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第1章 旅立ち
第3話 ミレーヌの危機。
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第3話 ミレーヌの危機。
ミレーヌは僕達の住む街とは違う土地から来たばかりで色々と慣れない事が多かった。
一番の違いは食文化だろう。
僕達の街ではテフという前世で食べていた米に似た穀物を主食にしているが、ミレーヌのいた土地には主食というものがない。
その日によって芋やパンを食べていたようだ。
おかずも魚を主に食べている僕達と違って、肉が主だったようで食べ物に苦労している。
その日は友達と遊んだあと集まってお昼ご飯を食べていた時だった。
僕達が焼き魚や酢漬けの魚を食べているとミレーヌが物珍しそうに僕の弁当を見つめている。
「ボク魚ってどうやって食べていいのかわからない」
ミレーヌは魚を見る事自体珍しい事だったようで興味深そうに僕が食べている焼き魚を見ていた。
「魚食べた事ないの?」
「無い事は無いけど。ボク魚は生臭いから苦手なんだよね」
「生臭いかなあ?食べてみてよ」
そう言って僕は箸で酢漬け魚を一つミレーヌの食べているパンの上に乗せた。
白身の魚でデルという僕が子供の頃から食べてきた魚。
僕にとってはありふれた魚だけどミレーヌから見たら珍しいのだろう。
ミレーヌは僕とデルを交互に見つめながら意を決してデルの乗ったパンを食べる。
初めて食べる魚を咀嚼しながらミレーヌは大きな瞳を瞬かせて驚いた顔をしていた。
「生臭くない…美味しい」
「気に入って貰って良かった」
僕とミレーヌが楽しそうに笑っていると乾物屋の子のヤオが干し魚を持ってきた。
ヤオの家は乾物屋なので魔法製で高価な冷蔵庫がない一般家庭では重宝する。
「それじゃうちの魚も食べてみろよ。干してるから味が良くなってるぜ」
「でもボク干し魚苦手」
「食ってみろって」
そう言ってヤオがミレーヌに自慢の干し魚の焼き物を押し付ける。
恐る恐るミレーヌが食べてみるとまた瞳をぱちくりさせている。
「干し魚なのに生臭くない」
「うちのは特別な干し方してるからな。秘伝は俺も知らない」
「じゃあさ。今度みんなで釣りに行かない?それで釣ったばかりの魚をミレーヌに食べてもらうの」
そう言ったのは幼馴染で仕立て屋の娘のミン。
ミンは卵焼きをミレーヌに勧めている。
「猟師の家のあたしが言うのもなんだけどさ。肉ばっかじゃなくて魚も食べたほうがいいんだって。肉ばっか食べてると血が濁るって親父が言ってた」
猟師の娘のスグハがそう言いながら焼いたイノシシの肉をミレーヌに勧める。
イノシシは血なまぐさいので処理には手腕がいる。
スグハの両親は猟師だからその辺りはお手の物だ。
「みんなありがとう。ボク釣りって初めてだから楽しみだなあ」
そう言ってみんなで笑いあう。
幼馴染の親友達。
僕が前世で欲しかった存在だった。
クラスの男子が皆見とれ女子でさえ好印象のミレーヌ。
元気で明るい彼女はすぐ皆と仲良くなった。
かわいい子と仲良くなりたいのは当然だけど純粋に友達になりたい者と、可愛い転校生を派閥に入れたい者がいる。
「わからない所があったらなんでも聞いてよ」
ミレーヌが慣れない言葉の壁に苦労しているとクラス委員の男子生徒リンが声をかける。
リンは典型的な優等生で親が下級貴族の騎士爵を持っている事もあって、クラスメイトだけではなく学年でも女生徒にモテる。
如何にも爽やかな印象を持つので人気があるのは良いのだが、女の子を自分を引き立てるアイテム扱いしているから僕も含めて男子生徒は皆嫌っている。
リンから見れば男の嫉妬にしか見えず事実そうなのだからどこ吹く風だ。
それが益々気に入らない。
明らかに他の男子生徒を見下しているのだ。
騎士爵とはいえ貴族様だから教師も低姿勢で接している。
リンは親の身分と財産で放課後教師を家庭教師として招いている。
実家のコネで成績優秀なのだ。
恐らく次のテスト勉強を前もってやっているに違いない。
ようするに嫌な奴なのだ。
だからリンはミレーヌを自分のコレクションにしたいのだろう。
ミレーヌはリンと僕を見て事情を察したようだ。
