腐った林檎

アズ

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第4章 名もなき島

09 名もなき島

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 世界はまさにハリケーン。世界の中心は渦を巻いていて、自然も人も巻き込む。
 そこは暗闇。
 暗闇に光を求めるも、見当たらない。
 その暗闇にあるのは、白いローブの自分だけ。
 世界の中心に何があるのか? それは真相、真実。誰も辿りつけない答え。
 見てみたいという好奇心と不安と恐怖で心が揺らぐ。
 強いいしが必要だ。
 誰が私を押すんだろう?
 逃げ出せばいい、誰かに任せればいい。
 そうはしない自分はただ、真っ直ぐに突き進んでいる。
 そして、気づくとそこには島があった。
 それは名もなき島。それは陰気な島だった。



 空からでは鬱蒼とした森と岩しか見えない。
 その島は白黒の世界だった。
 島に上陸すると、森の中から顔の無い人間がぞろぞろと現れだした。
 大人、老人、子ども、ベビーカーの中にいる子どもまでもが顔のパーツを失っていた。
 彼らにはペルソナがなかった。
 まるで、ゾンビのようにただ小さな賢者のところに集まっていく。
「お前の顔をくれ」
 それは実際の声ではない。頭の中でそれは語りかけてきた。
「他人のペルソナを被ったところで、あなた達の人格が取り戻せるわけじゃないわ」
 ルルーがそう言うと、顔のない人々は立ち止まった。まるで、石像のように。
 それはとても気味が悪かった。
 ルルーは警戒しながらも、彼らの間を通り過ぎ、島を散策した。
 誰かが、彼らのペルソナを奪った奴がこの島にいる筈だ。
 空気は相変わらず悪い。
 森の中を進んでいくと、今度は黒いヤギに出くわした。
 ルルーは一瞥してから更に進んだ。
 森を抜けると、そこは崖だった。
 島は空から見た通り大きくはない。
 ルルーは引き返すように再び森の中に入った。すると、目の前で立ちふさがるように黒いヤギが立っていた。
 ヤギが鳴いた。
 ルルーは掌を上にして火を出した。白黒の世界だから、火が黒い。
 ヤギにそれをぶつけようとすると、ヤギはそれを避けて走り去っていった。
 ルルーは歩き始めた。
 この島はおかしい。直感がそう警告した。
 さっきの上陸したところに戻ると、例の顔無しの人達がいなくなっていた。
 すると、ポツポツと雨が降り出した。
 黒い雨だ。
 そうか、白黒の世界でも雨は変わらず黒いのか。
 ルルーは雨宿り出来そうな場所を探し歩き続けた。
 突如、空で白い雷が鳴る。
 大きな雷の音と共に、群れの足音が此方へと向かってくる。
 直後、地震が起きた。
 大きな揺れだ。
 島にいては危ない。
 ルルーは直ぐに空へと飛んだ。
 そして、見下ろす。
 さっきいた場所に黒い巨大な毛むくじゃらの六本足の群れがそこを通過した。
 見たことない生物だった。
 この島には他に何かありそうだ。
 そして、とても危険な臭いがする。
 ふと、空に妙な気配を感じた。
 自分より上から此方を見る鋭い目線を感じた。
 ゆっくりと空を見上げた。
 そこには、巨大な顔があった。
 その顔の口が大きく開かれて。



(第四章・完)
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