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しおりを挟む「翠!」
ぎくっとして振り向くと、竜一さんがいた。腕を掴まれた。
懐かしい顔だ。
ずっと会いたかった顔だ。
この声を聞きたかった。
この大きな手に触れられたかった。
何度も思い出しては1人で泣いた。
なんであんなバカなことしたんだろうと泣いた。
恋人と別れた時ですら、三日もすれば涙は止まり、1週間も経てば思い出しても切ないけど涙はもう出なくなっていた。なのに、何週間経っても1ヶ月経っても、思い出すたび涙がボロボロ溢れた。
実際会ったらボロボロ泣いちゃうんじゃないかと思ったけど、それどころか本当に目の前にいる人に感情が追いつかず、ただ呆然と見上げるだけだった。
「やっと見つけた!」
人目もはばからず、抱きしめられ……そうになって、私は慌てて1歩下がった。私はいつも、そう、あと1歩のところで踏みとどまってしまう冷静さがあり、飛び込めないでいた。この人にその1歩を踏み出すことを教えてもらえた。セックス中の態度は裸の心、その人の本性だ、だなんて心の中で偉そうに講釈を垂れながら、それは同時に自分にも当て嵌まり、最後の1歩を踏み出せず安全なところから冷静に相手を見下ろし、壁を作り心を開いていなかったのは自分だと気がついた時、わんわん泣いた。
竜一さんを思い出し、何度も泣いた。
見知らぬ私に、最初から最後まで優しかった。どうして彼には自分をさらけ出せたんだろう。最中以外にも私のそばにいる間ずっと私を気遣い、思いやる優しい態度を思い出した。
ありがとうって言いたかった。
でも言っていなかった。
もう連絡先もわからない。わかったとしても、もう遅い。
彼に恋人や奥さんがいたら迷惑になるから、もう会うつもりはないし、会うべきじゃないと思った。
初めからそのはずだった。わかっていたのに、『男は一度で興味を失い、女は一度で執着するようになる』。
どうせ、一夜だけの相手と見られているはず。私もそう思っていると彼も思っているはず。
人肌が恋しいからと、酔った勢いでと、簡単に体を許すようなだらしない女、男漁りをしにくるような浅ましい女、そんな女に本気になる男もいないだろう。付き合い始めたって、自分以外にも関係を結んだ奴もいるだろう、それは今も?と猜疑心にとらわれる。だから体から始まる恋は上手くいかないんだ。
何度もそう自分に言い聞かせ、無理やり涙を止め、泣き寝入りし、やり過ごした。
だから、私はここで、ハンカチを拾ってもらったくらいの感覚でサラッと通り過ぎるべきだ。
一歩退いた私を見て竜一さんが、なんで!? とショックを受けたような顔をしている。
どうして、そんな顔するの? 私もショックを受けた。心臓をギュッと鷲掴みされるような感覚に陥る。泣いちゃまずい、ああ、そうだ。クリニックに向かうところだった、泣いちゃまずい。泣くなら用事を済ませて、部屋に戻り布団を被ってからだ。
「竜一さん、私、用事があるんです。受付時間、ああ、ごめんなさい!」
腕時計を見てあと数分で受付終了となる時間であることに気がつく。手を振りほどいて、数歩先の建物の塀の角を曲がる。
今日は混んでいた。血液検査もあって、いつもより時間もかかった。もう待っててくれないだろう。待っててもらう理由がない。でもさっき何か話したそうだった。領収書と薬袋をカバンに詰めながらクリニックを出て階段を降りる。
駅から続く大通りから横道に入る角にチェーン店のカフェがあり、その隣は立ち飲みバーだった。そういえば、あのバーの雰囲気と似ている。待つには、クリニックを出て小道を抜けてくるのが見えるバーか窓際が空いていればカフェはちょうどいい。
本当に会うつもりがないなら、右へ、会って話がしたいと期待したいなら左へ、どうする? もう待ってないだろう。さすがに入り口の曲がり角にはいないだろう。診療科目が科目なので、男性がそこに立っているとしたら相当無神経な人間だ。
ドキドキしながら小道を抜け、塀より一歩出る。左右を見る、人影は無い。ホッとして、でもがっかりして歩き出した。
「翠!」
「わあ!…あ、わわわ」
驚きのあまり、肩が跳ね、手にしていたスマホをすっ飛ばし、キャッチしようとワタワタし、失敗して手に当たって弾き飛ばす。
