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第12章 フミンの少女
第84話 イリヤル銀貨対クラン銀貨
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第84話 イリヤル銀貨対クラン銀貨
僕とミレーヌはセシルさんが手を回して用意してくれた宿屋へ向かった。
宿の一階は酒場になっていて荒くれた男たちが酒を飲んで騒いでいた。
みんな海に出れないから解雇されヤケになっているのだ。
かくいう僕たちもジョルジュ船長がくれた報酬と今までの貯金が無ければ、ああなっていたかもしれない。
「ただいまもどりました」
「みんな遅くなってごめんね」
僕とミレーヌが指定された部屋に入る。
そこは大部屋で6人一緒に泊まる事になる。
セシルさんの手腕でも大部屋しか借りられなかったのだ。
「お二人さんおかえり。座って飯でも食べようぜ」
そう言ってセシルさんが僕に薄いパンにはさまれたサンドイッチのようなものを渡してくれた。
前世で見たピタパンという中が空洞になっているパンに似ている。
食べ方も一緒で香辛料で味付けられた肉と野菜が入っていた。
食べると肉汁がピタパンに染み込んで大変美味しい。
ここは香辛料も肉も豊富で大変豊かな国だとわかる。
寄らば大樹の陰という言葉通り、アルスラン帝国って大樹に属していると関税の優遇や軍事費の削減などの要因で豊かになりやすい。
ここから帝国の中心部にある首都アストラハンは100万人を擁す西大陸最大の都市と言われている。
先々代皇帝の浪費癖や無理な遠征が祟って国力が低下したとはいえ世界帝国である事に変わりはなく、今も栄華を誇っていた。
それでも陰りは色濃く、官僚や軍部の腐敗が甚だしく貧富の差は開く一方で治安が悪化しているらしい。
閑話休題。
「それで今後の方針を決めないか?」
ハーフエルフのクヌートがピタパンを手づかみで食べながら言う。
クヌートは船内の劣悪な食事に辟易していたのか食欲旺盛だ。
ハーフエルフはエルフとは違いたんぱく質を肉から摂取しないといけないため、エルフから『肉食い』という別称で呼ばれている。
クヌートと妹のフェリシアは最近まで『肉食い』という蔑称にコンプレックスを抱いていたけど、僕たちと出会って一緒に旅をするうちにそのコンプレックスは消えたようだ。
ちなみにエルフは食べた果物などを胃の中で発行させ、たんぱく質として吸収しているらしい。
まるで牛みたいだと僕は思っている。
「ここだと魔王軍の情報があつまるとは思えないしな。やはり首都アストラハンへ向かうべきだろう」
そういって羊肉の串焼きを食べるシグレさん。
シグレさんは育ちが良いのでかぶりつくような食べ方はしないけど、干し肉や塩漬け肉ばかりだった船の食事に不満があったのは一緒の様子で肉と果物を食べている。
スカウトのセシルさんは貧民街の育ちなのでお腹に詰めれるだけ詰めるという食べ方をしている。
僕とミレーヌは由緒正しき平民で米に似たテフという穀物と魚で育ったので魚をメインに食べている。
アストラハンの魚料理はスパイスが効いているけど少し香辛料が過剰な気がした。
こうしてみると食べ方で育ちや個性がでるのが面白い。
「ボクはユキナと一緒なら何処でもいいよ」
そう言ってパンに野菜と魚をはさんだものを美味しそうに食べるミレーヌ。
僕はミレーヌの笑顔を見てホッとした。
先ほど厄介者扱いされて落ち込んでいたミレーヌは食事をして元気を取り戻したようだ。
単純な思考は冒険者にとって必須スキルだと思う。
くよくよしていたら命がいくつあっても足らない。
そのあと僕がジョルジュ船長の話をするとクヌートが開口一番ため息交じりに話し始める。
「まったくジョルジュというのは強欲な男だな。あえてミレーヌの事を勇者と言わせてもらうが、勇者が陸地で魔王軍と戦っている間に海上交易で儲けようというのだろう?俺も金は欲しいがそこまで強欲にはなれそうもないな」
案外クヌートは善良な商人になるかもしれない。
「ですが私たちが船に乗っていると海の魔物が活発化して船に被害が出るのは確実です。それにミレーヌさんが船に乗る前から被害は出ていたではありませんか」
