85 / 103
第12章 フミンの少女
第85話 フミンの少女
しおりを挟む
第85話 フミンの少女
翌日の朝。
僕はミレーヌと一緒に街の散策に出かける事にした。
「ユキナ。何処に行こう?」
「そうだね。まずは食事をしようか。船旅で干し肉と干し魚と干した玉ねぎばかりだったから果物が食べたい」
「うん!ボクも果物が食べたい!」
僕たちは市場でミカンのような果物を購入した。
長い船旅だったからビタミンCが不足しているので果物で補おうというわけだ。
ただ重要な問題があった。
言葉が通用しないのだ。
クヌートとフェリシアがいれば通訳して貰えたのだけど仕方がない。
僕は身振り手振りで他の人が食べている果物や飲み物を注文する。
物価が思っていたより高かったのは、いくらか吹っ掛けられたのだろう。
「賑やかな街だね」
「そうだね」
周りからコーヒーのような飲み物と新鮮なハーブや香辛料の匂いがする。
山積みのドライフルーツにも興味がわいたけど、またぼったくられるのが嫌なので買い物は控えるとしよう。
露天商のおじいちゃんが水煙草をくゆらしながら半分眠ったようにしているけど、こういう年寄りが一番侮れない。
よく見ると露店には宝石の類も売っていたが、かなりぼったくられそうなのでクヌートたちと合流してからにする。
ミレーヌに似合いそうな服もあったけどこれも我慢。
定価らしいものは木札に書いてあるがこれも当てになるかどうか。
多分客と店が値引き合戦をして決めるのだろう。
よく見るとあちこちで店側と買い物客が口論していた。
熾烈な戦いに苦笑しながら僕とミレーヌは広場にあるテーブルとイスで休憩をする事にした。
「凄い街だね。活気があってボクこういう所好き♪」
「そうだね。フレーベルとは違う雑然とした街だけど僕はこういう賑やかな所は好きだよ」
前世では身体が弱くて入退院を繰り返していたから賑やかさとは無縁だった。
だからこういう活気のある街は好きだ。
ミレーヌは僕の隣で果物を食べている。
僕も同じ果物を食べる。
瑞々しい甘さが口いっぱいに広がる。
前世で食べたミカンより甘みがあって美味しい。
僕が2個目の果実に手を伸ばした時、広場の反対側から悲鳴が聞こえてきた。
僕とミレーヌは急いで悲鳴のした方向へ走る。
そこには数人の男が一人の少女を取り囲んでいた。
少女は栗色の髪をした10歳くらいの女の子で、服は破れていて顔や身体に痣ができている。
男たちは剣を抜いて少女を威嚇していた。
少女は怯えていて周りに助けを求めるように周囲を見回すが誰も助けない。
それどころか当たり前のように傍観していた。
「どうしてみんな助けないんだ!?」
僕が叫ぶと少女を取り囲んでいた男たちが驚いたような顔をしたがそれも一瞬の事で、再び何も無かったように剣を身構えた。
僕が少女を助けに入ろうとするとブレストプレートを身に着けた兵士に手を掴まれた。
「やめておけ。あれはフミンの子だ」
その兵士は僕のわかるフレーベル語で話しかけてきた。
よく見ればブレストプレートアーマーも綺麗で手入れが行き届いていて、アーマーの下に着ている服の襟元に刺繍が施してある。
整った外見と流暢なフレーベル語を話すので、きっと外国人も相手にする上級兵士なのだろう。
「フミンってなんですか?」
「このアルスラン帝国の宗教を受け入れず、法や秩序を乱し病気を流行らせる民族だ。可哀そうだがあの子を助ける人はいないよ」
「じゃあこのまま見殺しですか!?」
「そんなのボク許せない!!」
そんな馬鹿な話があるか。
僕とミレーヌはそのまま男たちに威嚇されている少女を庇おうと駆けだす。
「おい待てって。ここにはここのやり方ってのがあるんだ」
後ろで兵士が何か言っているが気にしない。
僕とミレーヌはフミンの少女を庇うように男たちの前に立ちふさがった。
今の僕たちはヨロイを身に着けていない。
腰には護身用に青龍氷牙を身に着けているがそれだけなので、男たちに切りつけられたら応戦するしかない。
周りの人々が騒ぎ出し何かを叫んでいる。