「おっと…!」
ナイスキャッチ
スマホと私の顔を見比べ、竜一さんが肩を震わせて笑う。いつか見た光景。
「相変わらず、翠の反応は面白いな。」
随分な言いようだけど、受け取ってくれたことには礼を言う。スマホを差し出されたので受け取るため、手を伸ばした。
「ありがとうございます。」
すっと届かない高さに差し上げられてしまう。ポカンとして竜一さんの顔を見つめた。
「翠、話す時間ちょうだい?」
「はい」
だから、スマホ返してと、うなずきながら手を差し出す。今度は竜一さんがポカンとした表情を浮かべる。スマホがゆっくり手に戻ってくる。手首を取られる。
「あの、何か?」
「逃げないの?」
「なぜ?」
「だって、さっき止めたのに、行っちゃったから」
「言ったじゃないですか、受付時間って。時間に間に合わなくなると思って急いでいたんです。」
「ああ、そっか……ごめん。」
手が離れる。あの日と同じように離したくなくて、慌てて手を握ると小指の付け根辺りを摘んだ様な状態になった。2人して同じことを思い出し、ふ、と笑う。
「歩きながら話しませんか? 私、帰りは散歩がてら歩こうかと思っていたんです。」
新宿通りを指差す。
「どこまで?」
「新宿まで。通りをただ真っ直ぐですよ。」
「どれくらいかかるの?歩けない距離じゃないとは思うけど、歩いたことないから解らないや。」
「のんびり、40~50分?」
「……ダメ」
突然、ぐっと手に力が入り大通りへ連れ出される。進行方向は同じなので大人しく付いて行く。
「歩くの苦手ですか?歩きながらじゃできない話ですか?」
「もっと涼しい季節ならともかく、熱中症になるよ?」
「私一人なら、途中のコンビニで涼んだりカフェ見つけたらお茶したりしますけど、そう言うわけいきませんね…。」
一人じゃ無いって面倒だなと、ふと思った。大丈夫とゴーサイン出したのは自分なのだから、同行者が責任を感じる必要はないのに。あ、違う、これで具合が悪くなったとして、だから言ったじゃん!って放置して去るわけにもいかない、迷惑かけてしまうんだ。つくづく、私って一人がお似合いだなと思った。
「迷惑とかそうじゃなくて、心配なんだよ。翠、そんな小さな体で頑張っちゃうから。」
考えを訂正するように言われた。
「…翌朝まであんなに容赦なかったくせに。」
「うっ…それは…ごめん。いや、あれは不可抗力…必然というか、無理」
途端にしどろもどろになる竜一さんを覗き込む。ほんのり顔を赤らめている。あ、もしかして私が予期せぬ方向の話題に持って行ってしまった?
そんなこんなで駅に辿り着いてしまう。満員電車が大嫌いなのに、ちょうど今はラッシュの時間帯。
「満員電車で俺に抱きつくのと、タクシーで密室2人きり、どっちがいい?」
「意外と鬼畜な選択肢ですね。でも満員電車と言ってもラッシュは朝ほどではないから抱きつくこともないでしょうし、タクシーは運転手さんがいますので、2人きりではないですよ?」
「なんだよ、ノリが悪いな。まあちょうどタクシーも来たし、乗るか。」
ご機嫌な竜一さんに連れてこられたのは、高層ビル内にあるダイニングバーの個室だった。私はお気に入りのドイツのスパークリングウォーターを頼み、竜一さんはクラフトビールを頼んでいた。運ばれて来た私の発泡水のボトルを、竜一さんは目を細めて見つめる。
「水…?」
「はい、これ好きなんです。ペリエなら結構いろんなお店に置いてますけど、ドイツ、イタリアの発泡水は置いてても銘柄限られてるし。見つけたので思わず頼んでしまいました。」
「それって……いや、そんなわけないか……」
「どうしました?」
「翠、仕事の復帰はいつくらいからになりそう?」
「!…どうしてそれを?」
ぎくりと体が硬直する。どうして知っているの? どこまで知っているの? この人は一体だれ? あの日、初めて会った人ではないの? 湧き上がる疑問と知らないということへの恐怖。思わず言葉が続かずに、竜一さんを見つめる。ふと気がついたように、鞄を引き寄せると名刺入れのポケットから一枚の名刺を取り出す。どこかで見覚えのある名刺だ。え? 同じ職場の人、な訳ない。私は自慢じゃないが人の顔を覚えるのは早い。組織内の他事業所の人?
