族はもう50年近い付き合いになります」
エストはニコニコしながらそう答える。
ということは最低でも70歳以上だということだ。
多分人間じゃないだろう。
でも僕たちに危害を加えようという気はないだろうし。
今はそれほど警戒しなくていい気がする。
「ギルドマスターから夕方に皆さんにお会いしたいと言付かっています」
「つまり夕方まで自由にしていいって事だね」
「はい。ごゆっくりおくつろぎください」
ここで本を読むのもいいけれど、昨日から読書続きで疲れたのもあるし外の空気も吸いたいな。
僕はそう思ってミレーヌに声をかけてみる。
「ちょっと散歩に出たいけど一緒に行かない?」
「うんっボクも丁度そう思ってた所」
夕方まで僕とミレーヌは散歩がてら街の様子を見に行く事にした。
シグレさんとセシルさんもこの巨大都市アストラハンの裏を取り仕切ってる裏ギルドで情報を収集してくると言って出ていく。
その間にクヌートとフェリシアは読書の続きをするそうだ。
何か僕達だけ遊びに行っているように見えるけど、表の情報を探るのも重要だからね。
僕たちは本を読みながら、この本はどういう内容だったのか語り合う。
モンスターだけでなく各国の政治、経済、宗教など知らなければならない事は沢山ある。
セシルさんは経済面を中心に読みシグレさんは軍事とか政治を読んでいる。
僕とミレーヌはモンスターや地理など実用面。
クヌートとフェリシアは主に古代の伝承や宗教などを読んだ。
それをロッテが纏めてくれる。
ロッテは事務も得意のようだった。
「ねえ。この本はどういう内容なの?」
そう言ってミレーヌが僕に見せてきたのは【勇者と魔王】という本だった。
表紙には二人の美少女が剣を交えている絵が描かれている。
「ちょっと読んでみるね」
僕はその本を開いて読み始める。
内容はこうだ。
今から千年ほど前、世界を支配せんと魔王が世界征服を目論み人間たちに戦いを仕掛けてきた。
勇者は勇敢にも立ち上がり、仲間たちと共に魔王軍に立ち向かう。
長い長い旅の末、勇者たちはついに魔王を打ち倒し世界に平和をもたらしたというお話だ。
最後は勇者少女と魔王少女が剣を交え魔王を倒したという。
「よくある話だな」
僕が本を読み終えるとクヌートがそう感想を言った。
「でも勇者は魔王を倒して世界に平和をもたらしたって書いてあるけど、魔王軍との戦いの描写とか全然ないよ?」
「それにこの絵もおかしいよ」
ミレーヌが指さす挿絵には二人の美少女が剣を交えている。
その二人がまったく同じ顔をしているのだ。
その本は他にも勇者と魔王の戦いを描いた絵が載っているけど、どれも二人の顔は同じだった。
まるで二人が姉妹のように描かれているのだ。
挿絵の二人はとても悲しそうだ。
「どういう事なのでしょう?ミレーヌに双子の姉妹がいるとか?」
「ボクに姉妹なんていないよ。それに姉妹が戦うっていうならマリータ母さんにも姉妹がいた事になるよ」
フェリシアの疑問をミレーヌが即座に否定する。
この構図が正しいなら歴代勇者は魔王と姉妹がいないと勇者になれないという事になる。
それに千年前に魔王を倒したというなら、今いるであろう魔王はいったい何者なんだ?
「この勇者ってもしかして魔王の子供とか?」
「そうなるとミレーヌは実の母親と戦わなくちゃいけなくなる。ミレーヌの母親は病死したのだろう?それなら前提が間違えている事になる」
僕の疑問をクヌートが否定する。
僕が夢で会ったミレーヌのお母さんマリータさんは娘に剣を突き付けられるような人には見えなかった。
勇者が勇者を殺す?
ますます訳がわからない。
この本に書かれている事は嘘なのだろうか?
それとも真実を隠す為にこういう話にしてあるのだろうか。
「単純に記述が間違えているだけではないか?書物に描かれている事が全て正しい訳でもないだろうしな」
シグレさんの指摘が一番正しいような気がする。
それに時間が許す範囲で僕達は知識を頭に詰め込まないといけない。
この日は夜中まで僕達は疑問に思いながらも別の本を読み続けた。
一心不乱に本を読み続ける僕たちに気を使ったエストは手軽に食べられる夕食を用意してくれる。
エストは本当に気が回る子だ。
そして翌日、エストが朝食を持ってやってきた。
僕たちはエストの給仕を受けながら食事をする。
新鮮な卵と分厚いハムを使ったハムエッグ。
ベーコンと豆が沢山入ったスープ。
よく知らない芋をフライドポテトにしたもの。
サラダには貴重なマヨネーズがかかっている。
焼き立てのパンと牛乳。
その食事は豪華で味も絶品だった。
さすがギルド直営の高級宿だ。
「皆さん読書家なのですね」
エストがニコニコしながら本の配置が変わったブックシェルフを見詰める。
多分後でエストが本を元に並べ治すのだろう。
本には埃一つついていなかったし、ブックカバーも古い本の場合は丁寧に直していた。
つまりエストは各国語が読めて司書も兼任しているという事だ。
「エストは何でもできるんだね」
「こちらに雇っていただいてから沢山仕事を教えていただきました♪」
エストは褒められてとても嬉しそうだ。
給仕も清掃も司書まで出来る。
この様子だと料理や洗濯なども出来るかもしれない。
でもエストはフミンの民、どうして雇っているんだろう。
「私はギルドマスターに仕えていた召使いの子供なんです。ギルド長には祖母の代から仕えています」
「え、祖母の代から?」
あのギルドマスターは何歳なんだろう。
一見薬物中毒者のような不健康そうな顔に似合わず身なりの整った白髪の老人。
そもそも人間なのだろうか?
エルフなんて存在がいる世界なら人間以外でも驚かないけど油断ならない人だと思う。
「はい。祖母の代から仕えていますのでギルドマスターと私の家族はもう50年近い付き合いになります」
エストはニコニコしながらそう答える。
ということは最低でも70歳以上だということだ。
多分人間じゃないだろう。
でも僕たちに危害を加えようという気はないだろうし。
今はそれほど警戒しなくていい気がする。
「ギルドマスターから夕方に皆さんにお会いしたいと言付かっています」
「つまり夕方まで自由にしていいって事だね」
「はい。ごゆっくりおくつろぎください」
ここで本を読むのもいいけれど、昨日から読書続きで疲れたのもあるし外の空気も吸いたいな。
僕はそう思ってミレーヌに声をかけてみる。
「ちょっと散歩に出たいけど一緒に行かない?」
「うんっボクも丁度そう思ってた所」
夕方まで僕とミレーヌは散歩がてら街の様子を見に行く事にした。
シグレさんとセシルさんもこの巨大都市アストラハンの裏を取り仕切ってる裏ギルドで情報を収集してくると言って出ていく。
その間にクヌートとフェリシアは読書の続きをするそうだ。
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