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第11章 船出
第79話 宴
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第79話 宴
シーサーペントとミレーヌは海中深くへと潜っていく。
ミレーヌは炎龍雷牙を手放さない。
水中で手放したら反撃の機会を失ってしまう。
ミレーヌ一人なら諦めていたかもしれない。
でもミレーヌは僕が助けてくれると信じているんだ。
海中は青龍氷牙の得意とする場所。
僕は不思議なことに海中なのに呼吸ができた。
僕が泳ぐとイルカのように高速でシーサーペントとミレーヌに追いつく。
ミレーヌは必死になって剣にしがみついていた。
だけど呼吸困難に陥ったミレーヌに長時間の海中は耐えられない。
シーサーペントは剣にしがみついたミレーヌを振り落とそうと激しく暴れまわる。
その度にミレーヌの身体が前後左右に激しく振られ、振り落とされそうになっていた。
「がぼがぼごば!!」
ミレーヌの顔が青ざめて剣から手を放そうとした瞬間、僕はミレーヌに追いつきその身体を支えてキスをして空気を送り込む。
気を失う寸前だったミレーヌはそれで息を吹き返した。
僕とミレーヌを青い球体の膜が覆うと、そこだけが空気に満たされる。
ミレーヌが海水を吐き出す。
僕は激しく咽たミレーヌの背中をさすって海水を吐き出させた。
「ユキナ。ボク、ユキナが助けに来てくれるって信じてたよ」
「もう大丈夫だよ。このまま溺れたふりをしよう」
その間にもシーサーペントが激しく身体を振りミレーヌと僕を振り落とそうとするが、僕とミレーヌが空気の膜に覆われている事に気が付いていないようだ。
僕とミレーヌが剣の柄を握って振り落とされないようにしがみついていると暫くしてシーサーペントは動きを止めた。
ミレーヌが溺れて死んだか、生きていれば止めを刺そうと探すように身体を振っている。
水中ではミレーヌは戦えない。
呼吸こそできるけど水圧が激しくて身動きが取れないのだ。
僕がやるしかない。
「ミレーヌはここにいて。すぐに倒してくるよ」
「待ってユキナ。ボクのエナジーを受け取って」
そう言って僕にキスをしてくれるミレーヌ。
その口づけと共に、ミレーヌの持つ勇者のエナジーが僕に注がれる。
僕の身体が青い光に包まれた。
「ありがとうミレーヌ。少しだけ勇者のエナジーを借りるね」
「ユキナ。ボクユキナの事信じてるから」
僕はミレーヌをもう一度抱きしめたあと僕たちを包む膜を飛び出し海中へと身を投じた。
あの膜の中ならミレーヌは10分くらい呼吸しなくても大丈夫だろう。
「どこに行った勇者ミレーヌ」
シーサーペントは水中に投げ出されたと思っているミレーヌを探している。
その目の前に僕が泳いで近寄ってきたのを見つけてシーサーペントが水中で吠えた。
「貴様!!勇者ミレーヌはどこに行った!?」
「お前なんかに渡す訳ないだろ。水中へ身を投じて勝ったと油断したお前の負けだ!!」
シーサーペントの言葉に答えながら僕は青龍氷牙を構える。
刀身は白銀色に輝いており柄の部分には青い宝石が埋め込まれている僕の相棒。
その刀身が激しい氷の刃となって巨大化していく。
「うおおおおおっ!!」
その氷の刃でシーサーペントを切り裂く。
「ぎゃあああああ!!」
シーサーペントは巨大な氷の刃に切りつけられ、海中に大量の血と肉を飛び散らせた。
「貴様は何者だ!?」
「勇者ミレーヌと共に歩き、添い遂げる者だ!!」
シーサーペントが痛みに身体をのたうちさせながら海中で悶え苦しんだ。
「おのれ!!おのれえええっ!!」
僕の持つ巨大な氷の刃がシーサーペントの頭から尾まで食い込んだ。
そのまま氷の刃を振り下ろす。
まるでウナギを裁くようにシーサーペントは縦から真っ二つに腹開きで切り割かれた。