ピッと目の前に差し出された。私の名刺だった。そういや、名刺入れのポケットから取り出したや。
「ごめん、勝手に貰った。」
「え?」
「朝、翠がお風呂に入りに行く時、鞄がソファの上で倒れてさ、外ポケットからIDカードケースが飛び出して…」
「……ああ、納得しました。私、記憶力だけはいいから、その記憶力すらも危うくなっていたのかと心配してしまいました。」
IDカードが裏返っていて気がつかなくても名前がわかるように、私や他の人たちも大抵カードケースの裏面に名刺を入れている。
「勝手だけど、名刺もらったからまた連絡取れると思って安心してた。で、何気なく装って事務所に電話して休職中って知って……」
「そうでしたか。休みに入ったのはあの翌々日から。」
そういうことか、と納得し、張っていた気が抜ける。だからタクシーに私を乗せる時ためらいもなく送り出したんだ。
私、今、何を期待した?
ぎくりとまた身を強張らせた。隣に座る竜一さんが当たり前のように、私の頭を撫で、髪をすく。気持ち良い。どうしてこの人の手はこんなに温かく安心できるんだろう。
「どれだけ、心配したと思ってるんだよ。」
「なぜ?」
「な! なんでって!」
「だって、竜一さん一夜限りの相手にいちいちそんな世話焼くんですか? ああ、だから女性にモテるんですね、モテるんでしょうね。」
「おい!」
「だって、そうでなきゃそんな女性慣れしないでしょうから。」
「ちょっと待て! だから、そんなことを言いたいんじゃない。今日なんであのクリニックに行った?」
「薬の処方と血液検査です。」
「え?」
「治療で通っていたんです。ああ、安心してください。そっちの病気は持っていませんから。それに一夜の相手に避妊を任せきりになんてしませんよ。」
「翠、頼む、こっちを向いて話してくれないか。」
竜一さんが、なぜか苦しそうに言う。なんでそんな表情で言うの? ああ、また勘違いしたくなる。
「竜一さんは、なぜそんな苦しそうなんですか? 一夜の遊び相手にいちいちそんなに気を遣っていたら身が持ちませんよ? 今までもそんな感じだったんですか?」
「違うよ、翠。自虐的、なんか今日の翠は自虐的だな。それ、俺嫌だよ。」
チカチカと何かの警告のように、何かが、記憶の、頭の奥で明滅する。
なに? まるで昔から知っているみたいな、あの日が初対面ではないみたいな言い方。
「竜一さん、私、あなたにどこで会いましたか? あの晩以外で。人の顔覚えたり、記憶力はいい方なのに思い出せません。」
竜一さんが背もたれに思い切り寄りかかり、後ろに下がる。ふうっと大きく息をつく。
「だろうね、3年前、あのバーの近くにあるショッピングモールのカフェ。よく来てただろ?」
3年前どころか、あのショッピングモールが出来た時からよく行っている。スーパーやドラッグストアは、日用品の買い出しに今でもしょっちゅう行っているが、カフェは最近行っていなかった。3年前…
バッと竜一さんを振り向く。
「恋人との待ち合わせによく来てたろ? 一緒におしゃべりして、ニコニコして、その後はデートに行くのか、帰ったのか。でもある時から来なくなったから、引っ越したのかと思ってた。」
店員さん? 常連客? 駅が近いのにあの改札側にはカフェがなく、地元民もよく使う。ちょっとした時間つぶしをするならあの店になる。
「5年前あの店を任されるようになって、暫くして君を見つけた。声をかけるチャンスを探ってるうち、君が来る事が減り、また来てくれるようになったら恋人と一緒だった。」
竜一さんの言う通り、一時期私はそのカフェのランチによく通った。ずっと同じ店員さんがいることすら気がついていなかった。
「ごめんなさい、やっぱり覚えてませんでした。竜一さん、今は?」
「あの辺りの店を見てる。エリアマネージャーってところ。」
もう一度名刺入れを出すと名刺を1枚くれた。
