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第3章 パクス
09 アウレリアとルルー
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玉座の間。そこにルルーが現れた。玉座に座りルルーを見るのはアウレリアだった。直後、アウレリアの目は鋭くなる。
ルルーの枷がなかったからだ。
「あら、自分で枷を外せるようになったの。成長したようね。それで、逃げもせずわざわざ私の前に現れたのは何故かしら?」
「魔法の書を読んでいるうちに、あれを誰が書いたのか分かった」
「……」
「賢者なんでしょ? 賢者はイデアを知っている。それを伝える為、本に記しそれを伝えようとした。でも、世間では異端に見られ、忌み嫌われた。だから、本は隠され、魔女はそれを見つけ自分の魔法にした。イデアは本物の力。だから、魔女の使う火は兵士達が使う火よりもずっと強い。あなたが最強の魔女と恐れられているのは、その力を使っているからよ」
「それを言うなら他の魔女もそうでしょ?」
「アウレリアは自分の魔法を教えたりはしない。この城には沢山の本がある。全てを読み理解して自分のものにするには一生をかけても全然時間が足りな過ぎる。でも、他の魔女達には隠してある魔法の書があるんじゃないの? あなたはそれを持っていて、独占している」
「証明出来る?」
「私があなたと戦えばもしかするとボロが出るかも」
アウレリアは笑った。
「私から逃げるんじゃなかったの? ずっとここから逃げたそうにしてたじゃない。また、私から逃げてみせると見栄を張ったのは嘘?」
「ここを出るのは本当。でも、最初はあなたの目の前から逃げてみせるのもいいと思ったけど、あなたを倒してからここを出るのも悪くないって気づいたの」
「随分と自信があるようね」
ようやく玉座から立ち上がったアウレリアとルルーは互い睨み合った。そして、アウレリアとルルーは同時に攻撃を開始した。
アウレリアは赤い炎を、ルルーは氷を放った。
両者の放たれた赤と青は二人の中心でぶつかり、拮抗した。
「おかしいよね、前の私ならこうはならなかった」
それはアウレリアも気づいた。
「何故って顔してるけど、これがあなたが欲しがった証拠よ」
「まさか」
「あなたが私に読ませたのは魔法の書に手を加えた不完全なイデア。コピーであり、本物の力とは言えない。あなたが強いんじゃない、あんたが単にセコい魔女だったってことよ!」
「まさか、あの老いぼれが教えたのか? でも、お前とあの老いぼれの会話はずっと聞いていた」
そんな内容はなかった。何故ならその通りだからだ。でも、ルルーは知っていた。教わったんじゃない、自分で気づいたのだ。
「あ、あり得ない。私はずっとお前を監視していた。お前が魔法の書のありかに辿り着けるわけがない」
「忘れたの? その逆に私もあなたを監視していた。魔法でね。あなたみたいに完璧でないにしても、私はお前をずっと監視していた。そして、お前が途中イリゼの街に行ったのも。その市長、シェフェールに会っていたことも」
「まさか、まだあの老人の戯言を信じているのかしら? イリゼが世界の中心でヘソであり、イデアを知れると」
「正確にはあの街じゃない」
「!?」
「あの人が言ったのは、街のことじゃなく人よ。シェフェール市長は色々と知っている。イデアのことも。それはあなたが持つ手が加えられていない魔法の書でもある」
「あの女は賢者ではないわ。残念だったわね」
「でも、あなたは念の為にシェフェールに会い確認する必要があった。そして、私はそこで確信した。あとはあなたの目をどうやって欺くか。監視されている以上、下手に行動は出来ない。だから、協力者をつくったの」
「協力者だって!?」
「あなたはずっと私しか見ていなかったけど、それが幸いしたみたい」
玉座の間にサビーナが入ってきた。
「サビーナ!」
「アウレリア、ルルーから話しを聞かされた時は半信半疑だったけど、どうやら本当だったようね」
