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出会い
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グラッジュ王国、国境近くの森にて。艶やかな黒髪に黒曜石のような黒い瞳を持った女がいた。彼女の名はルーラ。ルーラ・ティンネット。
「今日は、森が騒がしいな」
ポツリと呟いた。
―――
グラッジュ王国、王宮内。1人の王子がいた。彼の名はフィンデル・グラッジュ・アシェルデ。彼はこの国の第2王子で王位継承権第2位だ。だが、彼は無能だった。無能だと思われていた。
「おや、無能王子のお出ましですぞ」
「政治に口を出すくらいなら、部屋にこもっていた方が楽だと言うのに」
王宮内を歩けばそんな言葉がどこからか聞こえてくる。フィンデルは優秀な男だ。剣術も頭脳も秀でている。そんな彼が何故、邪険にされているのか。全てはフィンデルの兄、メイデルのせいであった。メイデルはグラッジュ王国の第1王子であり王位継承権第1位を持っている。自分の支持率を高める為、弟であるフィンデルの手柄を横から奪い酷い噂を流していたのだ。
「うるさいな。言われなくとも、時期に出て行ってやるさ」
ポツリと呟いた言葉。その数週間後、本当にフィンデルは王宮を出て1人旅に出た。彼の心は今までで1番ワクワクしている。未知に出会う事を楽しみにしているのだ。
―――
ピチチチと小鳥が鳴いて森がざわめく。異変を感じた女、ルーラは優しく問いかけた。
「どうした」
彼女の指に止まった小鳥はまたピチチチと鳴く。それを聞いたルーラはひとつ頷いて歩き出した。向かったのは少し流れが急な川だ。冷たい川に手を入れて目を閉じる。すると瞬く間に水が膨れ上がり、破裂したかと思えばそこには1人の青年が横たわっていた。
「川の下流まで流されるなんて、馬鹿なヤツ。怪我も酷いし、相当血が流れてるな」
青年は重傷であった。ルーラはその場で止血すると呪文を唱える。光の粒が舞ってピカッと光るとその場に姿が見当たらなかった。転移魔法だ。魔法で家に帰宅したルーラは男をまたもや魔法で浮かせ、ベッドへと寝かせる。救急箱を取り出して手早く治療を始めた。
「はぁ…ったく、面倒臭い」
そうは言いつつも進める手は止まらない。やがて手当も終わり、その疲労からかルーラは机に伏せて眠ってしまった。
「んっ…ここ、は…」
ルーラが深い眠りについた頃、手当された男は目覚めた。自身に巻かれてる包帯や周りに置かれていた救急箱を見て助けられたと察する。直ぐに机に伏せっているルーラに気が付いた。
「これ、起こした方が、いいのか…?」
「起こされずとも、起きたさ」
「えっ!?」
男が近付いた瞬間のそりと顔を上げるルーラ。
「動くな馬鹿者。傷が開く」
「えっあっ、スミマセン…」
ルーラは指をパチンと鳴らす。すると、キッチンにある器具達が意志を持ったように動き出し、調理が始まった。その様子を呆然と眺める男。
「さて、夕食ができあがるまで色々と質問があるが答えてくれるな?」
「俺に答えられる範囲内なら」
「よし、まずは自己紹介だ。私の名は…ルネ。好きに呼べ。」
「わかった。俺の名前はフィンデル!フィンでいい」
「フィン、最初の質問だが何故あの川にいた?あの川が、なんと言われているか知らないわけではないだろ」
「亡霊川、だろ?いやー、恥ずかしい事に風に煽られて落ちてしまったんだ」
「落ちた…?そうか、お前馬鹿なんだな。」
納得したように頷いたルーラ。フィンデルは思わずずっこけた。
「ルネはサバサバしてるな…」
「素直だと言え。…2つ目の質問だ。フィン、お前は貴族なのか?」
真面目な顔つきへと変わったルーラ。質問を聞いて、フィンデルの雰囲気もガラリと変わった。
「何故それを?」
「お前の小刀だ。カバンの中に入っていた小刀は特定の鉱山でしか採られない鉱物を使われていて、豪商ですら手が出せないほどの金額になるはずだ。それを持っていると言うことは、それ以上の金持ち。即ち貴族かと考えたんだが?」
「考え過ぎだよルネ。俺はただの商人の息子なんだ」
「…そうか。夕餉が出来た。食べるぞ。」