「そうでしたか。」
「当時からある定番メニューに、海老とアボカドのサンドイッチ、あるだろ?」
「はい、私、あれ好きです。」
「翠が嬉しそうにパクって噛り付いたら、反対側から海老がプリッと出て行っちゃって、コーヒーの中にぽちゃんって落ちて。服にコーヒー撥ねるわ、コーヒーにマヨネーズ入るわ、翠が凄くショック受けてて。それが凄く可愛くて、好きになった。」
ククっと、思い出し笑いしながら名刺入れに私の名刺を大切そうにしまった。
「もう!客の失敗、いちいち記憶しないで下さい。」
プッと唇を尖らせると、髪を梳いていた手が頬に添えられチュッとキスをされた。びっくりして固まってると、目を細めて楽しげで優しい表情で私を見てる。
あ
「ブラインド、降ろしに来ました?」
「え?」
「海老が逃げた時。」
今度は竜一さんがびっくりして目を丸くしてる。
あの時、私は大好きなエビがコーヒーまみれになり、床に落ちたわけじゃないし汚くはない、食べて問題はない。でも、まろやかなマヨネーズとエビのハーモニーが!とがっかりした。プッと吹き出す声が上から降って来て振り仰ぐと、男性がブラインドを下ろそうとしていて、口元を片手でおさえ私を見ていた。恥ずかしくて、コーヒーに入ってしまったエビはこの人が行ってしまってからこっそり食べようと思った。
あの時の表情だ。目を細めて楽しげで優しい表情。
「ユニフォーム着てなかった。店員さんだと思ってなかった。」
「ああ、本部の人間だからね。憶えててくれたんだ、嬉しいな。記憶力良いって本当だね。」
「なのに、一夜の遊びをするような女でがっかりしました?」
「いや、5年前から見ていたんだ、そんな女だったらとっくに関係持ってた。それに俺は一夜で終わらせる気は無かったし、今もそのつもりはない。」
「どうして? どうやって?」
「あの朝、俺どうしたか知ってる? 怒らせてでも俺のこと見てもらいたかった。振り向かせたかった。」
「言ったでしょ、自分から持ちかけておいて、自分の体を相手任せにするほど馬鹿じゃないって。」
「怒らせるどころか、あっさり逃げ切られらたし。だから今日、会えて本当、良かった。」
髪を梳いていた手が背中に回ると、抱きしめられるように引き寄せられた。あの日と同じように、私はこの人の体温を心地よく感じる。抱っこされた猫のように心地よくなって竜一さんに寄りかかった。
「…本当、随分な自信ですね。どうして私が一夜の遊びで済ますと考えなかったんです? 結婚していたとか考えないんですか?」
「一時期、恋人と来てたとき黒い指輪してたでしょ? 指輪が戻ってる。それに、あの恋人とは別れるんじゃないかなって思ってた。」
「失礼な。でも、よく見てますね……どうしてそう思ったんです?」
「好きな人は見ちゃうだろ? 黒い指輪があまりにも異質だった。笑ってるけど、幸せそうじゃなかった、から?」
「……どんな時?」
「1人で来たとき、その指輪を見てる表情がうんざり、って感じだった。あと恋人が席を外した時にやるせない、うんざり、がっかり、そんな感じの溜息ついてるの見ちゃったから。」
「おそらく、それが全てです。デート中うっかりそんな溜息を吐いてしまうような女なのに、何が良いんですか?」
「さあ? 反応とか仕草? なんでかな、どうしようもなく惹かれる。だからもっと知りたい、ずっと見てたのにまだ知らないことばっかり。あの晩、ああしてしまう程の何かがあったんだろ?」
本当、どうしてこの人はこんなに私のことがわかるんだろう? あの恋人ではあり得なかった観察眼に嬉しさで涙が溢れた。
私の涙を拭うと、頭を撫でられた。
本当、どうして私はこの人の手をこんなにも安心できてしまうんだろう。
また抱いてくれないかな。
期待していいのかな。
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