元相方は最強歌い手から逃れたい

すずらん

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雪との出会い

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 最初はほんの好奇心だった。
 いつも教室の片隅で音楽を聴いている彼に話しかけたくなった。

「なに聴いているんだ?」

 耳からイヤフォンを外した彼はぼんやりとした様子で俺のほうを見た。

「僕…ですか?」
「そうだよ、二宮くん」

 これが歌い手のユキ、本名:二宮 雪との出会いだった。
 そして俺の歌い手としての始まりでもあった。

***

 高校一年の5月。
 下校時間が15分ほど過ぎたころ、帰宅組と部活組で別れた生徒たちは既に教室を後にしていた。
 閑散としている教室で綾人は自分の机に寄りかかりながらぼんやりと窓から校庭のグラウンドを眺めていた。


 中学三年の春ごろ、サッカーの試合でアキレス腱を損傷。
 激しい運動はできないが、いまは生活に支障がない範囲で歩ける。

 俺はグラウンドでサッカーボールに向かって走るかつての仲間を眺めていた。

 サッカーは確かに好きだけど、高校まで続けたかったのか、と聞かれると分からない。
 それが、俺の正直の気持ちだった。
 だけどそれがいざ取り上げられると心がポッカリと空いたようだった。


 ーー俺、なにがしたいんだろう。
 思わずメランコリックな気持ちになった自分を振り払うように、俺は首を激しく横に振った。

 ーーウジウジするな!探すんだ、やりたいこと!
 そう決意したものの、すぐにやりたいことは思い浮かばない。

 ーーここ最近、毎日これを繰り返している気がする。
 そんな自分に苦笑した。

 宿題も大方終えたし、ひとまず帰ろう。
 帰り支度を進めて、席から立ち上がると自分の前から二席。
 窓際の席に座る彼を一瞥した。

 ーー二宮 雪ニノミヤ ユキ

 中学が違ったから詳しいことは分からない。
 ただ入学当初から彼は誰ともつるまない。
 大体いつも一人で机で音楽を聴いている。
 そんな印象だ。

 ーー後は女子にモテるだな。

  4月の入学当初は、積極的に話しかける女子が彼の机に群がっていたが、二宮にまったく相手にされずに早々に諦めていった。

 175cmでアンニュイな表情を見せる色白のイケメン。
 ギリギリ170cmの自分からすると、175cmと170代の後半の身長を持つあいつが羨ましい。

  いつもだったら、このまま真っ直ぐ帰っていただろう。
 だけど、この日の自分は刺激が欲しくてたまらなかったのか、思わず話しかけてしまった。
 
 
「なに聴いているんだ?」
 



******************************************
プロローグのシーン辺りを早く書きたいため、
高速で人物登場と振り返り回を書こうと必死です(笑)

高校編は初々しい綾人と雪のやりとりを書こうと思います。
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