僕とボクっ娘勇者の異世界ファンタジー純愛和姦冒険物語~転生した僕は恋人のボクっ娘勇者と幸せラブラブSEXしながら魔王を倒して世界を救います~

屠龍

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第2章 冒険へ

第15話 機先を制する。

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 第15話 機先を制する。
 
 ――夜。
 
 野営の準備をしているとシグレさんに呼ばれた。
 何かと思ってついていくと野営地を少し離れた場所に連れていかれる。
 そこにはミレーヌとセシルさんがいて周りに人がいないか注意深く確認していた。
 
 「予想通りだ。今回の商団護衛に山賊の手下がいる」

 シグレさんが僕に耳打ちする。
 予想はしていたけど改めて聞くと緊張して身体がこわばる。

 「どうしてわかったんですか?」

 「蛇の道は蛇ってね。あたいみたいに裏社会で生きてきたら顔を見ればわかるのさ。ありゃ山賊ヒキマの手下だよ。あっちは忘れてるみたいだがあたいは顔と名前を憶えてるよ。おっと何で覚えてるのかって質問は無粋ってもんだぜ」
 
 セシルさんがそう言って僕にウインクした。
 きっと山賊ヒキマって人と男女の仲になったのだろうと思ったけど口には出さない。
 
 今はそんな事を考えている場合じゃない。
 ゴブリン退治に来たはずがいつの間にか山賊と戦う事になるとは予想外もいいところだ。
 ミレーヌの方を見ると同じ事を考えているのか不安げな顔をしていた。……いや違うな。
 これは怯えている顔だ。
 
 無理もない。
 僕だって人間相手に剣を振るえるのかと問われたら出来ると言い切る自信は無い。
 そもそも僕は元の世界で人を殺した経験が無い。
 この世界に来る前の僕はただの中学生だったしこの世界でも盗賊に襲われた事はあっても殺したりしていない。
 
 ミレーヌだってそうだ。
 彼女は魔物は殺せても人は殺せない。
 僕も殺す覚悟はまだ出来ていない。
 だけど、やるしかないんだ。

 「今夜商団長に伝えておくがまだ尻尾を見せていないからどこまで信用されるかだな。だが警戒はしておいて貰わないといざという時困る」
 
 シグレさんはそう言うが表情は変わらない。
 いや、よく見ると少しだけ緊張しているようだ。
 この人は分かりにくいだけで結構顔に出やすいのかもしれない。
 ふと見るとミレーヌも同じような顔で僕を見ている。
 僕が微笑むと彼女も安心したように微笑んだ。
 そして僕達は夕食を済ませてから交代で見張りをして一夜を過ごした。
 
 「よく眠れたかい?」
 
 翌朝見張りを終えたセシルさんが僕に言う。
 相変わらず眠そうな顔で大欠伸するがそれが演技だと僕は知った。
 セシルさんは本当に裏社会に詳しい。
 もしかしてこの人と知り合いになれたのは幸運ではないだろうか。
 
 「おはようユキナ」

 緊張であまり眠れなかった様子のミレーヌ。
 かくいう僕もあまり眠れなかった。
 味方だと思っていた人たちが敵のスパイだったなんて悪夢以外の何物でもない。
 セシルさんから誰が山賊の手下なのか教えてもらっている。
 
 一見誠実そうな顔立ちをしたロングソードを装備した金髪の男性と、筋骨隆々で黒毛の大斧使いとネズミみたいな顔をした反っ歯のショートソード使い。
 反っ歯の人が山賊間でしか使えない合図の声を上げたら襲撃してくる手筈になっている。

 「昨夜のうちに商団長には話をしてある。半信半疑だが警戒は強めてくれるだろう」

 僕はシグレさんの一言に違和感を感じた。
 明らかに山賊の手下が混じっていて、商団長はどうして半信半疑なのだろうか。
 
 「どうして半信半疑なんですか?」

 「そりゃあれだ。本当はあたいたちが山賊の手下で、みんなを騙して容疑者を殺させてから荷物を奪うかもしれないと思っているのさ」
 
 そんな馬鹿馬鹿しい。
 僕には理解できない。
 
 「いやよくある事なのだ。そうやって騙された商人は沢山いる。それに商隊を率いる責任があるものとして軽挙妄動は抑えないといけない。大切な積み荷を奪われましたなどと言えないからな」

