僕とボクっ娘勇者の異世界ファンタジー純愛和姦冒険物語~転生した僕は恋人のボクっ娘勇者と幸せラブラブSEXしながら魔王を倒して世界を救います~

屠龍

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第7章 オーガの罠

第43話 クヌートの笑顔

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 第43話 クヌートの笑顔
 
 ルクス城の比較的新しい外壁の内側にある街。
 つまり拡大するルクス城でもっとも余所者が入りやすい街区の宿で一泊したあと、僕達はオーガが目撃された村へと旅立った。

 その村へはニーノという小麦に似た穀物の受け取りに向かう行商人の荷馬車に便乗させてもらう事にした。
 帰りの荷馬車はニーノが満載なので僕達は歩きになる。
 重い鎧を着て歩くのは堪えるし、可能な限り体力の消耗は避けたい。
 おかげで旅路はかなり楽になった。
 勿論報酬は荷馬車の護衛という形で払う。

 道すがら行商人の話によるとルクス領内には最近までゴブリンの群れが出没していたそうだ。
 その為、普段は街道を歩く人がまばらだったらしいのだが今は違うと教えてくれた。
 ここでも先の戦争で敗残兵になったゴブリンがいたが、ここは冒険者ではなく城の兵士が駆逐したらしい。
 堅固な城塞都市を形成するだけあって兵士の練度が高いのと、交易都市として交易路を守るという二重の理由があれば領主もゴブリン退治に本腰を入れるらしい。

 荷馬車の護衛はあくまで念のためで行きはそれほど荷物が無いから乗せてもらえたという面が大きい。
 村は自給自足が基本なので、行商人が運ぶ荷物は村で生産しない鍋や鎌や釘などの鉄製品が主な交易品になる。
 塩など儲かる商品もあるが、塩は塩商人という領主お抱えの専売商人が一手に握っているので行商人が扱うと死刑になる。
 
 「俺たちにはなかなか儲けが来ないのさ。だからこの商品を確実に売らないといけない」
 
 「大変なんですね」

 「俺たちの当面の目的は塩商人になる事さ。その為には献金が欠かせない。塩商人になって儲けるか市民権を買ってルクスに店を開くかどっちかだな」
 
 また市民権の話になった。
 元々故郷の市民権を持ってる僕とミレーヌの事を話したら馬鹿者扱いされるだろうな。
 そうやって朝から馬車に乗せて貰って夕方には依頼のあったホレ村にたどり着いた。
 豊かに実ったニーノを見ながら僕は収穫の秋の風景に目を細める。
 行商人とわかれてホレ村の中に歩いて入ろうとしたとき、クヌートが僕達を手で制する。
 
 「どうしたんですか?」
  
 「おかしいと思わないか?」
 
 「何がですか?」
 
 「収穫の季節だというのに刈り取りの指揮者がいない」

 この異世界フォーチュリアでは刈り入れの時は村長など村の顔役が、刈り入れの時に農民を指揮して刈り入れを行う風習がある。
 前世でも歌を歌いながら刈り入れる事はあるが、この世界ではそれに指揮者が棒を振ってリズムを合わせるのだ。
 それがいないなんておかしい。
 それに村人の数も少ない。
 
 僕は刈り入れを行っている40代くらいの村の男性に話をする。
 村の男性は貧しい農民のようで継ぎ接ぎのあるズボンを履いて、固そうな革のチュニックを着ていた。
 靴は革靴だが泥で汚れておりズボンから外れないように紐で縛っている。
 華美とは縁遠い質実剛健な仕事の服装。
 異世界フォーチュリアでは新しい服はなかなか作れないからお下がりを継ぎ接ぎして着るのが当たり前になっている。
 よく見ると畑のそばで5歳くらいの女の子が遊んでいるが、女の子も大人用のシャツをズボン抜きで着せられており子供服なんて贅沢とは無縁のようだ。
 
 「どうして刈り入れの歌を歌っていないんですか?」

 「村長や皆が流行り病で寝込んじまってな。それはいいがあんたらは誰だい?」
 
 「僕達はオーガ退治に来た冒険者です」
 
 「おお待っておったよ。わしが依頼したシムという者じゃ。オーガの発見と同じころに流行り病が発生してな。何人も流行り病で死んで皆おびえておる」
 
 「そうですか。安心してください、僕達がオーガを退治して不安を取り除きます」
 
 「それは頼もしい。村長の流行り病がうつるといけないから儂が代わりに説明しよう。こっちにきなされ」
 
 そう言ってシムさんの案内でホレ村の広場へと向かう。
 広場といっても只の開けた土地で、比較的裕福そうな農民の家が並ぶくらいだ。
 そこにある掲示板に村の近くの地図が貼りだしてあってそこで説明をうける。
 
 「ここがうちのホレ村の場所じゃ。森の奥でオーガを見かけた場所はこの辺りじゃな。そこの小道を10分ほど歩いていくと小さな沢がある。そこには森の動物たちが水を飲みにくるから獣道があるんじゃ。その獣道を入って4時間ほど歩いた場所じゃよ」
 
 「随分近いんですね」

 「だから皆怯えておる。人間の足で4時間なら森の妖魔なら2時間かからんじゃろう。いつ襲われるかわからんのでな」
 
 確かにこの距離なら今夜襲ってきても不思議はない。
 村長や他の村人が流行り病で無ければ、冒険者や兵士が安全を確保する為に一時的にホレ村から離れるという事も出来たのだろうが。
 早く不安を取り除きたいがもうすぐ日が暮れる。
 いつもならホレ村に一晩泊まって朝に動くのだけど。
 
 「みんな。今から森に入りたいけど駄目かな?」
 
 僕はパーティのみんなにそう聞いてみる。
 
 「今からだと目的地につくのは夜中になる。得策とは言えないな」
 
 シグレさんの意見にセシルさんも頷く。
 確かに夜行性の妖魔が潜む夜の森に入り込むのは避けたい。
 ただ時間がないのも事実。
 
 「ボクも反対。夜中に森の中なんて歩いたら方角がわからないし、足を踏み外すかもしれないよ」
 
 いつもは僕の意見に賛同してくれる事が多いミレーヌだけど今回はやはり反対のようだ。
 
 「いや案外いい案かもしれないぞ。奴らは夜行性だからこちらが夜に仕掛けて来るとは思わないだろう」
 
 そう言って賛同してくれたのはクヌートだ。
 意外な人から賛成されたのでちょっと驚いた。
 
 「皆さんは夜の闇と足元がおぼつかない事が不安なのですよね。これならどうでしょう」
 
 そう言うとフェリシアが持っていた杖を軽く振る。
 すると杖の先から小さな光の玉が現れ足元の地面へゆっくりと着地する。
 その光が消えた瞬間、可愛らしい子供の黒猫が現れた。
 
 「か、かわいい~っ」
 
 そう言ってミレーヌが子猫を抱き上げる。
 ミレーヌは猫が大好きなんだ。
 
 「この子の目を借ります。夜でもちゃんと周りが見えますよ」
 
 魔法って凄い。
 てっきり炎の弾とか物理的に攻撃する魔法を思い浮かべがちだけど、こういう応用もできるんだ。
 黒猫を抱き上げて喜ぶミレーヌとそれを見つめて微笑むフェリシア。
 その光景を見てクヌートも嬉しそうに笑みを浮かべていた。
 
 (クヌートってこんな笑顔も見せるんだ)
 
 多分フェリシアにだけ見せる笑顔だろう。
 いつかもっと親しくなった時、僕達にもこんな笑みを見せてくれるんだろうか。
 そのくらい仲良くなれればいいのにと僕は思った。
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