きっと僕たちの行動に憤っているのだろう。
よくわからない言葉で罵られるが気にしない。
僕もミレーヌも剣は抜かないでおく。
剣を抜いたら最後、お互い血を流すことになるからだ。
僕の背中で震えている少女を庇うようにミレーヌが抱きしめると、少女は何かをぽつりと口にした。
多分お礼を言っているのだろう。
じりじりと男たちが剣を手に何かを叫んでいる。
多分邪魔をするなとか、その子をこちらに寄越せとか言っているのだろう。
僕とミレーヌは当然拒否する。
男たちは地面に唾を吐いた後、剣を振り落ろそうとした。
僕は当身を食らわせるべく拳を身構える。
一触即発の状態は数秒後に予想外の展開になった。
群衆と男たちがふらふらと身体を揺らしたあと倒れたのだ。
よく見ると全員眠っている。
「馬鹿何やってる!!」
「ユキナ、ミレーヌ、無事ですか!?」
クヌートとフェリシアの声が聞こえた。
二人が群衆にスリープ(眠りの魔法)をかけてくれたとわかった僕とミレーヌは、急いで少女の手を引きクヌートと
声の方を見ると路地裏からこっちへ来いというジェスチャーで二人が手を振っている。
僕とミレーヌはフミンの少女の手を引っ張って路地裏に逃げ込んだ。
路地裏は薄暗く不潔で臭かった。
あちこちにネズミが這い回り、表の世界とは別世界のようだ。
水はけも悪く水たまりが点在していて靴が濡れる。
群衆が目を覚ます前に出来るだけ遠くへ逃げないといけない。
「何がどうなってるのか説明してくれないか?」
クヌートが僕に事情を説明しろと言ってくる。
走りながらも息を切らさないのはクヌートとフェリシアが普段から身体を鍛えているからだ。
フミンの少女が限界近く咳き込むが今は我慢してもらうしかない。
「後で話すよ!!とにかくこの子を無事に保護しないと!!」
「わかりました。このまま裏路地を走れば町はずれに出ます。そこで事情を聞かせてください」
「わかったよ。後で話すね」
フェリシアにそう答えてあと、僕達は無言で走り続けて町はずれの貧民街にたどり着いた。
翌日の朝。
僕はミレーヌと一緒に街の散策に出かける事にした。
「ユキナ。何処に行こう?」
「そうだね。まずは食事をしようか。船旅で干し肉と干し魚と干した玉ねぎばかりだったから果物が食べたい」
「うん!ボクも果物が食べたい!」
僕たちは市場でミカンのような果物を購入した。
長い船旅だったからビタミンCが不足しているので果物で補おうというわけだ。
ただ重要な問題があった。
言葉が通用しないのだ。
クヌートとフェリシアがいれば通訳して貰えたのだけど仕方がない。
僕は身振り手振りで他の人が食べている果物や飲み物を注文する。
物価が思っていたより高かったのは、いくらか吹っ掛けられたのだろう。
「賑やかな街だね」
「そうだね」
周りからコーヒーのような飲み物と新鮮なハーブや香辛料の匂いがする。
山積みのドライフルーツにも興味がわいたけど、またぼったくられるのが嫌なので買い物は控えるとしよう。
露天商のおじいちゃんが水煙草をくゆらしながら半分眠ったようにしているけど、こういう年寄りが一番侮れない。
よく見ると露店には宝石の類も売っていたが、かなりぼったくられそうなのでクヌートたちと合流してからにする。
ミレーヌに似合いそうな服もあったけどこれも我慢。
定価らしいものは木札に書いてあるがこれも当てになるかどうか。
多分客と店が値引き合戦をして決めるのだろう。
よく見るとあちこちで店側と買い物客が口論していた。
熾烈な戦いに苦笑しながら僕とミレーヌは広場にあるテーブルとイスで休憩をする事にした。
「凄い街だね。活気があってボクこういう所好き♪」
「そうだね。フレーベルとは違う雑然とした街だけど僕はこういう賑やかな所は好きだよ」
前世では身体が弱くて入退院を繰り返していたから賑やかさとは無縁だった。
だからこういう活気のある街は好きだ。
ミレーヌは僕の隣で果物を食べている。
僕も同じ果物を食べる。
瑞々しい甘さが口いっぱいに広がる。
前世で食べたミカンより甘みがあって美味しい。