ここは穏便に丁重にお断りするのが最善だと思う。
「ありがとう。でもボク軽い男の子は嫌いなんだ」
僕も含めたクラスが凍り付いた。
今までこんなにはっきり拒絶された事のないリンが明らかに動揺すると共に、取り巻きの少女達がミレーヌに敵意を抱いた目で睨みつける。
それを笑顔で受け流すミレーヌ。
クラス中の男子が内心で喝采を上げた。
元々リンに敵意を抱いていたのは男子だけでなく一部の女子もだったのでこの事件以降ミレーヌの株は爆上がりした。
クラスメート全員の前で面目を潰されたリンはミレーヌの事を敵視したようだ。
ミレーヌの嫌な噂が流れたのはこの事件の後だ。
ミレーヌのお父さんはお医者さんだけど、前にいた街で手術に失敗して患者を死なせた。
金を積んだ者だけを優先的に治療していたのがばれてこの街に逃げて来た。
医者ではなく邪教の神官で生贄にする娘を探している等など。
「ボクのお父さんはそんな人じゃないよ!!」
みんなの前でミレーヌがそう説明しても聞いてくれない。
余所者にはみんな冷たいのはよくある事。
クラスで人気があったがゆえに嫉妬も買っていたのだろう。
「ミレーヌに相手にされなかったからって卑怯だぞ!!」
「失敬だな。俺がそんな事をしている証拠があるなら出してみろよ」
リンが噂を流していると僕は気が付いたが、リンを問い詰めても尻尾を出さない。
リンは頭がいいから自分の友達というか家臣の子供に噂を広めさせて高みの見物といった所だろう。
ここまでは子供の喧嘩だったが噂が街に広まったのか、ミレーヌのお父さんの信用にまで響いて患者が来なくなったのだ。
「どうしてみんなお父さんの事を信用してくれないの」
ミレーヌはお父さんの潔白を訴え続けたが大人達は誰も助けてくれなかった。
それどころかミレーヌのお父さんを非難し始めた。
この事はミレーヌが一人で抱えきれなくなった時に僕に話してくれた。
「ミレーヌもミレーヌのお父さんも悪くないよ」
「じゃあどうしてボクのお父さんがこんな目にあうの!?」
ミレーヌの瞳から涙が零れる。
このままだとミレーヌはこの街から追い出されるかもしれない。
でも子供の僕にはどうしようもない。
だから大人を頼る事にした。
ミレーヌは僕達の住む街とは違う土地から来たばかりで色々と慣れない事が多かった。
一番の違いは食文化だろう。
僕達の街ではテフという前世で食べていた米に似た穀物を主食にしているが、ミレーヌのいた土地には主食というものがない。
その日によって芋やパンを食べていたようだ。
おかずも魚を主に食べている僕達と違って、肉が主だったようで食べ物に苦労している。
その日は友達と遊んだあと集まってお昼ご飯を食べていた時だった。
僕達が焼き魚や酢漬けの魚を食べているとミレーヌが物珍しそうに僕の弁当を見つめている。
「ボク魚ってどうやって食べていいのかわからない」
ミレーヌは魚を見る事自体珍しい事だったようで興味深そうに僕が食べている焼き魚を見ていた。
「魚食べた事ないの?」
「無い事は無いけど。ボク魚は生臭いから苦手なんだよね」
「生臭いかなあ?食べてみてよ」
そう言って僕は箸で酢漬け魚を一つミレーヌの食べているパンの上に乗せた。
白身の魚でデルという僕が子供の頃から食べてきた魚。
僕にとってはありふれた魚だけどミレーヌから見たら珍しいのだろう。
ミレーヌは僕とデルを交互に見つめながら意を決してデルの乗ったパンを食べる。
初めて食べる魚を咀嚼しながらミレーヌは大きな瞳を瞬かせて驚いた顔をしていた。
「生臭くない…美味しい」
「気に入って貰って良かった」
僕とミレーヌが楽しそうに笑っていると乾物屋の子のヤオが干し魚を持ってきた。
ヤオの家は乾物屋なので魔法製で高価な冷蔵庫がない一般家庭では重宝する。
「それじゃうちの魚も食べてみろよ。干してるから味が良くなってるぜ」
「でもボク干し魚苦手」
「食ってみろって」
そう言ってヤオがミレーヌに自慢の干し魚の焼き物を押し付ける。
恐る恐るミレーヌが食べてみるとまた瞳をぱちくりさせている。
「干し魚なのに生臭くない」
「うちのは特別な干し方してるからな。秘伝は俺も知らない」
「じゃあさ。今度みんなで釣りに行かない?それで釣ったばかりの魚をミレーヌに食べてもらうの」
