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第10章 僕とボクの行き違い
第63話 勇者の休日
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第63話 勇者の休日
朝起きたあと僕の好きなティカというコーヒーみたいな見た目と味の飲み物とミレーヌの好きな香草茶を飲みながら朝を過ごす。
宿の一階酒場で朝食は食べれるけど折角だから朝の街を一緒に歩く事にした。
僕は白いシャツと紺のロングパンツの上から鹿革のベストを羽織る少し贅沢な恰好。
ミレーヌは僕が絶賛した胸元を強調した青いワンピースを着てくれた。
「ミレーヌにワンピースって本当によく似合うよね」
「ユキナが喜んでくれてボクも嬉しいよ」
「うん。可愛すぎて惚れ直しそう」
「お世辞でも嬉しいよ♪」
いやいやお世辞抜きで可愛すぎだから。
今のミレーヌを見たらナンパ男が列を作るって。
もちろんそんな邪魔が入らないようにミレーヌと手を繋いで朝の街を歩く。
平日の朝にこんな格好で仕事もせず、ぶらぶらしてるのは金持ちくらいだろう。
冒険者というのは名前は知られていても厄介者だから、金持ちの服装でもしておかないと不審者扱いされてしまうのだ。
それに冒険者はまとまったお金が出来ると男女問わず娼館に寝泊まりし、朝から酒場で飲んでいるという生活を行うのが常だ。
僕とミレーヌのように街中で遊ぶ者は少ない。
「わあ、綺麗だね」
「ミレーヌのほうが綺麗だよ」
「ボクが綺麗なのはユキナに愛されてるからだよ」
僕とミレーヌは首都フレーベルの街に差し込む朝日を見上げる。
朝日が首都の街並みを照らしていて街の中心部にある城がよく映えた。
朝は朝市で買い物をして広場の噴水を見ながら朝ごはんを食べる事にする。
広場でテーブルと椅子を借りてから朝市で食べ物と飲み物を買いに行く。
「この果物美味しいね」
「うん。初めて食べるけど美味しいね」
僕はミレーヌと一緒に朝市で購入したヤカという見た目も味も洋梨そっくりの果物を食べている。
瑞々しく甘いヤカは疲れた身体に染み入るようだ。
旅の途中だと朝はチーズと固焼きパンという保存食中心になるから街や村にいるときは果物をよく食べる。
栄養バランスも味も果物の方がいいしね。
広場では吟遊詩人がドラゴンに攫われた王女様を助け出す勇者の話を歌っていた。
僕の4歳下の妹、ミオは吟遊詩人に憧れている。
あの子もいずれはこうやって誰かの前で歌うのだろうか。
もう一人の妹で長女のシズクはまだ13歳だが実家の酒造業を継ぐ事が確定したので今頃喜んでいるだろう。
酒造業は花形産業なので入り婿希望者が殺到しているかもしれない。
二人の妹の事を考えると幸せになってほしいと思う。
冒険者は家族がいるほうが珍しい。
冒険者になる人は大体故郷から追い出されたとか、親に捨てられた捨て子とかが多く自分の故郷を持っている人の方が少ない。
家も家族もある僕とミレーヌは変わり者だと言える。
ヤカと一緒に新鮮な卵で作られたオムレツやミートパイや鶏肉の串焼きなどを買い込んだ。
飲み物は一度ミレーヌの飲んでる香草茶を飲んでみたかったので露店で買ってみる。
ミルクと砂糖がたっぷり入っていたのは誤算だった。
朝から働く人が朝市で朝食を食べるので糖分たっぷり入ってる。
「よくこんな甘い物飲めるね」
「ボクの飲んでるのはこういうのじゃなくて、お父さんがくれた配合表で配合してくれるものだもん」
ミレーヌのお父さんは僕の故郷で外科医をしている。
亡くなったミレーヌのお母さんマリーナさんの死因が癌だったので予防も兼ねているそうだ。
と言っても香草茶なので香りが高く人気がある。
ミレーヌのお父さんのレシピは香草茶に薬効成分のある薬草が配合されていて、ミレーヌは余分に用意して旅先でよく飲んでいる。
このお茶と揚げたパンがフレーベル国の代表的な朝食だ。
僕とミレーヌのテーブルの上には果物やオムレツや鶏肉の串焼きなどが並んでいるのでかなり贅沢な食事だと思う。
広場のあちこちから視線を感じるのは、ミレーヌの可愛らしさのせいだけで無く豪華な食事にもあるだろう。
貴族の子弟が朝市で食事を食べる事は無いので、裕福な商家の跡継ぎと遊び相手の女の子に見られているかもしれない。
オムレツを木のフォークで切り分けると、中からとろっとした丁度いい焼き加減の卵が現れる。
中には牛肉が詰められていて牛肉とミートパイがだぶってしまった。
でもミレーヌがニコニコしながら美味しそうに食べているからいいとしよう。
ミレーヌはご飯の時本当に幸せそうな笑顔になる。
「ユキナどうかした?」
僕がミレーヌの可愛い食事姿にみとれていると、視線に気が付いたミレーヌが口元にオムレツの卵をつけながら笑いかけて来る。
「ううん。僕の恋人が可愛すぎて見とれてただけ」
「もうっ。そんな恥ずかしい事普通は言わないよ」
「だって本当に可愛いもん。恋人が可愛すぎていつまでも見ていたい」
「うう~ユキナがそんな事言うから照れるじゃないかあ」
そんな会話が周りに聞こえたのか視線が険しくなる。
朝からお客に歌ってる吟遊詩人の英雄譚を聞き贅沢な朝食を楽しんだ。
その後も朝市を巡って遊んでいると広場に絵描きさん達が集まってくる。
フレーベル国は美術も盛んなので将来の有名画家を目指す画家の卵たちが多いのだろう。
「折角だから二人の絵でも書いてもらわない?」
「うん♪」
僕達は絵描きさんのなかでも少し年配の人に絵を書いてもらう事にする。
愛想のいいひとで快く承諾してくれたが少し値が張る。
相場がわからないし画家の勉強を積んでるから技術料だと思って支払うと早速書いてくれた。
僕とミレーヌが腕を組んで見つめあうという構図。
この姿勢のまま一時間くらい動かないのは少し大変だったけど。
「うわあ。ボクたちこんな風に見えてるんだ」
鏡で自分たちの姿を見る事は出来るけど、絵描きさん視点だとまた違って見えるらしい。
サービスなのかミレーヌはいつもより美しく、僕は美男子に書いてくれた。
その絵を受け取って少し多めに料金を支払うと笑みを浮かべて丁寧に包んで渡してくれた。
家を買ったら応接間の額に入れて飾っておきたい気分。
広場の噴水の前には魔法使い見習いの人がシャボン玉みたいな光の玉を宙に浮かべたりしている。
その魔法の動きに合わせるように、笛や小さくて丸いカスタネットみたいな打楽器やギターみたいな楽器を持った人たちが小さな楽団を作っていた。
演目は勇者に救われた姫が勇者に贈った愛の歌。
子供の頃よく聞いた歌でフレーベル国の子供ならみんな知っている。
伝説の勇者は選ばれた者だけが持つ聖剣でドラゴンに囚われた姫を救い出す。
姫と勇者は恋に落ち生まれた子孫がこの国の王家だと言われている。
建国物語通りなら伝説の勇者は人々の災いを退治して人知れず旅に出る。
僕は残された姫と子供が可愛そうだと思うし友達もみんな同意見だ。
だけど勇者は真の闇という存在を倒す為、旅を続ける必要があったと言われている。
真の闇とはなんだろう?
ミレーヌのお母さんマリータさんも真の闇を追っていたのだろうか?
もしかしてミレーヌも真の闇という存在を追う事になるのだろうか?
子供も大人もおとぎ話だと思っている伝説の勇者。
その伝説の勇者がワンピースを着て僕の隣にいる。
僕とミレーヌはこの広場とは違う非現実な世界にいる気がしていた。
朝起きたあと僕の好きなティカというコーヒーみたいな見た目と味の飲み物とミレーヌの好きな香草茶を飲みながら朝を過ごす。
宿の一階酒場で朝食は食べれるけど折角だから朝の街を一緒に歩く事にした。
僕は白いシャツと紺のロングパンツの上から鹿革のベストを羽織る少し贅沢な恰好。
ミレーヌは僕が絶賛した胸元を強調した青いワンピースを着てくれた。
「ミレーヌにワンピースって本当によく似合うよね」
「ユキナが喜んでくれてボクも嬉しいよ」
「うん。可愛すぎて惚れ直しそう」
「お世辞でも嬉しいよ♪」
いやいやお世辞抜きで可愛すぎだから。
今のミレーヌを見たらナンパ男が列を作るって。
もちろんそんな邪魔が入らないようにミレーヌと手を繋いで朝の街を歩く。
平日の朝にこんな格好で仕事もせず、ぶらぶらしてるのは金持ちくらいだろう。
冒険者というのは名前は知られていても厄介者だから、金持ちの服装でもしておかないと不審者扱いされてしまうのだ。
それに冒険者はまとまったお金が出来ると男女問わず娼館に寝泊まりし、朝から酒場で飲んでいるという生活を行うのが常だ。
僕とミレーヌのように街中で遊ぶ者は少ない。
「わあ、綺麗だね」
「ミレーヌのほうが綺麗だよ」
「ボクが綺麗なのはユキナに愛されてるからだよ」
僕とミレーヌは首都フレーベルの街に差し込む朝日を見上げる。
朝日が首都の街並みを照らしていて街の中心部にある城がよく映えた。
朝は朝市で買い物をして広場の噴水を見ながら朝ごはんを食べる事にする。
広場でテーブルと椅子を借りてから朝市で食べ物と飲み物を買いに行く。
「この果物美味しいね」
「うん。初めて食べるけど美味しいね」
僕はミレーヌと一緒に朝市で購入したヤカという見た目も味も洋梨そっくりの果物を食べている。
瑞々しく甘いヤカは疲れた身体に染み入るようだ。
旅の途中だと朝はチーズと固焼きパンという保存食中心になるから街や村にいるときは果物をよく食べる。
栄養バランスも味も果物の方がいいしね。
広場では吟遊詩人がドラゴンに攫われた王女様を助け出す勇者の話を歌っていた。
僕の4歳下の妹、ミオは吟遊詩人に憧れている。
あの子もいずれはこうやって誰かの前で歌うのだろうか。
もう一人の妹で長女のシズクはまだ13歳だが実家の酒造業を継ぐ事が確定したので今頃喜んでいるだろう。
酒造業は花形産業なので入り婿希望者が殺到しているかもしれない。
二人の妹の事を考えると幸せになってほしいと思う。
冒険者は家族がいるほうが珍しい。
冒険者になる人は大体故郷から追い出されたとか、親に捨てられた捨て子とかが多く自分の故郷を持っている人の方が少ない。
家も家族もある僕とミレーヌは変わり者だと言える。
ヤカと一緒に新鮮な卵で作られたオムレツやミートパイや鶏肉の串焼きなどを買い込んだ。
飲み物は一度ミレーヌの飲んでる香草茶を飲んでみたかったので露店で買ってみる。
ミルクと砂糖がたっぷり入っていたのは誤算だった。
朝から働く人が朝市で朝食を食べるので糖分たっぷり入ってる。
「よくこんな甘い物飲めるね」
「ボクの飲んでるのはこういうのじゃなくて、お父さんがくれた配合表で配合してくれるものだもん」
ミレーヌのお父さんは僕の故郷で外科医をしている。
亡くなったミレーヌのお母さんマリーナさんの死因が癌だったので予防も兼ねているそうだ。
と言っても香草茶なので香りが高く人気がある。
ミレーヌのお父さんのレシピは香草茶に薬効成分のある薬草が配合されていて、ミレーヌは余分に用意して旅先でよく飲んでいる。
このお茶と揚げたパンがフレーベル国の代表的な朝食だ。
僕とミレーヌのテーブルの上には果物やオムレツや鶏肉の串焼きなどが並んでいるのでかなり贅沢な食事だと思う。
広場のあちこちから視線を感じるのは、ミレーヌの可愛らしさのせいだけで無く豪華な食事にもあるだろう。
貴族の子弟が朝市で食事を食べる事は無いので、裕福な商家の跡継ぎと遊び相手の女の子に見られているかもしれない。
オムレツを木のフォークで切り分けると、中からとろっとした丁度いい焼き加減の卵が現れる。
中には牛肉が詰められていて牛肉とミートパイがだぶってしまった。
でもミレーヌがニコニコしながら美味しそうに食べているからいいとしよう。
ミレーヌはご飯の時本当に幸せそうな笑顔になる。
「ユキナどうかした?」
僕がミレーヌの可愛い食事姿にみとれていると、視線に気が付いたミレーヌが口元にオムレツの卵をつけながら笑いかけて来る。
「ううん。僕の恋人が可愛すぎて見とれてただけ」
「もうっ。そんな恥ずかしい事普通は言わないよ」
「だって本当に可愛いもん。恋人が可愛すぎていつまでも見ていたい」
「うう~ユキナがそんな事言うから照れるじゃないかあ」
そんな会話が周りに聞こえたのか視線が険しくなる。
朝からお客に歌ってる吟遊詩人の英雄譚を聞き贅沢な朝食を楽しんだ。
その後も朝市を巡って遊んでいると広場に絵描きさん達が集まってくる。
フレーベル国は美術も盛んなので将来の有名画家を目指す画家の卵たちが多いのだろう。
「折角だから二人の絵でも書いてもらわない?」
「うん♪」
僕達は絵描きさんのなかでも少し年配の人に絵を書いてもらう事にする。
愛想のいいひとで快く承諾してくれたが少し値が張る。
相場がわからないし画家の勉強を積んでるから技術料だと思って支払うと早速書いてくれた。
僕とミレーヌが腕を組んで見つめあうという構図。
この姿勢のまま一時間くらい動かないのは少し大変だったけど。
「うわあ。ボクたちこんな風に見えてるんだ」
鏡で自分たちの姿を見る事は出来るけど、絵描きさん視点だとまた違って見えるらしい。
サービスなのかミレーヌはいつもより美しく、僕は美男子に書いてくれた。
その絵を受け取って少し多めに料金を支払うと笑みを浮かべて丁寧に包んで渡してくれた。
家を買ったら応接間の額に入れて飾っておきたい気分。
広場の噴水の前には魔法使い見習いの人がシャボン玉みたいな光の玉を宙に浮かべたりしている。
その魔法の動きに合わせるように、笛や小さくて丸いカスタネットみたいな打楽器やギターみたいな楽器を持った人たちが小さな楽団を作っていた。
演目は勇者に救われた姫が勇者に贈った愛の歌。
子供の頃よく聞いた歌でフレーベル国の子供ならみんな知っている。
伝説の勇者は選ばれた者だけが持つ聖剣でドラゴンに囚われた姫を救い出す。
姫と勇者は恋に落ち生まれた子孫がこの国の王家だと言われている。
建国物語通りなら伝説の勇者は人々の災いを退治して人知れず旅に出る。
僕は残された姫と子供が可愛そうだと思うし友達もみんな同意見だ。
だけど勇者は真の闇という存在を倒す為、旅を続ける必要があったと言われている。
真の闇とはなんだろう?
ミレーヌのお母さんマリータさんも真の闇を追っていたのだろうか?
もしかしてミレーヌも真の闇という存在を追う事になるのだろうか?
子供も大人もおとぎ話だと思っている伝説の勇者。
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