僕が2個目の果実に手を伸ばした時、広場の反対側から悲鳴が聞こえてきた。
僕とミレーヌは急いで悲鳴のした方向へ走る。
そこには数人の男が一人の少女を取り囲んでいた。
少女は栗色の髪をした10歳くらいの女の子で、服は破れていて顔や身体に痣ができている。
男たちは剣を抜いて少女を威嚇していた。
少女は怯えていて周りに助けを求めるように周囲を見回すが誰も助けない。
それどころか当たり前のように傍観していた。
「どうしてみんな助けないんだ!?」
僕が叫ぶと少女を取り囲んでいた男たちが驚いたような顔をしたがそれも一瞬の事で、再び何も無かったように剣を身構えた。
僕が少女を助けに入ろうとするとブレストプレートを身に着けた兵士に手を掴まれた。
「やめておけ。あれはフミンの子だ」
その兵士は僕のわかるフレーベル語で話しかけてきた。
よく見ればブレストプレートアーマーも綺麗で手入れが行き届いていて、アーマーの下に着ている服の襟元に刺繍が施してある。
整った外見と流暢なフレーベル語を話すので、きっと外国人も相手にする上級兵士なのだろう。
「フミンってなんですか?」
「このアルスラン帝国の宗教を受け入れず、法や秩序を乱し病気を流行らせる民族だ。可哀そうだがあの子を助ける人はいないよ」
「じゃあこのまま見殺しですか!?」
「そんなのボク許せない!!」
そんな馬鹿な話があるか。
僕とミレーヌはそのまま男たちに威嚇されている少女を庇おうと駆けだす。
「おい待てって。ここにはここのやり方ってのがあるんだ」
後ろで兵士が何か言っているが気にしない。
僕とミレーヌはフミンの少女を庇うように男たちの前に立ちふさがった。
今の僕たちはヨロイを身に着けていない。
腰には護身用に青龍氷牙を身に着けているがそれだけなので、男たちに切りつけられたら応戦するしかない。
周りの人々が騒ぎ出し何かを叫んでいる。
きっと僕たちの行動に憤っているのだろう。
よくわからない言葉で罵られるが気にしない。
僕もミレーヌも剣は抜かないでおく。
剣を抜いたら最後、お互い血を流すことになるからだ。
僕の背中で震えている少女を庇うようにミレーヌが抱きしめると、少女は何かをぽつりと口にした。
多分お礼を言っているのだろう。
じりじりと男たちが剣を手に何かを叫んでいる。
多分邪魔をするなとか、その子をこちらに寄越せとか言っているのだろう。
僕とミレーヌは当然拒否する。
男たちは地面に唾を吐いた後、剣を振り落ろそうとした。
僕は当身を食らわせるべく拳を身構える。
一触即発の状態は数秒後に予想外の展開になった。
群衆と男たちがふらふらと身体を揺らしたあと倒れたのだ。
よく見ると全員眠っている。
「馬鹿何やってる!!」
「ユキナ、ミレーヌ、無事ですか!?」
クヌートとフェリシアの声が聞こえた。
二人が群衆にスリープ(眠りの魔法)をかけてくれたとわかった僕とミレーヌは、急いで少女の手を引きクヌートと
声の方を見ると路地裏からこっちへ来いというジェスチャーで二人が手を振っている。
僕とミレーヌはフミンの少女の手を引っ張って路地裏に逃げ込んだ。
路地裏は薄暗く不潔で臭かった。
あちこちにネズミが這い回り、表の世界とは別世界のようだ。
水はけも悪く水たまりが点在していて靴が濡れる。
群衆が目を覚ます前に出来るだけ遠くへ逃げないといけない。
「何がどうなってるのか説明してくれないか?」
クヌートが僕に事情を説明しろと言ってくる。
走りながらも息を切らさないのはクヌートとフェリシアが普段から身体を鍛えているからだ。
フミンの少女が限界近く咳き込むが今は我慢してもらうしかない。
「後で話すよ!!とにかくこの子を無事に保護しないと!!」
「わかりました。このまま裏路地を走れば町はずれに出ます。そこで事情を聞かせてください」
「わかったよ。後で話すね」
フェリシアにそう答えてあと、僕達は無言で走り続けて町はずれの貧民街にたどり着いた。
0
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる