22 / 103
第4章 ゴブリン退治
第22話 森の中へ
しおりを挟む
第22話 森の中へ
しばらく歩くとカク村の人家が遠くなっていき見えなくなった。
更に森の奥に分け入ってから一時間ほど獣道を歩く。。
ここから先はゴブリンが隠れ住んでいると思われる領域になるので注意が必要だそうだ。
村長さんから貰った地図を片手に森へ入る。
落葉樹の生い茂る森の中は木々が多く、光が届きにくい場所が多いためか薄暗い。
足元を確認しながら歩かないと木の根や石に足をかけ転ぶかもしれない。
重い鎧を着たままこけたりしたら足を挫くだけではすまない。
こんな森の中で足手まといになりたくはない。
僕とミレーヌも子供の頃から森や湖で遊んだりしてきたから山道は得意だけど、シグレさんとセシルさんのように鎧を着ての行軍に慣れてはいない。
置いていかれないように付いていくので必死だ。
ブーツには滑り止めが付いているが万が一、靴擦れとかしないように注意しないと。
戦闘中に何かあったら大変だからね。
「奴らは音と匂いに敏感だ。森の中で襲われたらあちらの方が有利だという事を忘れるな。それと深追いは禁物だ。必ず待ち伏せがある」
出発前にシグレさんに注意された事を思い出す。
森の中と洞窟のように暗い場所はゴブリンの方が長けている。
ゴブリン一匹一匹は弱いが戦い方を心得ているホブゴブリンもいるらしい。
ホブゴブリンとは僕が初陣で戦った大きなゴブリンで強い。
あの時手元に長槍が落ちてなく、運よく胸に当たらなければ死んでいた。
運も実力のうちとは言うけれどあんな目には二度と合いたくない。
ホブゴブリンと出会ったらけして深追いしないようにとの事だった。
更に1時間ほど歩いた頃セシルさんが立ち止まる。
同時に僕とミレーヌが剣を抜いて戦闘態勢に入る。
セシルさんは先ほどとは違い真剣な表情で風の音や木々の葉音に注意して音を聞いていた。
「何かいるよ。複数だ。多分ゴブリンじゃないかな?まだこっちに気が付いた様子は無いね」
姿が見えない相手の事を的確に察知しているセシルさん。
普段の飄々とした様子とは違ってスカウトの腕前は確かなようで安心する。
どうやら相手はこちらの存在に気付いていないようだ。
「待ち伏せのようだな。セシル頼む」
「りょーかい」
シグレさんがセシルさんに声をかけるとセシルさんが軽々と木の枝に飛び乗る。
そのまま反動を利用して枝の上へと登り、木の上を飛びながら姿が見えなくなった。
スカウトというのはああいう軽業も出来るのか。
僕は感心しながらセシルさんを見送る。
「セシルが帰ってくるまでに罠を仕掛けよう」
そう言ってシグレさんがロープを取り出して木の幹の下のほうに縛り付ける。
ロープの先を別の木に縛り付けて足止めと音が鳴るように作った仕掛けを作っていく。
僕とミレーヌも手伝いながら辺りの地形を把握する事を忘れない。
ロイド教官の塾で基本中の基本として真っ先に叩きこまれた事だ。
「よし。ではあの木陰に隠れよう」
シグレさんが目星をつけた隠れ場所に移動して息を殺す。
それから30分ほどしたらセシルさんが戻ってきた。
木の上を飛び乗ってきたというのに息が乱れていないのは流石だと思う。
僕らの近くまで来ると小声で状況を説明してくれる。
「ゴブリンだね。数は10匹。獲物は手斧と弓だね。いっちょ前にレザーアーマーなんか身に着けてた」
セシルさんの説明だと軽く武装しているようだ。
という事はリーダーがいるとみていい。
シグレさんも僕と同意見だったようでセシルさんに問いかける。
ゴブリンは普段レザーアーマーなんて持っていない。
つまりこの間の戦争で妖魔軍の本隊から逃亡した連中だ。
「群れの長のような者はいたか?」
「いたいた。リーダー格っぽいホブゴブリンが二匹いて、大きな戦斧を持った奴と杖のようなものをもった奴だ。」
大きな斧を持ったのがボスで杖を持ったものはゴブリンの魔術使いだろう。
戦場で逃げ切れず洞窟に避難した群れのリーダーか。