アウレリアは怒りをあらわにすると、人の姿から白い巨大な蛇へと姿を変えた。
アウレリアもまた選ばれし者であり、変身は出来て当然だった。
「残念。二人を殺さなきゃいけなくなるなんて」
「あなたにとって、自分に服従する手下さえ手に入ればそれで良かったんでしょ? でも、一度ついた嘘はどこかでバレる。さぁ、どうする?」
白い蛇は二人を睨んだ。
「愚かだ。いずれ人間は死ぬ。人間に出来る最善は後悔しない人生を送ることだ。だが、お前達は失敗した。まだ、私を倒せると思っているようだがそれは本当かな?」
アウレリアは不気味な笑いをした。
その時だった。
玉座の間に他の魔女達が現れたのは。
「お前達!?」
「アウレリア、どうやらお前の玉座は今にも崩れそうだな。お前の独裁ももう終わりだ! 観念しろアウレリア!!」
白い蛇は怒り体をうねり周りにいる魔女達を壁に叩きつけようとした。近くにあった柱は折れ倒れると、皆はバラバラに分かれ回避しながら攻撃を蛇に続けた。
蛇は悲鳴をあげながら、玉座の窓から飛び降りた。
「逃げるな、アウレリア!!」
しかし、アウレリアは行ってしまった。もう、アウレリアの姿は確認出来ない。
魔女達はアウレリアの行方を追う為、次々と玉座の間から出ていった。
残ったのはルルーとサビーナだけになった。
玉座の間は無残な姿となってしまった。しかし、もう今となっては玉座は必要ない。
「ルルー、幾つか教えて欲しい。結局、あの老人はお前に何を伝えたんだ」
「あの人は私にイデアを知れと言った。そして、イリゼという街に行けと。それってさぁ、つまり賢者の跡継ぎに指名したってことでしょ? 賢者になる仕組みとかよく分からないけどさ、今賢者がいなくなってしまった以上、魔人を封じる方法はない。あの人が伝えたかったことはそれじゃないのかな」
「それじゃルルーはイリゼに向かうの?」
ルルーは頷いた。
「イリゼに突然世界を動かす人が現れる。常に歴史の中心になっていた。多分、それがシェフェール市長だと思う」
「信用できると思う?」
「分からない。でも、考え込んでも答えが出るわけじゃあない。行ってみるよ。ついでにはぐれた皆を見つけられるといいんだけど」
ルルーの枷がなかったからだ。
「あら、自分で枷を外せるようになったの。成長したようね。それで、逃げもせずわざわざ私の前に現れたのは何故かしら?」
「魔法の書を読んでいるうちに、あれを誰が書いたのか分かった」
「……」
「賢者なんでしょ? 賢者はイデアを知っている。それを伝える為、本に記しそれを伝えようとした。でも、世間では異端に見られ、忌み嫌われた。だから、本は隠され、魔女はそれを見つけ自分の魔法にした。イデアは本物の力。だから、魔女の使う火は兵士達が使う火よりもずっと強い。あなたが最強の魔女と恐れられているのは、その力を使っているからよ」
「それを言うなら他の魔女もそうでしょ?」
「アウレリアは自分の魔法を教えたりはしない。この城には沢山の本がある。全てを読み理解して自分のものにするには一生をかけても全然時間が足りな過ぎる。でも、他の魔女達には隠してある魔法の書があるんじゃないの? あなたはそれを持っていて、独占している」
「証明出来る?」
「私があなたと戦えばもしかするとボロが出るかも」
アウレリアは笑った。
「私から逃げるんじゃなかったの? ずっとここから逃げたそうにしてたじゃない。また、私から逃げてみせると見栄を張ったのは嘘?」
「ここを出るのは本当。でも、最初はあなたの目の前から逃げてみせるのもいいと思ったけど、あなたを倒してからここを出るのも悪くないって気づいたの」
「随分と自信があるようね」
ようやく玉座から立ち上がったアウレリアとルルーは互い睨み合った。そして、アウレリアとルルーは同時に攻撃を開始した。
アウレリアは赤い炎を、ルルーは氷を放った。
両者の放たれた赤と青は二人の中心でぶつかり、拮抗した。
「おかしいよね、前の私ならこうはならなかった」