フェリシアがそう言うとクヌートがフェリシアの頭を優しく撫でながら答える。
「それも織り込み済みだという事だよ。他の船なら危険でも俺たちが乗ってきたサ・セント号なら高速で逃げ切れる。つまりここアルスラン帝国とフレーベル王国の交易をジョルジュは独占できるという事だよ」
「つまり勇者ミレーヌさんの名前を囮に利用して自らの利益を得ようとしているのですね。なんて恥知らずなのでしょう」
普段は温厚なフェリシアも流石に怒った。
僕も怒っている。
僕は自分の恋人を金儲けの道具にされても怒らない程寛容じゃない。
僕達年少組が怒りに震えているのを見てセシルさんが僕たちをなだめる。
「ま、そのあたりはきっちりとジョルジュのおっさんから特別手当を貰うとしてだ。これからの事を考えようか。あたいは折角アルスラン帝国まで来たんだし、いずれ魔王とか闇とかを調べるならここにくる必要はあったから丁度いいと思うね。特別手当はここで流通しているアルスラン帝国のイリヤル銀貨じゃなくてシリカ国のクラン銀貨で貰っておくよ」
「それってどういう事ですか?」
「同じ銀貨って言っても銀の含有量が違うからね。同じ重さなら価値があるほうがいいに決まってるさね」
この時はそれほど気にしなかったけど、この銀貨の違いが決定的な分岐点になっている事に気が付くのは後になって気が付いた。
セシルさんは生まれと育ちが良ければ経済官僚か会社の社長に向いているかもしれない。
「まずは何日かこの街で休むとしよう。私もみんなも船旅で身体が参っているだろうし」
そう言って伸びをするシグレさんだ。
僕も船旅でお風呂に入っていないし身体を綺麗にしておかないと病気になってしまう。
「それじゃその間にあたいはジョルジュのおっさんからふんだくれるだけふんだくっておくよ。旅するのに一番必要なのは金だからさ」
「うむ。そのあたりは任せた。では今日はゆっくり休むとしよう」
シグレさんがそう言うと僕たちは久しぶりの陸地を楽しむべく食事を楽しむ。
翌日。
シグレさんとセシルさんは飲み足りないと言って酒場へと降りていき、クヌートとフェリシアは知識欲を満たすため露店巡りに出かける。
僕とミレーヌはお互いを求めあいたいという同じ気持ちだったけど6人部屋でSEXするわけにはいかず、街の散策に出かけた。
僕とミレーヌはセシルさんが手を回して用意してくれた宿屋へ向かった。
宿の一階は酒場になっていて荒くれた男たちが酒を飲んで騒いでいた。
みんな海に出れないから解雇されヤケになっているのだ。
かくいう僕たちもジョルジュ船長がくれた報酬と今までの貯金が無ければ、ああなっていたかもしれない。
「ただいまもどりました」
「みんな遅くなってごめんね」
僕とミレーヌが指定された部屋に入る。
そこは大部屋で6人一緒に泊まる事になる。
セシルさんの手腕でも大部屋しか借りられなかったのだ。
「お二人さんおかえり。座って飯でも食べようぜ」
そう言ってセシルさんが僕に薄いパンにはさまれたサンドイッチのようなものを渡してくれた。
前世で見たピタパンという中が空洞になっているパンに似ている。
食べ方も一緒で香辛料で味付けられた肉と野菜が入っていた。
食べると肉汁がピタパンに染み込んで大変美味しい。
ここは香辛料も肉も豊富で大変豊かな国だとわかる。
寄らば大樹の陰という言葉通り、アルスラン帝国って大樹に属していると関税の優遇や軍事費の削減などの要因で豊かになりやすい。
ここから帝国の中心部にある首都アストラハンは100万人を擁す西大陸最大の都市と言われている。
先々代皇帝の浪費癖や無理な遠征が祟って国力が低下したとはいえ世界帝国である事に変わりはなく、今も栄華を誇っていた。
それでも陰りは色濃く、官僚や軍部の腐敗が甚だしく貧富の差は開く一方で治安が悪化しているらしい。
閑話休題。
「それで今後の方針を決めないか?」
ハーフエルフのクヌートがピタパンを手づかみで食べながら言う。
クヌートは船内の劣悪な食事に辟易していたのか食欲旺盛だ。
ハーフエルフはエルフとは違いたんぱく質を肉から摂取しないといけないため、エルフから『肉食い』という別称で呼ばれている。
クヌートと妹のフェリシアは最近まで『肉食い』という蔑称にコンプレックスを抱いていたけど、僕たちと出会って一緒に旅をするうちにそのコンプレックスは消えたようだ。