「美味そうだなぁ!」
出来上がったシチューに目を輝かせるフィンデルをルーラは後ろから見ていた。
「…」
「今日は、森が騒がしいな」
ポツリと呟いた。
―――
グラッジュ王国、王宮内。1人の王子がいた。彼の名はフィンデル・グラッジュ・アシェルデ。彼はこの国の第2王子で王位継承権第2位だ。だが、彼は無能だった。無能だと思われていた。
「おや、無能王子のお出ましですぞ」
「政治に口を出すくらいなら、部屋にこもっていた方が楽だと言うのに」
王宮内を歩けばそんな言葉がどこからか聞こえてくる。フィンデルは優秀な男だ。剣術も頭脳も秀でている。そんな彼が何故、邪険にされているのか。全てはフィンデルの兄、メイデルのせいであった。メイデルはグラッジュ王国の第1王子であり王位継承権第1位を持っている。自分の支持率を高める為、弟であるフィンデルの手柄を横から奪い酷い噂を流していたのだ。
「うるさいな。言われなくとも、時期に出て行ってやるさ」
ポツリと呟いた言葉。その数週間後、本当にフィンデルは王宮を出て1人旅に出た。彼の心は今までで1番ワクワクしている。未知に出会う事を楽しみにしているのだ。
―――
ピチチチと小鳥が鳴いて森がざわめく。異変を感じた女、ルーラは優しく問いかけた。
「どうした」
彼女の指に止まった小鳥はまたピチチチと鳴く。それを聞いたルーラはひとつ頷いて歩き出した。向かったのは少し流れが急な川だ。冷たい川に手を入れて目を閉じる。すると瞬く間に水が膨れ上がり、破裂したかと思えばそこには1人の青年が横たわっていた。
「川の下流まで流されるなんて、馬鹿なヤツ。怪我も酷いし、相当血が流れてるな」
青年は重傷であった。ルーラはその場で止血すると呪文を唱える。光の粒が舞ってピカッと光るとその場に姿が見当たらなかった。転移魔法だ。魔法で家に帰宅したルーラは男をまたもや魔法で浮かせ、ベッドへと寝かせる。救急箱を取り出して手早く治療を始めた。
「はぁ…ったく、面倒臭い」
そうは言いつつも進める手は止まらない。やがて手当も終わり、その疲労からかルーラは机に伏せて眠ってしまった。
「んっ…ここ、は…」
ルーラが深い眠りについた頃、手当された男は目覚めた。自身に巻かれてる包帯や周りに置かれていた救急箱を見て助けられたと察する。直ぐに机に伏せっているルーラに気が付いた。
「これ、起こした方が、いいのか…?」
「起こされずとも、起きたさ」
「えっ!?」
男が近付いた瞬間のそりと顔を上げるルーラ。
「動くな馬鹿者。傷が開く」
「えっあっ、スミマセン…」
ルーラは指をパチンと鳴らす。すると、キッチンにある器具達が意志を持ったように動き出し、調理が始まった。その様子を呆然と眺める男。
「さて、夕食ができあがるまで色々と質問があるが答えてくれるな?」
「俺に答えられる範囲内なら」
「よし、まずは自己紹介だ。私の名は…ルネ。好きに呼べ。」
「わかった。俺の名前はフィンデル!フィンでいい」
「フィン、最初の質問だが何故あの川にいた?あの川が、なんと言われているか知らないわけではないだろ」
「亡霊川、だろ?いやー、恥ずかしい事に風に煽られて落ちてしまったんだ」
「落ちた…?そうか、お前馬鹿なんだな。」
納得したように頷いたルーラ。フィンデルは思わずずっこけた。
「ルネはサバサバしてるな…」
「素直だと言え。…2つ目の質問だ。フィン、お前は貴族なのか?」
真面目な顔つきへと変わったルーラ。質問を聞いて、フィンデルの雰囲気もガラリと変わった。
「何故それを?」
「お前の小刀だ。カバンの中に入っていた小刀は特定の鉱山でしか採られない鉱物を使われていて、豪商ですら手が出せないほどの金額になるはずだ。それを持っていると言うことは、それ以上の金持ち。即ち貴族かと考えたんだが?」
「考え過ぎだよルネ。俺はただの商人の息子なんだ」
「…そうか。夕餉が出来た。食べるぞ。」
「美味そうだなぁ!」
出来上がったシチューに目を輝かせるフィンデルをルーラは後ろから見ていた。
「…」
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