 シグレさんがセシルさんの言葉に同意して僕とミレーヌに説明してくれる。
 そこまで人を疑わなくてはいけないのか。
 確かに戦争をしていた時もそんな話を聞いたような気がする。
 兵士は疑うのが仕事だと僕を鍛えてくれた元傭兵のロイド教官も言っていた。
 
 ここはそういう世界なんだ。
 それにしても酷い話だ。
 僕のいた前世日本ではそんな事は無かった。
 少なくとも僕の住んでいた国ではそういう事は起きなかった。
 
 もしかしたら僕の知らないところで起きていたかもしれないけど僕の知っている範囲では聞いた事がない。
 僕の居た世界では戦争は起きていなかったが、もし起こっていたら僕は徴兵されていたのだろうか? 
 
 いやベッドに寝たきりの病人など役に立たない。
 戦争中に僕を構っている余裕なんてないから多分死んでいただろう。
 
 「そろそろだね。多分数日中の夜に夜襲をしかけて来るだろう。ちゃんと休憩時間は寝ておくんだよ」
 
 セシルさんが緊張した面持ちで言った。
 その日から僕とミレーヌにとって眠れぬ夜が始まる。
 見張りがいるとはいえ山賊はこちらより数が多いはずだ。
 しかも山賊は好きな時に好きな場所で攻撃できるのだ。
 こちらはいつ攻撃されるかわからない緊張状態が続く。
 
 戦いは主導権を握ったほうが勝ちだとロイド教官が口を酸っぱくして言っていた意味がわかる。
 敵襲に怯えながら進む旅路は嫌なもので緊張が続いた。
 その横で相変わらずセシルさんは欠伸をしていて緊張感のかけらもない。
 僕とミレーヌがセシルさんほど豪胆になれる日がくるのだろうか。
 
 田園風景から森の道に入り昼間でも視界が悪くなる。
 僕は荷馬車の車輪が立てる音と人間が歩く音の両方が気になって緊張状態が続く。
 ミレーヌも震えていてしきりに辺りを見回していた。
 僕はミレーヌの手に手を重ねた。
 
 「ひゃっ!?」

 ミレーヌが可愛らしい悲鳴を上げると皆の視線が僕とミレーヌに集中する。
 
 「大丈夫。僕も怖い」

 何が大丈夫なのか自分でも変だと思うけど、緊張しているというのはミレーヌと同じだよと告げるとミレーヌが僕の手を握り返してくれた。
 
 その日の夜。
 
 シグレさんと変わって商団の見張りに立つと、僕のほかに数人の見張りが商団の荷馬車と商人を内側にして円陣を組み夜の森を見つめる。
 
 見張りに慣れていない僕とミレーヌの時間を狙ってくるだろうとセシルさんが言っていたので、セシルさんとシグレさんとミレーヌは鎧と武器を付けて目を閉じている。
 この森を抜けると襲撃したあと荷馬車を奪って逃げるには厳しい荒れた道になるから今日か明日あたりとシグレさんは予想している。
 
 僕はセシルさんを真似て欠伸をした。
 如何にも旅慣れていないように見せる為だ。
 僕がちらりとテントを見ると山賊の仲間の反っ歯男がテントから出ていくのが見えた。
 一見草むらでトイレに向かったと見えなくもないが油断なく監視する。
 反っ歯男が月夜に向かって口笛を吹いた。
 それと同時に森を走る物音。
 
 「山賊だ!!」

 僕が大声で叫ぶとシグレさんとセシルさんとミレーヌがテントから飛び出し、寝ていた商人も手に武器を持って立ち上がり松明を持って荷馬車の周りを明かりで照らす。
 それと同時に山賊が森から飛び出してきたが奇襲に失敗したのを見て愕然としていた。
 山賊は攻撃の優位の確保に失敗したのだ。
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