一人で寂しい夜は

春廼舎 明

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慣れと馴れ

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「…ぁ…は……はぁ…」

 吏作さんがあんまりゆっくり入ってくるから、じわじわと全身の神経が集中してしまう。熱い塊が少しずつ少しずつ奥へ向かって私を溶かしていく。溶かすより遅い速度でしか進んでくれなくて、もどかしくて、思わず吐息が漏れる。

「葵……気持ちいい…」

 吏作さんがとろりとした表情を浮かべる。普段なら胸キュンな表情も、この状態ではそれどころじゃない、全身でキュンキュンしてしまう。呼吸が浅い、そんなところで止まらないで早くって、体が言ってる。思わず涙目になる。

「はぁ……はぁ…あ」

 意地悪な彼は、たっぷり時間をかけて収めると、上に逃げそうになる私の体を逃さないように、腰をぎゅっと掴んで自分に引き寄せるように押さえつける。
 彼が笑みを深める。

「葵、わかる?」
「ん……~!」

 って、何がー!? っていや、入ってるのはわかるのよ。あっつくて気持ち良いし。でもね、気持ち良いって言っても、筋肉痛のふくらはぎ撫でたり、凝っている肩のマッサージとか真冬の夜にお風呂に入ってジーンとしたりとか、それと変わらないレベルの気持ち良さなのよ。
 どっちかというと、心が気持ち良い。彼の熱を直に感じて、あ、薄い膜越しだけど。自分が独り占めにして。彼が私を感じてくれて。こんな表情見せてくれて。こんなぴったりくっついて、幸せーって気持ちが湧き上がるの! キューンとするの。
 彼がとろりとした表情から、切なげな表情に変わる。

「葵そんな絞めんな……」
「そんな、こと……」

 言葉を発したら、そんな器用なことできないって言おうとしたら、すっと頭が冷えた。自分で中を触った時みたい。でも変わらず中では存在感が半端ない。
 感覚と感情と思考がちぐはぐで変な感じ。

「葵、痛い?」
「どうして?」

 ふるふると頭をふる。

「中の感じ、変わった。」
「わかるの?」
「そりゃ、まあ、それを味わってるわけだし。……冷めちゃった?」
「え!」

 くすりと笑われる。その笑顔にまたキュンとくる。

「だから、また……目のピントが合ってる。呼吸が変わった、だからわかる。中はまだ仕込みが必要かな。」
「う……!…」

 彼が外側のぷっくりしたところを触る。途端に体がビクッと震える。異物感がじわじわと存在感を増す。
 彼がニヤリと笑う。
 そのまま指を離してくれない。執拗に弄られる。逃げそうになる体を押さえつけられる。身をよじる。のしかかられる。全身がぴったりくっつき、目の前に吏作さんの顔がある。手はいつの間にか指を絡めぎゅっとしてる。
 今にも唇が触れそう……

「葵……」
「…ぅ…・ん…」

 口を開いたら、口づけで塞がれた。彼が熱い息を漏らし、とろりと舌を絡ませゆっくり抜き挿しされ、腰が揺らめく。くちゅり…くちゅり…と蜜が掻き出され肌を伝って滴る。
 参った、感覚と感情と思考がちぐはぐすぎる。中を彼に擦られてるというかぬるぬる滑って行きつ戻りつして、温かくて、けど変な感じ。でも彼がこんな恍惚とした表情を浮かべて気持ち良さそうにしてくれるのが嬉しい、幸せ。って感情と感覚が渦巻いて、ぐるぐる廻る。とりとめもなくまとまらない感情と感覚の螺旋、冷静に思考がそう認識してる。落ち着いてしまった。
 不意に彼が体を起こし外側のぷっくりしたところと一緒に浅いところを攻める。ちゅぽんっとし出されたり、ぬちゅっと押し込まれたり。あ、これ気持ちイイと思っていると執拗に攻められる。

「…良い顔…そのまま、感じてろ」

 彼が腰の動きを止め、指でぐりぐり私をいじる。外がジンジンするのに、彼に中を圧迫されてさらにじわじわと疼きが増し、でも彼が攻めるのをやめないので、さらにキュンキュンして狭めそうになるのに中から押し広げられてキュンキュンしきれない……もう何が何だかわからない。身を逸らそうとすると、押さえつけられ、よじらそうとすると中がよじれてさらにジンジンする。呼吸が浅くなり、酸欠の金魚のように口をパクパクする。ビリっと全身を突き抜ける快感が走った。
 突然のあまりのことに固まる。

「葵、俺を見てろ。」

 何も考えられなくて言われた通りに吏作さんの目を見る。
 いつも通り口元はふんわり微笑んでいるのに、視線は強く熱がこもっている。また電流が流れるような快感が、突き抜け…ない、抜けていかない快感が留まり暴れまわり、痺れるように続く、続く、終わらない、逃れられない。

「はっ…あっ…はぁ……ああっ……!!!」

 短い呼吸すらままならず、全身硬直し、やがてフッと力が抜ける。
 力が抜けた途端、中を圧迫していた彼が異物感からジンジンする快感に変わっていることに気がつく。熱源に触れて触れられてとろとろだ。ドロドロでジンジンしててグルグルとりとめがなくバラバラで何が何だかわからないから諦めた。吏作さんに全てをゆだねる。彼が腰を動かし始める。

「…吏作、さん……気持ち、いい…」
「葵、俺も…」

 吏作さんの目が鋭くギラついたように見えたのは覚えてる。
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