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第2章 イリゼ
06 アウレリア
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ルルーはこっそり家を出て魔女と共に空へ旅立った。魔女はカラスへ、ルルーはグリフォンへ。
目的地はここより東北東。その先に岩山があり、その頂上に城があった。山は険しく、地上から登っていくことは不可能。無謀者は直ちに魔女の呪いの魔法にてバランスを崩し落ちることになる。
城には見張り台の塔が3つあり、それぞれに黒いローブ姿にフードを被った魔女が此方を見ていた。
グリフォンではカラスなんかより速く飛べ、ルルーは迎えに来たカラスの魔女を置いていった。
先に城の最上階のバルコニーに入ると、ルルーはグリフォンから人へと変わった。そこには既に複数の魔女達が集まっていた。
どうして魔女は皆、そんな地味な色のローブで頭をすっぽり隠すんだろうか? これだから魔女は不気味に思われるんじゃない。
ルルーは分かった、分かったといった顔と両手を出してから、魔女達の間を通り過ぎて奥へと入っていった。
奥の部屋は広く大理石に立派な柱、中心には円卓があった。
薄暗いその場所は、魔女会議の部屋だ。
その奥で魔女の長であるアウレリアがいた。
緑色の瞳に赤いローブをしている。背は高く、長い黒髪で、美女だ。男はアウレリアを見て絶世の美女と表現するだろう。それに相応しい女だ。そして、そいつの腹の底は黒い。
「ようやく戻ってきたのね」
「アウレリア……」
「挨拶は?」
アウレリアの緑色の瞳が鋭く光った。
「……ただいま戻りました」
「ええ、おかえりなさい。話しはもう聞いてるわね」
「具体的にどうするつもり?」
「賢者を探すわ。それから闇の手下も倒さなければ。連中は次々と魔人を復活させている。その前に止める必要がある」
「相手は強いよ。出来るの?」
「強いことは知っているわ。あなたが戦ったオスマンだけじゃない。手下は全員選ばれし者達。闇が自分に従う選ばれし者だけに語りかけ従わせてるわ」
「私はオスマンと戦ったから分かるけど、あれは無理。手下がオスマンみたいなのばかりだったら尚更ね」
「それはあなたの魔法が未熟だからよ。修行中に逃げ出したんだから」
ルルーは鼻で笑ったが、アウレリアの目が鋭くなると、ルルーは目線を逸した。
「生意気なところは相変わらずね」
「私はあんたが嫌いだからよ」
今度は目を逸らさずに言った。
アウレリアの目はたまに怖いと感じることがある。実際、アウレリアは怖い。他の魔女よりもアウレリアは冷たく、強い。人間の姿をしていても、人間の心を持っていないんじゃないかとさえ思う。
アウレリアは人間を殺しても眉一つ動かさない。
アウレリアはルルーを魔女にするにあたって、自分と同じようにさせるべく修行をさせた。それが嫌で逃げ出した。
「何であんな馬鹿げたことを考えたの」
「戦争が膠着状態なのは明らか。魔女はどの国にも加担をしないけれど、世界をどうにか出来るとしたらリセットが一番効率がいいと思ったからよ。どう? これで満足?」
「その為に沢山の人が死ぬわ」
「既に死んでいるわ。沢山の屍が積み重なっている。4大陸の4大国の戦争によって。どうせ餓死して死ぬか、戦死して死ぬかしかない命なら、どう死ぬかは関係ないでしょ? むしろ、永遠の経済成長を求め頭打ちしている彼らが永遠を諦めるとは思えない」
「そんな難しいことは分からない」
「例えばこの国は一度は君主制を打破し、民主主義を手に入れたが、同じ市長、同じ大統領の長期政権化による独裁化が起こっている。中途半端な独裁は政治の腐敗と国民の不満が治安を悪化させる。一方、戦争は敵を外につくることで視線を内側から外へ向けさせている。それに気づき、長い戦争によって疲弊した国民が終戦を今更求めようとしても時は遅く、停戦交渉すら上手くいかない。終戦を求めても終戦出来ない状況に陥っている。敵が攻めるのをやめない限り、この国は戦争をやめることが出来ず、逆に相手国は此方が攻めるのをやめないからあちらも攻める手をやめられないでいる。勿論、裏では仕組まれたこと。兵器をつくる会社は儲かり、貧乏は次々と戦場で消費されていく。戦場では人が人として扱われず数として扱われ、社会ではコストとして人として見られず、貧しい人々は金持ちの食い物にされながら死んでいく。戦場でも社会でも貧しい人から死んでいく。身分制が無くなったといって人がモノであることに変わりはないわ。それは現状が証明している。リセットは理想だった。言い方を変えれば過去に戻る。今を進むよりやり直すのよ。犠牲はつきものだけれどね」
「最後の言葉は悪党がまさに言いそうだよね」
「自分が善だとは思ったことはないし、世の中は善悪ではないわ。今の人達を救うより未来を選択しようとした、これは目先しか見えてない人には分からないでしょうけどね」
「目の前がろくに見えてない人がよく未来を語るよ」
「見えてるわよ。さっき話したでしょ? お馬鹿さんね。見捨てるか救うかは別の話しよ」
アウレリアはルルーから目線を黒いローブの魔女に向けた。
「サビーナ」
呼ばれた魔女は一歩前へ出た。
「ルルーに魔法を教えなさい。次は逃げられないように枷を付けておきなさい」
目的地はここより東北東。その先に岩山があり、その頂上に城があった。山は険しく、地上から登っていくことは不可能。無謀者は直ちに魔女の呪いの魔法にてバランスを崩し落ちることになる。
城には見張り台の塔が3つあり、それぞれに黒いローブ姿にフードを被った魔女が此方を見ていた。
グリフォンではカラスなんかより速く飛べ、ルルーは迎えに来たカラスの魔女を置いていった。
先に城の最上階のバルコニーに入ると、ルルーはグリフォンから人へと変わった。そこには既に複数の魔女達が集まっていた。
どうして魔女は皆、そんな地味な色のローブで頭をすっぽり隠すんだろうか? これだから魔女は不気味に思われるんじゃない。
ルルーは分かった、分かったといった顔と両手を出してから、魔女達の間を通り過ぎて奥へと入っていった。
奥の部屋は広く大理石に立派な柱、中心には円卓があった。
薄暗いその場所は、魔女会議の部屋だ。
その奥で魔女の長であるアウレリアがいた。
緑色の瞳に赤いローブをしている。背は高く、長い黒髪で、美女だ。男はアウレリアを見て絶世の美女と表現するだろう。それに相応しい女だ。そして、そいつの腹の底は黒い。
「ようやく戻ってきたのね」
「アウレリア……」
「挨拶は?」
アウレリアの緑色の瞳が鋭く光った。
「……ただいま戻りました」
「ええ、おかえりなさい。話しはもう聞いてるわね」
「具体的にどうするつもり?」
「賢者を探すわ。それから闇の手下も倒さなければ。連中は次々と魔人を復活させている。その前に止める必要がある」
「相手は強いよ。出来るの?」
「強いことは知っているわ。あなたが戦ったオスマンだけじゃない。手下は全員選ばれし者達。闇が自分に従う選ばれし者だけに語りかけ従わせてるわ」
「私はオスマンと戦ったから分かるけど、あれは無理。手下がオスマンみたいなのばかりだったら尚更ね」
「それはあなたの魔法が未熟だからよ。修行中に逃げ出したんだから」
ルルーは鼻で笑ったが、アウレリアの目が鋭くなると、ルルーは目線を逸した。
「生意気なところは相変わらずね」
「私はあんたが嫌いだからよ」
今度は目を逸らさずに言った。
アウレリアの目はたまに怖いと感じることがある。実際、アウレリアは怖い。他の魔女よりもアウレリアは冷たく、強い。人間の姿をしていても、人間の心を持っていないんじゃないかとさえ思う。
アウレリアは人間を殺しても眉一つ動かさない。
アウレリアはルルーを魔女にするにあたって、自分と同じようにさせるべく修行をさせた。それが嫌で逃げ出した。
「何であんな馬鹿げたことを考えたの」
「戦争が膠着状態なのは明らか。魔女はどの国にも加担をしないけれど、世界をどうにか出来るとしたらリセットが一番効率がいいと思ったからよ。どう? これで満足?」
「その為に沢山の人が死ぬわ」
「既に死んでいるわ。沢山の屍が積み重なっている。4大陸の4大国の戦争によって。どうせ餓死して死ぬか、戦死して死ぬかしかない命なら、どう死ぬかは関係ないでしょ? むしろ、永遠の経済成長を求め頭打ちしている彼らが永遠を諦めるとは思えない」
「そんな難しいことは分からない」
「例えばこの国は一度は君主制を打破し、民主主義を手に入れたが、同じ市長、同じ大統領の長期政権化による独裁化が起こっている。中途半端な独裁は政治の腐敗と国民の不満が治安を悪化させる。一方、戦争は敵を外につくることで視線を内側から外へ向けさせている。それに気づき、長い戦争によって疲弊した国民が終戦を今更求めようとしても時は遅く、停戦交渉すら上手くいかない。終戦を求めても終戦出来ない状況に陥っている。敵が攻めるのをやめない限り、この国は戦争をやめることが出来ず、逆に相手国は此方が攻めるのをやめないからあちらも攻める手をやめられないでいる。勿論、裏では仕組まれたこと。兵器をつくる会社は儲かり、貧乏は次々と戦場で消費されていく。戦場では人が人として扱われず数として扱われ、社会ではコストとして人として見られず、貧しい人々は金持ちの食い物にされながら死んでいく。戦場でも社会でも貧しい人から死んでいく。身分制が無くなったといって人がモノであることに変わりはないわ。それは現状が証明している。リセットは理想だった。言い方を変えれば過去に戻る。今を進むよりやり直すのよ。犠牲はつきものだけれどね」
「最後の言葉は悪党がまさに言いそうだよね」
「自分が善だとは思ったことはないし、世の中は善悪ではないわ。今の人達を救うより未来を選択しようとした、これは目先しか見えてない人には分からないでしょうけどね」
「目の前がろくに見えてない人がよく未来を語るよ」
「見えてるわよ。さっき話したでしょ? お馬鹿さんね。見捨てるか救うかは別の話しよ」
アウレリアはルルーから目線を黒いローブの魔女に向けた。
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