それはアウレリアも気づいた。
「何故って顔してるけど、これがあなたが欲しがった証拠よ」
「まさか」
「あなたが私に読ませたのは魔法の書に手を加えた不完全なイデア。コピーであり、本物の力とは言えない。あなたが強いんじゃない、あんたが単にセコい魔女だったってことよ!」
「まさか、あの老いぼれが教えたのか? でも、お前とあの老いぼれの会話はずっと聞いていた」
そんな内容はなかった。何故ならその通りだからだ。でも、ルルーは知っていた。教わったんじゃない、自分で気づいたのだ。
「あ、あり得ない。私はずっとお前を監視していた。お前が魔法の書のありかに辿り着けるわけがない」
「忘れたの? その逆に私もあなたを監視していた。魔法でね。あなたみたいに完璧でないにしても、私はお前をずっと監視していた。そして、お前が途中イリゼの街に行ったのも。その市長、シェフェールに会っていたことも」
「まさか、まだあの老人の戯言を信じているのかしら? イリゼが世界の中心でヘソであり、イデアを知れると」
「正確にはあの街じゃない」
「!?」
「あの人が言ったのは、街のことじゃなく人よ。シェフェール市長は色々と知っている。イデアのことも。それはあなたが持つ手が加えられていない魔法の書でもある」
「あの女は賢者ではないわ。残念だったわね」
「でも、あなたは念の為にシェフェールに会い確認する必要があった。そして、私はそこで確信した。あとはあなたの目をどうやって欺くか。監視されている以上、下手に行動は出来ない。だから、協力者をつくったの」
「協力者だって!?」
「あなたはずっと私しか見ていなかったけど、それが幸いしたみたい」
玉座の間にサビーナが入ってきた。
「サビーナ!」
「アウレリア、ルルーから話しを聞かされた時は半信半疑だったけど、どうやら本当だったようね」
アウレリアは怒りをあらわにすると、人の姿から白い巨大な蛇へと姿を変えた。
アウレリアもまた選ばれし者であり、変身は出来て当然だった。
「残念。二人を殺さなきゃいけなくなるなんて」
「あなたにとって、自分に服従する手下さえ手に入ればそれで良かったんでしょ? でも、一度ついた嘘はどこかでバレる。さぁ、どうする?」
白い蛇は二人を睨んだ。
「愚かだ。いずれ人間は死ぬ。人間に出来る最善は後悔しない人生を送ることだ。だが、お前達は失敗した。まだ、私を倒せると思っているようだがそれは本当かな?」
アウレリアは不気味な笑いをした。
その時だった。
玉座の間に他の魔女達が現れたのは。
「お前達!?」
「アウレリア、どうやらお前の玉座は今にも崩れそうだな。お前の独裁ももう終わりだ! 観念しろアウレリア!!」
白い蛇は怒り体をうねり周りにいる魔女達を壁に叩きつけようとした。近くにあった柱は折れ倒れると、皆はバラバラに分かれ回避しながら攻撃を蛇に続けた。
蛇は悲鳴をあげながら、玉座の窓から飛び降りた。
「逃げるな、アウレリア!!」
しかし、アウレリアは行ってしまった。もう、アウレリアの姿は確認出来ない。
魔女達はアウレリアの行方を追う為、次々と玉座の間から出ていった。
残ったのはルルーとサビーナだけになった。
玉座の間は無残な姿となってしまった。しかし、もう今となっては玉座は必要ない。
「ルルー、幾つか教えて欲しい。結局、あの老人はお前に何を伝えたんだ」
「あの人は私にイデアを知れと言った。そして、イリゼという街に行けと。それってさぁ、つまり賢者の跡継ぎに指名したってことでしょ? 賢者になる仕組みとかよく分からないけどさ、今賢者がいなくなってしまった以上、魔人を封じる方法はない。あの人が伝えたかったことはそれじゃないのかな」
「それじゃルルーはイリゼに向かうの?」
ルルーは頷いた。
「イリゼに突然世界を動かす人が現れる。常に歴史の中心になっていた。多分、それがシェフェール市長だと思う」
「信用できると思う?」
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