「ぎゃああああ!!おのれ勇者ミレーヌ!!だが貴様に逃げ場はないぞ!!」
水中を激しく噴き出した赤い血と内蔵で汚してシーサーペントは絶命した。
僕はそのままミレーヌの所へと急いで泳いでいく。
そしてミレーヌの剣の周りにこびりついた肉を切り落としひっぺがした。
僕はもう一度ミレーヌにキスをする。
水の膜で包まれた僕とミレーヌは二人で海面へと向かった。
氷に凍らされた海面を這い上がると甲板から歓声があがる。
僕たちの後ろはシーサーペントの血で真っ赤に染まっていた。
このままだと血なまぐさくなるので慌てて海面から離れた。
ジョルジュ船長が氷の海面を駆けてくる。
死ぬ寸前だった自分たちを救った僕たちを驚きの目で見つめていた。
「あんたら何者だ?いや今はそれより船の修理だな。この氷はいつになったら溶けるんだ?」
「僕が命じるとすぐに溶かせます」
「わかった。助かったよありがとう」
そう言ってジョルジュ船長は手早く修理を命じた。
サン・セント号は酷い有様だった。
船体の横に大きな穴が開き、今にも沈没しそうだったからだ。
このまま航海を続けたら間違いなく沈没するだろう。
「すまないがこの穴を氷で塞いでくれないか?応急修理じゃ間に合わない」
「わかりました」
こうしてサン・セント号は船腹に開いた穴を僕の氷で塞いだ。
そして僕は思いつく。
「青龍氷牙。真水は出せる?」
(無論だ)
「ミレーヌ。赤龍雷牙でお風呂を沸かそう」
「それすごくいいアイデアだよ♪」
空いた樽を真水で満たし温める。
甲板をを汚さないように、みんなで凍った海面へ出て交代で風呂に入った。
汚水はそのまま海中に流す。
男女問わず垢まみれの身体を清潔にする。
そのあとみんなで温かい食事を共にする。
ジョルジュ船長も秘蔵のワインとハムとパンを出して皆に振舞った。
船員たちは歓声を上げて、清潔になった身体と豊かな食事に酔いどれた。
こうして僕達と船員は海上ではありえないお風呂に入る事ができ敵襲の恐怖と緊張を少し和らげたのだった。
シーサーペントとミレーヌは海中深くへと潜っていく。
ミレーヌは炎龍雷牙を手放さない。
水中で手放したら反撃の機会を失ってしまう。
ミレーヌ一人なら諦めていたかもしれない。
でもミレーヌは僕が助けてくれると信じているんだ。
海中は青龍氷牙の得意とする場所。
僕は不思議なことに海中なのに呼吸ができた。
僕が泳ぐとイルカのように高速でシーサーペントとミレーヌに追いつく。
ミレーヌは必死になって剣にしがみついていた。
だけど呼吸困難に陥ったミレーヌに長時間の海中は耐えられない。
シーサーペントは剣にしがみついたミレーヌを振り落とそうと激しく暴れまわる。
その度にミレーヌの身体が前後左右に激しく振られ、振り落とされそうになっていた。
「がぼがぼごば!!」
ミレーヌの顔が青ざめて剣から手を放そうとした瞬間、僕はミレーヌに追いつきその身体を支えてキスをして空気を送り込む。
気を失う寸前だったミレーヌはそれで息を吹き返した。
僕とミレーヌを青い球体の膜が覆うと、そこだけが空気に満たされる。
ミレーヌが海水を吐き出す。
僕は激しく咽たミレーヌの背中をさすって海水を吐き出させた。
「ユキナ。ボク、ユキナが助けに来てくれるって信じてたよ」
「もう大丈夫だよ。このまま溺れたふりをしよう」
その間にもシーサーペントが激しく身体を振りミレーヌと僕を振り落とそうとするが、僕とミレーヌが空気の膜に覆われている事に気が付いていないようだ。
僕とミレーヌが剣の柄を握って振り落とされないようにしがみついていると暫くしてシーサーペントは動きを止めた。
ミレーヌが溺れて死んだか、生きていれば止めを刺そうと探すように身体を振っている。
水中ではミレーヌは戦えない。
呼吸こそできるけど水圧が激しくて身動きが取れないのだ。
僕がやるしかない。
「ミレーヌはここにいて。すぐに倒してくるよ」
「待ってユキナ。ボクのエナジーを受け取って」
そう言って僕にキスをしてくれるミレーヌ。
その口づけと共に、ミレーヌの持つ勇者のエナジーが僕に注がれる。
僕の身体が青い光に包まれた。
「ありがとうミレーヌ。少しだけ勇者のエナジーを借りるね」
「ユキナ。ボクユキナの事信じてるから」
僕はミレーヌをもう一度抱きしめたあと僕たちを包む膜を飛び出し海中へと身を投じた。
あの膜の中ならミレーヌは10分くらい呼吸しなくても大丈夫だろう。
「どこに行った勇者ミレーヌ」
シーサーペントは水中に投げ出されたと思っているミレーヌを探している。
その目の前に僕が泳いで近寄ってきたのを見つけてシーサーペントが水中で吠えた。
「貴様!!勇者ミレーヌはどこに行った!?」
「お前なんかに渡す訳ないだろ。水中へ身を投じて勝ったと油断したお前の負けだ!!」
シーサーペントの言葉に答えながら僕は青龍氷牙を構える。
刀身は白銀色に輝いており柄の部分には青い宝石が埋め込まれている僕の相棒。
その刀身が激しい氷の刃となって巨大化していく。
「うおおおおおっ!!」
その氷の刃でシーサーペントを切り裂く。
「ぎゃあああああ!!」
シーサーペントは巨大な氷の刃に切りつけられ、海中に大量の血と肉を飛び散らせた。
「貴様は何者だ!?」
「勇者ミレーヌと共に歩き、添い遂げる者だ!!」
シーサーペントが痛みに身体をのたうちさせながら海中で悶え苦しんだ。
「おのれ!!おのれえええっ!!」
僕の持つ巨大な氷の刃がシーサーペントの頭から尾まで食い込んだ。
そのまま氷の刃を振り下ろす。
まるでウナギを裁くようにシーサーペントは縦から真っ二つに腹開きで切り割かれた。
「ぎゃああああ!!おのれ勇者ミレーヌ!!だが貴様に逃げ場はないぞ!!」
水中を激しく噴き出した赤い血と内蔵で汚してシーサーペントは絶命した。
僕はそのままミレーヌの所へと急いで泳いでいく。
そしてミレーヌの剣の周りにこびりついた肉を切り落としひっぺがした。
僕はもう一度ミレーヌにキスをする。
水の膜で包まれた僕とミレーヌは二人で海面へと向かった。
氷に凍らされた海面を這い上がると甲板から歓声があがる。
僕たちの後ろはシーサーペントの血で真っ赤に染まっていた。
このままだと血なまぐさくなるので慌てて海面から離れた。
ジョルジュ船長が氷の海面を駆けてくる。
死ぬ寸前だった自分たちを救った僕たちを驚きの目で見つめていた。
「あんたら何者だ?いや今はそれより船の修理だな。この氷はいつになったら溶けるんだ?」
「僕が命じるとすぐに溶かせます」
「わかった。助かったよありがとう」
そう言ってジョルジュ船長は手早く修理を命じた。
サン・セント号は酷い有様だった。
船体の横に大きな穴が開き、今にも沈没しそうだったからだ。
このまま航海を続けたら間違いなく沈没するだろう。
「すまないがこの穴を氷で塞いでくれないか?応急修理じゃ間に合わない」
「わかりました」
こうしてサン・セント号は船腹に開いた穴を僕の氷で塞いだ。
そして僕は思いつく。
「青龍氷牙。真水は出せる?」
(無論だ)
「ミレーヌ。赤龍雷牙でお風呂を沸かそう」
「それすごくいいアイデアだよ♪」
空いた樽を真水で満たし温める。
甲板をを汚さないように、みんなで凍った海面へ出て交代で風呂に入った。
汚水はそのまま海中に流す。
男女問わず垢まみれの身体を清潔にする。
そのあとみんなで温かい食事を共にする。
ジョルジュ船長も秘蔵のワインとハムとパンを出して皆に振舞った。
船員たちは歓声を上げて、清潔になった身体と豊かな食事に酔いどれた。
こうして僕達と船員は海上ではありえないお風呂に入る事ができ敵襲の恐怖と緊張を少し和らげたのだった。
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