だとすると子分は20匹はいるな。
まともに戦うのは無理があるだろう。
「予想通りこれを持ってきて正解だったな」
そう言ってシグレさんは腰のポーチから小瓶を取り出した。
ガラス製で六角形をした長方形の小瓶は手のひらに収まるくらいの大きさしかない。
瓶の蓋を開けると中には青色の液体が入っていた。
「これは眠りの雫という液体だ。聞いたことはあるだろう?」
シグレさんが僕とミレーヌに微笑んだ。
この小瓶の中に入っている液体は眠りの雫と言う魔法の液体だ。
辺りに撒くと眠気が襲ってきて密度によっては本当に眠ってしまう。
即効性なので戦闘時に撒く事も出来るけど高価な品物だ。
ゴブリン相手には過剰な気もしたけどシグレさんは油断をしない性格らしい。
過去に油断して死にかけた事があるのかもしれない。
ゴブリンだと侮って全滅する初心者パーティもいる。
僕も一瞬の油断が命取りになるとロイド教官に散々言われている。
ロイド教官の胸には大きな裂傷の痕が残っていた。
魔法で傷痕は消せるがロイド教官はわざと傷痕を残したらしい。
自分への戒めの為だとロイド教官は言っていた。
「これを洞窟の中でたむろしているゴブリンのねぐらに撒けば大半は眠りにつくはずだ」
ゴブリンに限らず知的な生物はねぐらと貯蔵庫を別々にしている。
貯蔵庫には普段誰もいないが囚われた人は貯蔵庫に入れられていると考えられる。
どちらにしろ20匹のゴブリンを相手にするのは無理がある。
眠ったゴブリンを一匹ずつ確実に殺していけば安全だ。
シグレさんとセシルさんはやはり慣れてるなと僕とミレーヌは感服した。
剣や槍を使う事は出来ても、こういう細かな戦術を使いこなせないのでは冒険者として長生きできない。
先ほどのようにセシルさんが偵察をしてシグレさんが罠を仕掛ける。
迷いのない判断力と動き方を身に着けている。
それを僕達に実地で教えてくれた。
僕とミレーヌは本当に良い先輩に巡り合えた幸運に感謝した。
しばらく歩くとカク村の人家が遠くなっていき見えなくなった。
更に森の奥に分け入ってから一時間ほど獣道を歩く。。
ここから先はゴブリンが隠れ住んでいると思われる領域になるので注意が必要だそうだ。
村長さんから貰った地図を片手に森へ入る。
落葉樹の生い茂る森の中は木々が多く、光が届きにくい場所が多いためか薄暗い。
足元を確認しながら歩かないと木の根や石に足をかけ転ぶかもしれない。
重い鎧を着たままこけたりしたら足を挫くだけではすまない。
こんな森の中で足手まといになりたくはない。
僕とミレーヌも子供の頃から森や湖で遊んだりしてきたから山道は得意だけど、シグレさんとセシルさんのように鎧を着ての行軍に慣れてはいない。
置いていかれないように付いていくので必死だ。
ブーツには滑り止めが付いているが万が一、靴擦れとかしないように注意しないと。
戦闘中に何かあったら大変だからね。
「奴らは音と匂いに敏感だ。森の中で襲われたらあちらの方が有利だという事を忘れるな。それと深追いは禁物だ。必ず待ち伏せがある」
出発前にシグレさんに注意された事を思い出す。
森の中と洞窟のように暗い場所はゴブリンの方が長けている。
ゴブリン一匹一匹は弱いが戦い方を心得ているホブゴブリンもいるらしい。
ホブゴブリンとは僕が初陣で戦った大きなゴブリンで強い。
あの時手元に長槍が落ちてなく、運よく胸に当たらなければ死んでいた。
運も実力のうちとは言うけれどあんな目には二度と合いたくない。
ホブゴブリンと出会ったらけして深追いしないようにとの事だった。
更に1時間ほど歩いた頃セシルさんが立ち止まる。
同時に僕とミレーヌが剣を抜いて戦闘態勢に入る。
セシルさんは先ほどとは違い真剣な表情で風の音や木々の葉音に注意して音を聞いていた。
「何かいるよ。複数だ。多分ゴブリンじゃないかな?まだこっちに気が付いた様子は無いね」
姿が見えない相手の事を的確に察知しているセシルさん。