ちなみにエルフは食べた果物などを胃の中で発行させ、たんぱく質として吸収しているらしい。
まるで牛みたいだと僕は思っている。
「ここだと魔王軍の情報があつまるとは思えないしな。やはり首都アストラハンへ向かうべきだろう」
そういって羊肉の串焼きを食べるシグレさん。
シグレさんは育ちが良いのでかぶりつくような食べ方はしないけど、干し肉や塩漬け肉ばかりだった船の食事に不満があったのは一緒の様子で肉と果物を食べている。
スカウトのセシルさんは貧民街の育ちなのでお腹に詰めれるだけ詰めるという食べ方をしている。
僕とミレーヌは由緒正しき平民で米に似たテフという穀物と魚で育ったので魚をメインに食べている。
アストラハンの魚料理はスパイスが効いているけど少し香辛料が過剰な気がした。
こうしてみると食べ方で育ちや個性がでるのが面白い。
「ボクはユキナと一緒なら何処でもいいよ」
そう言ってパンに野菜と魚をはさんだものを美味しそうに食べるミレーヌ。
僕はミレーヌの笑顔を見てホッとした。
先ほど厄介者扱いされて落ち込んでいたミレーヌは食事をして元気を取り戻したようだ。
単純な思考は冒険者にとって必須スキルだと思う。
くよくよしていたら命がいくつあっても足らない。
そのあと僕がジョルジュ船長の話をするとクヌートが開口一番ため息交じりに話し始める。
「まったくジョルジュというのは強欲な男だな。あえてミレーヌの事を勇者と言わせてもらうが、勇者が陸地で魔王軍と戦っている間に海上交易で儲けようというのだろう?俺も金は欲しいがそこまで強欲にはなれそうもないな」
案外クヌートは善良な商人になるかもしれない。
「ですが私たちが船に乗っていると海の魔物が活発化して船に被害が出るのは確実です。それにミレーヌさんが船に乗る前から被害は出ていたではありませんか」
フェリシアがそう言うとクヌートがフェリシアの頭を優しく撫でながら答える。
「それも織り込み済みだという事だよ。他の船なら危険でも俺たちが乗ってきたサ・セント号なら高速で逃げ切れる。つまりここアルスラン帝国とフレーベル王国の交易をジョルジュは独占できるという事だよ」
「つまり勇者ミレーヌさんの名前を囮に利用して自らの利益を得ようとしているのですね。なんて恥知らずなのでしょう」
普段は温厚なフェリシアも流石に怒った。
僕も怒っている。
僕は自分の恋人を金儲けの道具にされても怒らない程寛容じゃない。
僕達年少組が怒りに震えているのを見てセシルさんが僕たちをなだめる。
「ま、そのあたりはきっちりとジョルジュのおっさんから特別手当を貰うとしてだ。これからの事を考えようか。あたいは折角アルスラン帝国まで来たんだし、いずれ魔王とか闇とかを調べるならここにくる必要はあったから丁度いいと思うね。特別手当はここで流通しているアルスラン帝国のイリヤル銀貨じゃなくてシリカ国のクラン銀貨で貰っておくよ」
「それってどういう事ですか?」
「同じ銀貨って言っても銀の含有量が違うからね。同じ重さなら価値があるほうがいいに決まってるさね」
この時はそれほど気にしなかったけど、この銀貨の違いが決定的な分岐点になっている事に気が付くのは後になって気が付いた。
セシルさんは生まれと育ちが良ければ経済官僚か会社の社長に向いているかもしれない。
「まずは何日かこの街で休むとしよう。私もみんなも船旅で身体が参っているだろうし」
そう言って伸びをするシグレさんだ。
僕も船旅でお風呂に入っていないし身体を綺麗にしておかないと病気になってしまう。
「それじゃその間にあたいはジョルジュのおっさんからふんだくれるだけふんだくっておくよ。旅するのに一番必要なのは金だからさ」
「うむ。そのあたりは任せた。では今日はゆっくり休むとしよう」
シグレさんがそう言うと僕たちは久しぶりの陸地を楽しむべく食事を楽しむ。
翌日。
シグレさんとセシルさんは飲み足りないと言って酒場へと降りていき、クヌートとフェリシアは知識欲を満たすため露店巡りに出かける。
僕とミレーヌはお互いを求めあいたいという同じ気持ちだったけど6人部屋でSEXするわけにはいかず、街の散策に出かけた。
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