そう言ったのは幼馴染で仕立て屋の娘のミン。
ミンは卵焼きをミレーヌに勧めている。
「猟師の家のあたしが言うのもなんだけどさ。肉ばっかじゃなくて魚も食べたほうがいいんだって。肉ばっか食べてると血が濁るって親父が言ってた」
猟師の娘のスグハがそう言いながら焼いたイノシシの肉をミレーヌに勧める。
イノシシは血なまぐさいので処理には手腕がいる。
スグハの両親は猟師だからその辺りはお手の物だ。
「みんなありがとう。ボク釣りって初めてだから楽しみだなあ」
そう言ってみんなで笑いあう。
幼馴染の親友達。
僕が前世で欲しかった存在だった。
クラスの男子が皆見とれ女子でさえ好印象のミレーヌ。
元気で明るい彼女はすぐ皆と仲良くなった。
かわいい子と仲良くなりたいのは当然だけど純粋に友達になりたい者と、可愛い転校生を派閥に入れたい者がいる。
「わからない所があったらなんでも聞いてよ」
ミレーヌが慣れない言葉の壁に苦労しているとクラス委員の男子生徒リンが声をかける。
リンは典型的な優等生で親が下級貴族の騎士爵を持っている事もあって、クラスメイトだけではなく学年でも女生徒にモテる。
如何にも爽やかな印象を持つので人気があるのは良いのだが、女の子を自分を引き立てるアイテム扱いしているから僕も含めて男子生徒は皆嫌っている。
リンから見れば男の嫉妬にしか見えず事実そうなのだからどこ吹く風だ。
それが益々気に入らない。
明らかに他の男子生徒を見下しているのだ。
騎士爵とはいえ貴族様だから教師も低姿勢で接している。
リンは親の身分と財産で放課後教師を家庭教師として招いている。
実家のコネで成績優秀なのだ。
恐らく次のテスト勉強を前もってやっているに違いない。
ようするに嫌な奴なのだ。
だからリンはミレーヌを自分のコレクションにしたいのだろう。
ミレーヌはリンと僕を見て事情を察したようだ。
ここは穏便に丁重にお断りするのが最善だと思う。
「ありがとう。でもボク軽い男の子は嫌いなんだ」
僕も含めたクラスが凍り付いた。
今までこんなにはっきり拒絶された事のないリンが明らかに動揺すると共に、取り巻きの少女達がミレーヌに敵意を抱いた目で睨みつける。
それを笑顔で受け流すミレーヌ。
クラス中の男子が内心で喝采を上げた。
元々リンに敵意を抱いていたのは男子だけでなく一部の女子もだったのでこの事件以降ミレーヌの株は爆上がりした。
クラスメート全員の前で面目を潰されたリンはミレーヌの事を敵視したようだ。
ミレーヌの嫌な噂が流れたのはこの事件の後だ。
ミレーヌのお父さんはお医者さんだけど、前にいた街で手術に失敗して患者を死なせた。
金を積んだ者だけを優先的に治療していたのがばれてこの街に逃げて来た。
医者ではなく邪教の神官で生贄にする娘を探している等など。
「ボクのお父さんはそんな人じゃないよ!!」
みんなの前でミレーヌがそう説明しても聞いてくれない。
余所者にはみんな冷たいのはよくある事。
クラスで人気があったがゆえに嫉妬も買っていたのだろう。
「ミレーヌに相手にされなかったからって卑怯だぞ!!」
「失敬だな。俺がそんな事をしている証拠があるなら出してみろよ」
リンが噂を流していると僕は気が付いたが、リンを問い詰めても尻尾を出さない。
リンは頭がいいから自分の友達というか家臣の子供に噂を広めさせて高みの見物といった所だろう。
ここまでは子供の喧嘩だったが噂が街に広まったのか、ミレーヌのお父さんの信用にまで響いて患者が来なくなったのだ。
「どうしてみんなお父さんの事を信用してくれないの」
ミレーヌはお父さんの潔白を訴え続けたが大人達は誰も助けてくれなかった。
それどころかミレーヌのお父さんを非難し始めた。
この事はミレーヌが一人で抱えきれなくなった時に僕に話してくれた。
「ミレーヌもミレーヌのお父さんも悪くないよ」
「じゃあどうしてボクのお父さんがこんな目にあうの!?」
ミレーヌの瞳から涙が零れる。
このままだとミレーヌはこの街から追い出されるかもしれない。
でも子供の僕にはどうしようもない。
だから大人を頼る事にした。
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