普段の飄々とした様子とは違ってスカウトの腕前は確かなようで安心する。
どうやら相手はこちらの存在に気付いていないようだ。
「待ち伏せのようだな。セシル頼む」
「りょーかい」
シグレさんがセシルさんに声をかけるとセシルさんが軽々と木の枝に飛び乗る。
そのまま反動を利用して枝の上へと登り、木の上を飛びながら姿が見えなくなった。
スカウトというのはああいう軽業も出来るのか。
僕は感心しながらセシルさんを見送る。
「セシルが帰ってくるまでに罠を仕掛けよう」
そう言ってシグレさんがロープを取り出して木の幹の下のほうに縛り付ける。
ロープの先を別の木に縛り付けて足止めと音が鳴るように作った仕掛けを作っていく。
僕とミレーヌも手伝いながら辺りの地形を把握する事を忘れない。
ロイド教官の塾で基本中の基本として真っ先に叩きこまれた事だ。
「よし。ではあの木陰に隠れよう」
シグレさんが目星をつけた隠れ場所に移動して息を殺す。
それから30分ほどしたらセシルさんが戻ってきた。
木の上を飛び乗ってきたというのに息が乱れていないのは流石だと思う。
僕らの近くまで来ると小声で状況を説明してくれる。
「ゴブリンだね。数は10匹。獲物は手斧と弓だね。いっちょ前にレザーアーマーなんか身に着けてた」
セシルさんの説明だと軽く武装しているようだ。
という事はリーダーがいるとみていい。
シグレさんも僕と同意見だったようでセシルさんに問いかける。
ゴブリンは普段レザーアーマーなんて持っていない。
つまりこの間の戦争で妖魔軍の本隊から逃亡した連中だ。
「群れの長のような者はいたか?」
「いたいた。リーダー格っぽいホブゴブリンが二匹いて、大きな戦斧を持った奴と杖のようなものをもった奴だ。」
大きな斧を持ったのがボスで杖を持ったものはゴブリンの魔術使いだろう。
戦場で逃げ切れず洞窟に避難した群れのリーダーか。
だとすると子分は20匹はいるな。
まともに戦うのは無理があるだろう。
「予想通りこれを持ってきて正解だったな」
そう言ってシグレさんは腰のポーチから小瓶を取り出した。
ガラス製で六角形をした長方形の小瓶は手のひらに収まるくらいの大きさしかない。
瓶の蓋を開けると中には青色の液体が入っていた。
「これは眠りの雫という液体だ。聞いたことはあるだろう?」
シグレさんが僕とミレーヌに微笑んだ。
この小瓶の中に入っている液体は眠りの雫と言う魔法の液体だ。
辺りに撒くと眠気が襲ってきて密度によっては本当に眠ってしまう。
即効性なので戦闘時に撒く事も出来るけど高価な品物だ。
ゴブリン相手には過剰な気もしたけどシグレさんは油断をしない性格らしい。
過去に油断して死にかけた事があるのかもしれない。
ゴブリンだと侮って全滅する初心者パーティもいる。
僕も一瞬の油断が命取りになるとロイド教官に散々言われている。
ロイド教官の胸には大きな裂傷の痕が残っていた。
魔法で傷痕は消せるがロイド教官はわざと傷痕を残したらしい。
自分への戒めの為だとロイド教官は言っていた。
「これを洞窟の中でたむろしているゴブリンのねぐらに撒けば大半は眠りにつくはずだ」
ゴブリンに限らず知的な生物はねぐらと貯蔵庫を別々にしている。
貯蔵庫には普段誰もいないが囚われた人は貯蔵庫に入れられていると考えられる。
どちらにしろ20匹のゴブリンを相手にするのは無理がある。
眠ったゴブリンを一匹ずつ確実に殺していけば安全だ。
シグレさんとセシルさんはやはり慣れてるなと僕とミレーヌは感服した。
剣や槍を使う事は出来ても、こういう細かな戦術を使いこなせないのでは冒険者として長生きできない。
先ほどのようにセシルさんが偵察をしてシグレさんが罠を仕掛ける。
迷いのない判断力と動き方を身に着けている。
それを僕達に実地で教えてくれた。
僕とミレーヌは本当に良い先輩に巡り合えた幸運に感謝した。
0
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる